マイクロソフトのゲーム向け生成AI「Muse」発表。ゲームそのものを最大2分間リアルタイム生成可能、開発者にもプレイヤーにも役立つAIを目指して
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米マイクロソフトの研究機関Microsoft Researchは2月20日、ゲーム向け生成AIモデル「Muse」を発表した。同社はMuseを用いて、ゲーム開発の支援や新たなゲーム体験の創出を目指しているという。Microsoft Researchのブログ記事(英語)にて、詳細と共に明かされている。
Microsoft Researchは当初、まずはゲーム開発者を支援する機能に焦点を当ててMuseの開発を始めたという。アイデアを素早く形にするために、インタラクティブなインターフェースを実装したそうだ。さらには、Museの開発進行に合わせて、ゲームのプレイヤーにも恩恵をもたらすAIへと方針を転換させていった模様。AIによって生成された映像上のキャラクターを、コントローラーを用いてリアルタイムに操作するデモ映像などが確認できる。プレイするたびに多様なバリエーションを生み出してくれる新たなゲーム体験が示唆された。
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また、Museの応用が期待されるのは、ゲームのコンテンツに関してのみではない様子。たとえば、AIを用いて最適化を行うことで、古いハードウェアでしか遊べないような多くのクラシックゲームを、現代のデバイスで簡単に動かせるようになる可能性があるそうだ。過去にリリースされてきた膨大な数のゲームを、今を生きる我々が手軽に遊べるようになる未来も遠くないのかもしれない。ゲームのアイデアを簡単にプロトタイプに落とし込むための機能や、プレイヤーもコンテンツ制作に参加できるようになる機能なども、今後の展望として計画しているという。
Museの学習に用いられているのは、デベロッパーNinja Theoryが手がけた『Bleeding Edge』だ。なお、Ninja Theoryは2018年にマイクロソフトに買収されており、以降は同社のゲーム開発部門「Xbox Game Studios」に参加している。こうしたデベロッパーとの連携は、多数のゲーム企業を傘下に持つマイクロソフトならではの強みだろう。ちなみにNinja Theory と Microsoft Research はどちらもケンブリッジに拠点があり、協力が容易であったことから、『Bleeding Edge』が抜擢されたそうだ。
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ところで、Microsoft ResearchはMuseを評価するにあたって「一貫性」「多様性」「持続性」の3つの基準を挙げている。このうち、特に「一貫性」は、AIを用いたゲーム開発で難しいとされてきたことの1つだ。手作業でのゲーム開発では、定まったゲームプレイやテーマ性が掲げられることが多いだろう。プレイヤーが遊んでいる最中にそのゲームの作風が大きくブレたり、脈絡が失われたりすることは珍しい。ところが従来のAIをゲーム開発へ応用する場合、そうした問題も生じやすい点が課題となっていた。その点Museではすでに最大2分間の一貫したゲームプレイを生成できるとのこと。現時点ではゲーム1本を丸ごと生成できるといった技術ではないものの、先述したようなプロトタイピングなどへの活用が期待されそうだ。
ちなみにAIを用いたゲーム開発においては、特殊な例も存在する。AI開発企業であるEtchedとDecartが共同で発表した「マインクラフト風」のサンドボックスゲーム『Oasis』では、AIが生み出す“カオス感”があえてゲームの特徴として掲げられていた(関連記事)。
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なおマイクロソフトはゲーム事業以外では、AI業界を牽引する「OpenAI」の協力のもと、「Copilot」ブランドの開発などにも莫大な投資を続けている。今回はゲーム事業においてもAIの活用が推し進められた格好だ。来月3月18日よりアメリカで開催されるゲーム開発者会議「GDC 2025」に向けて、Museについてこれからさらなる発表が控えているようだ。今後の発展に注目していきたい。