任天堂に訴えられたNintendo Switch改造業者、「弁護士立てず」自分で反論。権利侵害などをとにかく全力否認しセルフ弁護
任天堂の米国法人Nintendo of Americaは今年6月28日、Nintendo Switch本体の改造などをおこなう業者を相手取り訴訟を提起した。この件について先日9月30日になって、被告が裁判所に反論を提出していたことが明らかになった。海外メディアTorrentFreakが報じている。
本訴訟は、米国ワシントン州西部地区連邦地方裁判所にて提起され、被告はミシガン州在住のRyan Dalyなる人物。同氏は、弁護士をつけずに任天堂との裁判に臨むようだ。
Ryan Daly氏は「Modded Hardware」というウェブサイトを運営し、改造済みのNintendo Switch本体やニンテンドー3DS本体、および改造に使用するパーツを販売していたほか、顧客が持ち込んだNintendo Switch本体の改造を代行するサービスも提供していた。また、かつて同氏はSNS上などでHomebrew Homiesというハンドルネームで活動し、自サイトの宣伝をおこなっていたことが確認されている。なお現在同サイトは非公開にされ、ストアにはアクセスできない状態となっている。
ここでいうNintendo Switch本体などの改造とは、海賊版ゲームソフトの動作を実現させるもの。自作ゲームや保有するゲームのバックアップファイルなどの動作を可能にすることが目的とされるが、実態としては海賊版ゲームのプレイに利用される例が多いとされる。
TorrentFreakによれば任天堂は今年3月、Daly氏に対し改造本体やパーツの販売をやめるよう要求し、同氏は受け入れたという。しかし、実際には販売を継続していたことから、任天堂は今年6月に提訴に踏み切ったようだ。
訴状にて任天堂は、Ryan Daly氏は改造本体などの販売だけでなく、顧客に海賊版ゲームの提供もおこなっていたと指摘している。そして、著作権侵害や、技術的保護手段を回避するデバイスの販売による著作権法違反などを主張。陪審員裁判を通じて、損害賠償金の支払いや、Modded Hardwareの閉鎖、改造本体などの取り扱い商品および販売履歴情報の提供などを、被告に対し命じるよう裁判所に要求した。
任天堂による提訴を受けてDaly氏は、9月30日に反論を裁判所に提出。任天堂側の主張をひとつひとつ引用しての一問一答形式が取られ、法律違反行為の指摘すべてについて否定した。詳しい説明はほぼなく、「Denied(否定する)」の一言だけの回答がほとんどとなっている。また回答とは別に、積極的抗弁(Affirmative Defense)も記載。フェアユースや無効な著作権などについて主張している。
なお、この反論文はRyan Daly氏自身が提出しており、「Pro Se」と弁護士を立てていない被告であることも明記。元々は弁護士を雇っていたようだが、少なくとも現時点では弁護士なしで対応する姿勢のようだ。
近年任天堂は、Nintendo Switchなどの海賊版ゲームにかかわる活動に対し、訴訟を含め厳しい姿勢で臨んでいる。これまでには、海賊版のROMファイル配布サイトや、海賊版コミュニティのモデレーター、また改造ツールの製造元や、今回のような改造本体を販売する業者などを相手取り提訴。一部のケースでは巨額の賠償金が課されている。また、Nintendo Switchの非公式エミュレーターである「yuzu」や「Ryujinx」が、開発・配布中止に追い込まれたことも記憶に新しい(関連記事)。
今回の訴訟については、今後証拠開示手続きに進むものとみられる。両者が一定の条件にて折り合えば和解となるだろうが、そうでなければRyan Daly氏ひとりで任天堂相手に裁判を戦うことになるかもしれない。ちなみに、過去に任天堂が別の改造本体販売業者訴え、和解に至ったケースでは、被告が200万ドル(約3億円)を任天堂に支払うことなどが条件に盛り込まれた(関連記事)。