Netflixによる約11兆円規模のワーナー買収、「ゲーム事業は買収額評価に一切織り込んでいない」。“付加価値なし”にしつつも『ホグワーツ・レガシー』などは高く評価

Netflix社はワーナーの企業価値を評価するにあたり、WB Gamesの価値を評価モデルに一切織り込んでいなかったという。

Netflix社は12月5日、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(以下、ワーナー)のスタジオ事業とストリーミング事業部門を、株式価値にして720億ドル(約11兆円)、負債を含めた企業価値を830億ドル(約13兆円)と評価して買収することで合意したと発表した。今回Netflix社の共同CEOであるGregory Peters氏は株主との電話会議にて、ワーナーのゲーム部門であるWB Gamesに関して言及している。Games Radar+などが報じている。

WB Gamesは、ゲームパブリッシャーだ。傘下に『ホグワーツ・レガシー』の開発元として知られるAvalanche Softwareや、『バットマン アーカム』シリーズの開発元Rocksteady Studiosなど複数のスタジオを擁している。ワーナーが有する豊富なIPが活用され、さまざまなゲームが展開されてきた。

『ホグワーツ・レガシー』

そんなWB Gamesはワーナーのスタジオ事業に含まれており、今回の買収がもし完了すればNetflix社の傘下に入ることとなる。ただしNetflix社の共同CEOであるPeters氏は株主との電話会議にて、ゲーム事業についてはワーナー全体に比べれば相対的に小さい位置づけにあるとして、取引の評価モデルの上でいかなる価値も織り込んでいないと言及。つまり提示額には、少なくともゲーム事業による追加の上乗せ評価は反映されていないとみられる。

とはいえ手がけてきた作品やスタジオについては高く評価しているそうで、『ホグワーツ・レガシー』をその代表例として挙げつつ、ゲーム事業がもたらすチャンスへの期待も述べている。Netflix社でもゲームコンテンツの展開を推し進めており、そうしたコンテンツの中に取り込めることにも期待しているそうだ。

『ホグワーツ・レガシー』は売上2200万本もの世界的ヒットを記録したタイトルであり、ワーナーのゲーム事業を牽引する存在として、過去に同社は続編を最優先事項として進めることを伝えていた(関連記事)。一方でWB Gamesからその後2024年2月に発売された『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』は売上が振るわなかったとみられ、2024年5月に正式リリースされた『マルチバーサス』についても約1年でサービス終了。今年2月には『マルチバーサス』を手がけたPlayer First Gamesを含む3つの傘下スタジオが相次いで閉鎖された(関連記事)。

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』

そうした状況が影響したかどうかは不明ながら、ゲーム業界で見れば一定の規模を誇るWB Gamesであっても、ワーナー全体の規模を踏まえて買収額の評価モデルには織り込まれなかったようだ。なおNetflix社による買収合意の発表後には、パラマウント・スカイダンスがワーナーに対し、敵対的買収案を発表(Reuters)。ワーナー側の検討を待つ状況にある。また大規模な買収にあたっては各国の規制当局の承認なども必要になるとみられ、買収完了までは長い年月を要するだろう。買収前後でWB Gamesの運営方針が変化するかどうかは注目されるところだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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