欧米版『XenobladeX』でまたしても露出規制?任天堂の表現の変化を読み解く

任天堂は12月4日に欧米向けに『Xenoblade Chronicles X』を発売する。しかし、発売日が近付き熱気が高まるなか、GameXplainが投稿したある動画が、Destructoidや海外フォーラムNeoGAFなどで議論を呼んでいる。

任天堂は12月4日に欧米向けに『Xenoblade Chronicles X』(邦題: XenobladeX)を発売する。欧米では、設定資料集などを同梱したスペシャルエディションも発売予定であり、力の入れ具合が見受けられる。しかし、発売日が近付き熱気が高まるなか、GameXplainが投稿したある動画が、Destructoidや海外フォーラムNeoGAFなどで議論を呼んでいる。

『XenobladeX』では防具アイテムを頭・上半身・右腕・左腕・下半身と身体のパーツそれぞれに装備することができる。そして選んだ防具によってキャラクターのグラフィックが変化する。前作『Xenoblade』から着せ替え要素は好評であり、今作からは実際の装備と見た目の装備を別々に設定できるようになった。つまり防御力の高い装備の性能をそのままに、水着の見た目で冒険に出かけられるようになっている。この着せ替え強化にともない『XenobladeX』では露出の多い装備のバリエーションも増えた。この露出の多い衣装が今回問題の引き金となっている。

 

半月前から続く議論

そもそもの事の始まりは約半月前にさかのぼる。「聖剣の騎士」と名乗るTwitterユーザーが、ある画像を投稿した。ヒロインである13歳の少女リンの、日本版『XenobladeX』と、未発売である欧州版の水着装備の比較だ。

https://twitter.com/_teikage/status/660050698080514052

日本版とされる右側は、かなり際どいマイクロビキニを着ていて露出度が高い。一方、欧州版とされる左側は胸部全体がタンクトップのようなもので覆われており、日本版に比べて露出は控えめだ。このユーザーは、もう1枚コスチュームを比較する画像をアップしている。この画像でも右の日本版は露出の多い水着を着ているのに対して、左側の欧州版は少し谷間が見える程度の露出となっている。

この問題は大きな議論を引き起こしEurogamerなどでも取り上げられていた。しかしこのユーザーはどこから欧州版を手に入れたのか?何者なのか?そして衣装のデザインの違いから、そもそも同じ装備の比較ではない可能性が高く、疑惑の域から出ることはなかった。

 

確信に近付いた疑惑

最近になり任天堂は欧米版『XenobladeX』の情報を海外メディア向けに解禁した。既に各サイトはプレビュー記事やプレイ動画を掲載している。その海外メディアのひとつであるGameXplainがYoutubeに、半月前に議論された装備問題を検証する動画を投稿した。

動画内の51秒付近を見るとリンが水着装備のひとつである「Diving Bodywear」を装着している。日本版で「ダイヴボディ」にあたる衣装だ。日本版のリンの「ダイヴボディ」は胸元が空いており胸部の下半分も露出していたが、この欧米版の映像では胸部全体が布で覆われている。また、水着装備同様に胸部露出の多かった「バトルボディ」もリンのものは谷間部分の肌の露出などがなくなっている。

GameXplainはもうひとつの変更を報告している。『XenobladeX』では主人公のキャラメイクが可能であり、性別や髪型、顔のパーツや体格が設定できる。日本版『XenobladeX』では女性キャラクターを作る時にバストサイズの設定も可能だった。しかし欧米版ではバストサイズを変更するスライダー自体が削除されており、バストの設定が不可能となっていることがわかる。

GameXplainの知名度はそれほど高くないかもしれないが、任天堂のゲームに特化したメディアであり、この動画のほかにもかなりの数の欧米版『XenobladeX』の動画をあげている。発売日の12月4日まであと2周間と迫っていることから、製品版もこの変更された仕様で発売されると考えられるだろう。

また、装備による露出度の変更は、動画を見る限りリンのみに適応されているようだ。ほかの女性キャラクターは、水着系でも日本版と同様の露出度の高い装備となっている。このことから、どうやらリンは13歳という年齢設定から装備のデザインを変更されてしまった可能性が高い。露出度の高い装備は許容されながらも、13歳の少女がそれらを着衣することが欧州のレーティング機関PEGI や北米のレーティング機関ESRBに引っかかってしまったようだ。

左が欧米版、右が日本版。同様の装備をしているが、はっきり違いがわかる。
左が欧米版、右が日本版。同様の装備をしているが、はっきり違いがわかる。

 

『零』での変更

任天堂は10月に発売された『Fatal Frame: Maiden of Black Water』(邦題: 零〜濡鴉ノ巫女〜)でも露出に関連した変更を行った。『零』シリーズでは特定の条件を満たすと主人公に様々なコスチュームを着せられることができ、人気の要素のひとつとなっている。しかし最新作『濡鴉ノ巫女』の欧米版では、日本版では存在した水着のコスチュームなどが一部削除されている。

『濡鴉ノ巫女』における「水着」のコスチューム。エンディング条件によって開放されるクリア後のご褒美だ。 画像出典: GameSpot
『濡鴉ノ巫女』における「水着」のコスチューム。エンディング条件によって開放されるクリア後のご褒美だ。
画像出典: GameSpot

見ておわかりいただけると思うが、ゲーム内の女性キャラ「夕莉」が下着のような衣装を身に着けており、胸部・下半身ともにかなり露出度が高い。この衣装は特定の条件でクリアしたのちにアンロックされるコスチュームのひとつである「水着」だ。露出度が直接的な原因であるかどうかは断定できないが、欧米版では「水着」は削除されてしまった。欧米版ではこの削除を補うように、日本版では実装されていないゼルダ姫のコスチュームやメトロイドのゼロスーツサムスのコスチュームが追加された。しかし、「水着」の削除に落胆した海外ユーザーも多かったようだ。

 

規制の理由は任天堂の作風にある?

海外フォーラムNeogafでは「露出の控えめなリンの方が自然で好みだ」という賛成の声や、「ゲームの表現そのものを貫くべきであり衣装を変えないでほしかった」といった今回の変更に対する不満の声の両方が存在する。そして特に目立つのが「どうして最近の欧米版はこんなにも規制されてしまうんだ?」という声だ。確かに『濡鴉ノ巫女』や『XenobladeX』と欧米版の表現変更が続いているのは事実だ。はたして本当に、欧米版の規制が厳しくなってしまったのだろうか?

欧米版の規制が厳しいという事実もさることながら、『濡鴉ノ巫女』『XenobladeX』ともに前作よりも露出表現がかなり増えているという部分にも着目してみたい。前作である『Xenoblade』にも水着衣装はあったが布地の面積がせまい過激なものは少なく『XenobladeX』の水着には届かない露出度だった。『XenobladeX』では今回取り上げたものとはまた別の、複数のマイクロビキニやバニーガールなど、露出度の高い装備が用意されている。任天堂が携わるようになってからの『零』シリーズはビキニやボンテージなどが登場し、『濡鴉ノ巫女』では肩紐のない下着にも見えるコスチュームが用意されるようになった。

また、任天堂は6月に日本で発売した『ファイアーエムブレムif』でも露出表現をみせている。ゲーム内のアクセサリー屋で「闇の衣」というアイテムを購入し女性キャラクターに適応すると、そのキャラクターは胸部の半分が露出するような大胆な衣装に変身する。また、同社からWiiU向けで12月に発売を予定している『幻影異聞録♯FE』でも発売前から水着を着せたヒロインのスクリーンショットを公開するなど露出を前面に出している。

『ファイアーエムブレムif』の衣装「闇の衣」だ。前作である『ファイアーエムブレム覚醒』にはない大胆な衣装が導入されている。
『ファイアーエムブレムif』の衣装「闇の衣」だ。前作である『ファイアーエムブレム覚醒』にはない大胆な衣装が導入されている。

近年の傾向から考えると、最近の任天堂のゲームの欧米版の規制が激しいというよりも、任天堂が出すゲーム自体の露出傾向が高まっており、規制せざるを得ないという見方もできる。もちろん、日本はセクシャルな表現について独自の文化を持っており、その日本のレーティング機関であるCEROが、PEGIやESRBといった欧米のレーティング機関よりセクシャルな表現に甘い評価をつける傾向があることも否定できない。しかしレーティングに引っかかってしまうほど直接的なセクシャル表現をゲームに組み込むところに、任天堂の表現の変化が感じられる。

任天堂の表現の変化として、最近では流血や暴力表現を取り入れている『Devil’s Third』もあげられる。暴力表現のあるゲームを販売し始めたのと同様に、セクシャルな表現も取り入れ始めているのかもしれない。もし今回の『XenobladeX』の規制が本当ならば、2016年に欧米で発売を予定している『ファイアーエムブレムif』『幻影異聞録♯FE』にも何かしらの規制がかかることになるだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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