Metaの幹部が、VR・メタバース事業は今年次第で「歴史的成功or伝説級の大失敗」になると表明したとの報道。“勝負の年”として社員を奮い立たせる
MetaのCTOとしてReality Labs部門を率いている「ボズ」ことアンドリュー・ボスワース氏の、社内フォーラム上での発言が報じられ、注目を集めている。同氏は2025年をReality Labsにとっての“勝負の年”と見ており、今年次第で同部門が「伝説級の大失敗」として語り継がれる可能性もあると考えているようだ。Business Insiderが報じている。
Meta社のReality Labsは、VRやARのハードウェアやソフトウェアを開発してきた事業・研究部門だ。Questやメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」などを手がけてきた。これまで同部門のVR開発には数百億ドルが投じられてきた一方で売上面では大きな成果を上げられておらず、2020年から2024年にかけて500億ドル(約7兆6000億円)近い損失を出している(PC Gamer)。先週発表された2024年第4四半期の決算発表でもMetaのReality Labsがまたも約50億ドル(約7600億円)の営業損失を出したとされている(資料pdf)。
そうした中で今回、ボスワース氏が社内フォーラム内で昨年投じた発言がBusiness Insiderに報じられ、話題となっている。同氏は発言において、2025年がReality Labsにとって同氏が在籍した8年間のうちもっとも重要な年になると表明。QuestなどのMR機器をはじめ、全体的に売上やエンゲージメントなどを促進する必要性があると言及した。また長期的な視野では、「Horizon Worlds」のモバイル展開を大成功させる必要があると説明。そして同氏は、2025年はReality Labsが「先見の明のある事業」として語り継がれるか、あるいは「伝説級の大失敗」として語り継がれるかの転換点になるとの考えを示している。
ボスワース氏の発言を見るに、損失を膨らませてきたReality Labsが“イチかバチか”の窮地に立たされているかのような印象も受ける。しかし先週Business Insiderが報じた社内フォーラム上のボスワース氏の発言では、Reality Labsの売上は2024年に40%増加したことが伝えられ、同氏は「2025年には大きな成功を得られる」と語っていた。また、この発言においてはReality Labsがこれまでで最も成功した年であったとも言及。とはいえ「まだ十分ではない」とし、「まだ世界に確たるインパクトを与えていない」との考えも示されていた。つまり事業として好転している傾向はあるものの、社員を鼓舞する意図もあってこのままさらに成功し続けなければ「伝説級の大失敗」になるといった表現が使われた可能性もあるだろう。
なお先述した2024年第4四半期の決算発表においては、Meta社のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏も、2025年をメタバースにとって重要な年(pivotal year)になると表明。長期的に取り組んできた投資が成果を上げ始める年になるとの考えを述べていた。今年はMeta社の経営陣が、MR事業やメタバース事業のさらなる成長に大きな期待をかける1年であることもうかがえる。
ちなみにReality Labsでは、「Meta AI」や「Llama」といったAI研究を担うFAIRがReality Labs – Researchに属している。AI部門でも決して安くはない出費があるとみられ、これまでどおりの赤字続きではReality Labsも立ちいかない状況ではあるだろう。ボスワース氏によるReality Labsの「伝説級の大失敗」を危惧する発言も、そうした時勢を踏まえた考えだった可能性はある。ゲーム産業もメタバースやVRへの進出を見せる中、Meta社のメタバース・VR事業が今年どのように舵を切っていくのか。引き続き注目されるところだろう。