PS風じゃなく「初代PS実機向け」ゲームを開発する人あらわる。“テスト環境”まで自作、ハード的制約とも戦いつつ

とある個人開発者による、「初代PS向け」ゲーム開発が注目を浴びている。PlayStation実機を開発環境に取り入れ、当時の技術的制約由来の描画問題などとも格闘しつつ、取り組んでいる様子である。

とある個人開発者による、「初代PS向け」ゲーム開発が注目を浴びている。PlayStation実機を開発環境に取り入れ、当時の技術的制約由来の描画問題などとも格闘しつつ、取り組んでいる様子である。

今回注目されているのは、プログラマー/ゲーム開発者のElias Daler氏による取り組みだ。Daler氏は昨年10月ごろより、この「PS1ゲーム開発プロジェクト」に取り組んでいるようである。同氏はXにてこの作品の進捗状況をポストしている。

ゲーム内容の詳細については、まだ定まっていないようである。現状では、独特な顔立ちの二足歩行する猫らしきキャラクターが、雰囲気のある町を歩き回り、NPCと対話する様子などが紹介されている。3Dアドベンチャーゲームとなるようで、主人公デザインは漫画家のねこぢる氏のイラストから影響を受けているという。注目すべきは、このゲームが「実際に初代PSで動作している」ということだろう。

上述のポストでは、Daler氏が本プロジェクトを開発している環境が写真で紹介されている。懐かしのPS機体には見慣れない配線も接続され、ブラウン管に同氏開発ゲームの映像を映し出している。Daler氏は自作のシリアル-USB変換ケーブルにより、PS実機から動作ログを出力できるようにしているとのこと。

また、技術面の取り組みもさまざま紹介されている。たとえば、モデルの前後関係がおかしくなり、服と服がめり込んだりする現象だ。これは初代PSが「Depth Buffer(Zバッファー)ではなく、Zソート法で奥行きを表現している」というハードウェア的制約に由来する。Zバッファーは現在でこそ、さまざまなコンソールなどが標準的に備えている描画法だ。

ところが初代PSはZソート法を利用しており、モデルの重なり合いを自然に表現するためには、開発者の工夫が重要となっていた。Daler氏も奥行きについてのパラメーターをモデルの各パーツに設定するといった工夫で、当時の開発者のようにこの問題に対処したそうだ。ほかにも、初代PSの『サイレントヒル』における霧の表現手法をそのまま再現するなど、技術的探求にも余念がないようである。

Daler氏による開発進捗には、継続して多くの人々が視線を注いでおり、同氏に向けた称賛などの反響も多く寄せられている様子。最近では海外メディア80 Levelなどにも取り上げられ、さらに脚光を浴びている。Daler氏が開発中のゲームは、もしも完成したならば、PS実機向けのパッケージソフトとしてリリースする計画があるとのこと。また、PSPやPS Vitaで遊べるようにする計画もあるようだ。

なお、本作を開発するDaler氏の過去の実績としては、国産ゲームエンジンのEbitengineを利用したシンプルなブロック崩し『Ebiten Breakout』やゲームエンジンから自作して開発中(テスト版が公開中)の「Project MTP」などがある。また、リリースには至らなかったものの、過去には主に技術面の興味から複数のゲームプロジェクトに取り組んでいたとのこと。高い技術力に裏打ちされた、今回の「PS実機ゲームプロジェクト」の完成に期待したい。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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