任天堂の岩田聡社長が死去、残された”3つの種”

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任天堂の岩田聡社長が、2015年7月11日(土)に、胆管腫瘍で亡くなったことが明らかとなった。55歳だった。

DS、Wiiなどヒット生みだす

HAL研究所でプログラマとしてキャリアをスタートした岩田氏は、2000年に任天堂に入社、2002年に代表取締役に選出された。岩田氏のもと、”ゲーム人口を拡大する”というテーマで生みだされたニンテンドーDSやWiiは、どちらも全世界で1億台以上を売り上げるメガヒットを記録している。また、開発部署にインタビューする「社長が訊く」シリーズや、配信番組「ニンテンドーダイレクト」においては司会役を務めるなど、社長みずから積極的にPR活動にも従事していた。

2014年6月には、岩田氏本人から自身が胆管腫瘍であることが打ち明けられていた。胆管とは、胆汁を肝臓から十二指腸へと運ぶ管であり、一般的に腫瘍ができても発見されづらい部位であるとされている。岩田氏も「一般的に、胆管腫瘍は早期発見が難しいとされていることもあり、治療の難しい病気と言われているそうですが、幸い私の場合は自覚症状のない段階で発見することができました」と説明していたが、その手術は無事に終わったと報告されていた。「治療のためには、早期に手術で切除することが望ましいとの診断をいただきましたので、先週手術を受け、手術は予定通りに無事終了いたしました」。

直近では、岩田氏は6月に開催されたE3 2015において映像のなかで姿を見せ、米任天堂のレジーことレジナルド・フィサメィ社長と人形劇を披露していた。また6月26日には第75期定時株主総会が開催され、岩田氏は壇上に立ち投資家たちからの手厳しい質問をいつものように受け答えていた。健康状態が悪いような素振りは見せておらず、それだけに、ゲーム業界や関係者にとって今回の知らせは突然の訃報だったといえるだろう。

残された3つの種

岩田氏は、存命中に3つの新たな事業やプラットフォームを推進しており、それらの”種”は開花する直前だった。1つは2014年1月に発表された「クオリティ・オブ・ライフ事業」だ。人生の質を向上させるという健康をテーマにしたハード・ソフト一体型プラットフォームビジネスが開発されており、その第1弾として睡眠と疲労を測定する機器を2015年中に展開するとしていた。また今年4月には、ソーシャルゲーム大手のDeNAと資本提携し、任天堂キャラクターが「ソーシャルゲーム」に登場することを発表している。またその際には、名前だけではあるものの、新型の据え置きハード「NX」の存在が明らかにされた。

任天堂だけでなく、ゲーム業界においてもキーパーソンであった岩田氏の訃報は、ビデオゲームという文化全体における大きな損失と言えるだろう。Wii Uやニンテンドー3DSなどにおけるビデオゲームの開発を中心としつつも、任天堂が健康やソーシャルといった新たな時代の潮流に”繊細に”迎合しつつあった時期でもあり、その行く末を岩田氏が見れなかったことは悔やまれる。存命中の岩田氏は代表取締役社長の席に居たが、現時点で後任は任天堂より発表されていない。

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。