元『GTA』開発者手がける“超大作”『MindsEye』、批判殺到の厳しい幕開け。バグによる珍現象続出や“寄り道厳禁”ゲームプレイなど、重い課題並ぶ
Build A Rocket Boyは6月11日、『MindsEye』をリリースした。本作のSteamユーザーレビューには不評が多く寄せられている。

IO Interactive/Build A Rocket Boyは6月11日、『MindsEye』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)および海外PS5/Xbox Series X|Sで、日本語表示に対応している。本作のSteamユーザーレビューには不評が多く寄せられ、「賛否両論」ステータスでの幕開けとなっている。
本作は、物語主導のSFアクションアドベンチャーゲームだ。舞台となるのは、テクノロジーが支配する砂漠の大都市「レッドロック」。そして主人公ジェイコブ・ディアスは謎の神経プラント「MindsEye」を移植され、極秘任務を遂行していたものの、記憶を失ってしまった元兵士だ。ジェイコブはレッドロックでの新たな生活を始めたものの、やがてテクノロジー企業と市長との争いに巻き込まれ、自らの過去を突き止めるために戦うことになる。

本作を手がけるBuild A Rocket Boyは、Leslie Benzies氏によって創設されたゲームスタジオ。Benzies氏はかつてRockstar Northに在籍し、『グランド・セフト・オートIII』以降の同シリーズ作品などで、プロデューサーなどを担当した人物だ。同氏はRockstar Northを退職後、2017年にBuild A Rocket Boyを設立。そして多額の資金調達を経て本作を発表し、「新たな超大作(blockbuster)ゲームになる」とアピールしていた。実績ある同氏が主導して手がける作品として、一定の期待が寄せられてきた。
そうしてついにリリースを迎えた本作。しかしSteamユーザーレビューでは本稿執筆時点で約650件中好評率が42%にとどまる「賛否両論」ステータスとなっている。期待の新作として打ち出されたものの、評価面では苦戦を見せている状況だ。
本作はUnreal Engine 5で制作されており、人物の表情から街並みに至るまでグラフィックについては高精細に描かれている。またAIを含めテクノロジーの乱用や暴走といったテーマを描くストーリーも見どころ。ユーザーからもそうした持ち味は一定の評価を受けている。

一方でゲームプレイについては、オーソドックスなカバーアクションTPSとして進行。ドローン操作などの遊びも散りばめられているものの、大型の最新ゲームとして単調さを覚えるつくりといえる。またゲームは完全にリニア進行するため、マップ自体はオープンワールドながら探索することは不可能。運転中などに道を逸れるとゲームオーバーとなる。基本的に運転して目的地に向かい、戦闘をしたりカットシーンを見たりすることを繰り返すゲームサイクルだ。
さらに最適化不足や動作の不安定さはPC版を含めすべてのプラットフォームで課題となっており、たとえば運転シーンではパフォーマンスが大きく落ち込みを見せる。くわえて運転中には一般車両の挙動が不安定で、立ち往生した車が渋滞を引き起こすような現象もしばしば発生。またそうした一般車両を含め、障害物にぶつかると走行が大きく妨げられる物理演算となっている。ゲーム中にはたびたび運転シーンが挟まるものの、決められたルートしか走れず、快適には走りづらい格好だ。
ユーザーレビューにおいてもそうした課題は指摘されているほか、描画の不具合報告なども見られ、いわゆるフルプライスの作品として作り込みが甘いところが指摘を受けている状況だ。また『グランド・セフト・オート』シリーズに携わったBenzies氏が率いるスタジオということもあり、オープンワールドを期待していたユーザーが肩透かしを食らった側面もある様子。ちなみに本作ではクリア後に自由にワールドを移動できるモードも用意されており、街並みのグラフィックは評価も受けている。それだけに、完全なリニア進行ではなく遊びの幅が欲しかったと惜しむ声も散見される。
なお本作は「現実とデジタル世界の境界線を曖昧にするようなマルチワールドゲーム」というコンセプトで展開される、『EVERYWHERE』というプラットフォームの先がけとなるゲームだ。これまでのBenzies氏の説明を見るに、『EVERYWHERE』がゲーム制作・配信プラットフォームとなることもうかがえた。本作でもクリア後にユーザーによるコンテンツ制作が可能なシステムがアンロックされる。
とはいえゲーム内容自体は、初動でユーザー評価面における躓きを見せている状況もある。なお本作に向けては発売後もアップデートや改良がおこなわれることも告知されていた。今後のアップデートで課題が解消されていくのか、そして『EVERYWHERE』がどのように展開されていくのかは注目されるところだろう。
『MindsEye』はPC(Steam/Epic Gamesストア)および海外PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。