『マインクラフト』は「基本プレイ無料にはしない」と開発者が表明。そもそも“世界でもっともお買い得”だから
Mojang Studiosは3月23日、同社が開発するサンドボックスゲーム『マインクラフト』を基本無料プレイにはしないとの意向を示した。

Mojang Studiosは3月23日、同社が開発するサンドボックスゲーム『マインクラフト』を基本無料プレイにはしないとの意向を示した。Mojang Studiosのエグゼクティブ・プロデューサーがIGNによるインタビューで語った。
『マインクラフト』は、Mojang Studiosが手がけるサンドボックスゲームだ。本作の世界はさまざまな種類の3Dブロックで構築されており、破壊と創造を繰り返してプレイヤーが思い思いに冒険や建築を繰り広げていく。対象機種に応じて2つのエディションが展開されており、PC向けの「Java版」とコンソールやスマートフォンでもプレイ可能な「Bedrock版(統合版)」が存在する。

Mojang Studiosでエグゼクティブ・プロデューサーを務めるIngela Garneij氏によると、『マインクラフト』を「基本プレイ無料化」することはないという。「できるだけたくさんの人にプレイしてもらう」ということこそが『マインクラフト』が持つ目的であり、それが彼らの理念でもあるのだそうだ。すなわち「ゲームを買い切りで提供することで多くのプレイヤーに遊んでもらう」という考えとなるわけで、一見矛盾をはらんでいるように思えるかもしれない。Garneij氏は『マインクラフト』によりマクロな視点での価値を見出しているようだ。
現在たくさんのプレイヤーを抱える人気ゲームの多くが「基本プレイ無料」の形態をとっている。これらのゲームでは、キャラクターのスキン・装飾といった有料コスメティックや、ゲームのプレイに応じた報酬を受け取れる「バトルパス」の販売など、少額課金によって収益をあげるスタイルが中心。有料作品と比べて大きな収益を出すこともある。また、近年ではもともと有料販売をおこなっていたゲームが「基本プレイ無料」に移行する例も多く、『ロケットリーグ』や『レインボーシックス シージ』などがその例となる。Garneij氏はそうした施策を打ち出さない理由として「『マインクラフト』は基本プレイ無料形態で運営するよう設計されてはいない」と語っている。

たしかに、「基本プレイ無料」が安定したビジネスモデルとして一定の評価を獲得している一方で、有料作品が「基本プレイ無料」へと方針転換を図ることは必ずしも得策ではないかもしれない。たとえば、2017年にリリースされたバトルロイヤルゲーム『PUBG: BATTLEGROUNDS』は、2022年1月に「基本プレイ無料」へと移行。瞬間的にプレイヤー数が2倍ほどに増加したもののすぐ減少、その後は緩やかな増加に留まっている(SteamDB)。プレイヤーベース維持には繋がったかもしれないものの、『マインクラフト』のようなすでに強固なプレイヤーベースをもつ作品にとってこうした施策がどれほどのメリットをもたらすかは疑問だ。
Garneij氏の見解は、『マインクラフト』が無料化して一時的に人口を増やしたところで、長い目で見た際に作品としての価値が削がれてしまうということだろう。おそらくは「ゲームを購入したらその後ずっと遊べる」という意味で、同氏は「『マインクラフト』は世界でもっとも“お買い得”である」と説明している。また、業界での生き残りのためにマネタイズを強化せざるを得ないプレッシャーについて訊かれたGarneij氏は、そうした感覚はないと否定。Mojang Studiosにとって大事なことは「これまでにゲームを購入してくれたプレイヤーがずっとゲームを楽しみ続けられること」なのだと強調した。

Garneij氏によって語られたMojang Studiosの姿勢からは、長い歴史を持つ作品の生き残りに関する重要なファクターが垣間見える。作品を長らく支える既存プレイヤーを大切にする方針は、強いユーザーコミュニティの形成に寄与するという側面もある上に、新しいプレイヤーが作品を長く愛そうと思う動機にもなりえる。また買い切り形式は、基本プレイ無料ゲームにありがちな、「取り残される恐怖」や継続的な課金によるプレイヤーの“遊び疲れ引退”の回避にも有効なのだろう。『マインクラフト』のような作品が未来を見据えて運営する場合、まず第一に大切にするべきは既存プレイヤーなのかもしれない。
なお、3月23日に放送された「マインクラフト ライブ」においては、3月25日に春の無料大型アップデート「Spring to Life」が配信予定であることが明かされた。グラフィック大幅改善の新機能「Vibrant Visuals」を含んださらなるアップデートも今後数か月以内に予定されているという(関連記事)。無料アップデートによってプレイヤーを魅了し続ける姿勢も、安定した運営の秘訣なのだろう。
『マインクラフト』はJava版がPC向けに配信中。Bedrock版(統合版)はPC/iOS/Android/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switchなどに向け配信中だ。
【UPDATE 2025/3/24 15:38】
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