『League of Legends』グループステージが終了した世界大会、ノックアウトステージへの展望

今月より始まった『League of Legends』の世界大会「World Championship 2015」も2週目となり、グループステージの後半戦へと突入した。後半は1グループずつ6試合が実施され、各グループから決勝トーナメントであるノックアウトステージに出場する上位2チームを決定していく。

今月より始まった『League of Legends』の世界大会「World Championship 2015」も2週目となり、グループステージの後半戦へと突入した。グループステージ後半は1グループずつ6試合が実施され、各グループから決勝トーナメントであるノックアウトステージに出場する上位2チームを決定していく。1週目の結果を踏まえて、2週目の見どころを紹介していこう。

参考記事: 『League of Legends』世界大会、グループステージ折り返しとなる第一週の流れを振り返る

 

第一週の結果を踏まえたメタ概観

ファーストプッシュ戦略

ファーストプッシュ戦略とは、TristanaやJinxのような建造物破壊能力に優れるADCを軸に、AzirやLuluといったプッシュ能力が高くゾーンコントロールに長けるMidを用いて、すみやかに敵タワーを破壊。試合序盤でゴールドの優位を作り出し、終盤にADCが大きく活躍できるようにするという戦略だ。タワーを早期に破壊することは、相手の視界を奪うことにも繋がるため、マップの支配権争いにも有利に働く。第一週ではC9がこの戦略を用いて3連勝。LGD・BKTを除く他チームも同じような戦略を用いており、「ダブルテレポート」と併せて今大会の主流となっている。

 

各ポジションの注目チャンピオン

Top
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Dariusは、強力なTopレーナーとして8割以上のPick/Ban率を誇っている。うまく立ち回れば序盤のうちにキルを重ねて大幅に成長し相手を圧倒できるが、相手チームのTopに対する戦略によっては抑えこまれてしまうこともある。Olafは、スタンなどのハードCCを無効化する能力を持っており、相手チームの後衛にどんどん踏み込んでいくことができる。相手側が機動力を欠くADCを要としたチーム構成であれば、うまく刺さりやすい。Ultimateで問答無用のノックアップを相手チームに食らわせることのできるMalphiteも、今大会のメタでは有力なカウンターチャンピオンがいないため、よくPickされる。

 
Jungle
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Eliseは、方向指定だが確定スタンのスキルを持ち、離脱・追撃能力に優れている。さらに、アイテムビルドの柔軟性が高いため、取り合いになる率が高いチャンピオンになっている。Nidaleeは、遠距離からのPoke能力を持ち、ダメージ出力に優れている。チーム構成を選ぶものの、戦略次第では相手の構成に突き刺さることを示している。

 
Mid
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前述したとおり、ゾーンコントロールに優れているのはAzirやLuluだが、広範囲の確定スタンを持つVeigarもTowerを攻める際には強力なゾーニングを行える。またダブルテレポート構成へのカウンターとして、LeBlancやZedといったアサシンも用いられ始めた。Ultimateのおかげでもともとマップ上の移動能力が高いTwisted Fateに、さらにテレポートを積むという戦略も一部で見られる。

 
ADC
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TristanaやJinxは、ひとつの対象に与えるダメージが試合序盤から高いため、ファーストプッシュ戦略で用いられている。ひとたび育ってしまうと試合終盤でも大きな脅威となるため、対面に来た場合は序盤に失速させることが重要となっている。Kog’Mawは中盤から発揮するPoke能力と、終盤でのハイパーキャリー能力が買われている。今大会のメタではエンゲージ手段が乏しくなることがあるため、構成によってはUltimateでのイニシエートが可能なAsheや、味方をぶつけてノックアップを与えられるKalistaなども重宝されている。

 
Support
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ハードCCを持ちエンゲージの要となることが多く、AoE(エリア・オブ・エフェクト、広い範囲に効果のあることを指す)のスタン能力を持つAnnieやKennenが重宝されている。Braumはパッシブで味方の攻撃によるスタンを誘発できることから、相手チームの人数を減らすことに重点を置いたピックアップ構成でよく用いられる。今大会で特に注目すべきSupportは、Tahm Kenchだろう。Tahm Kenchは味方チャンピオンを飲み込んでしまうことで相手の攻撃から守ることができ、またUltimateではマップの半分近い距離を味方チャンピオン1体といっしょに移動することができる。そのタフさも相まって非常に強力なチャンピオンである。

第二週(グループステージ5~8日目)の試合録画はLoL esports公式のYouTubeチャンネルで公開されている。どの試合も白熱した戦いが繰り広げられており、見て損はないだろう。

 

各グループの結果

LGDのサブ、Flame選手(Top)。先週の不調を取り戻すべく正メンバーのAcorn選手と交替となった。画像参照元: Riot esports Flickr
LGDのサブ、Flame選手(Top)。先週の不調を取り戻すべく正メンバーのAcorn選手と交替となった。画像参照元: Riot esports Flickr

グループA: 閃光の一撃が虎を退ける

Season 2を制覇した台湾リーグからの刺客Flash Wolvesが、その真価を見せた。PNG、そしてKOOに圧倒されて失速したCLGを破ると、その勢いのままにグループトップと目されたKOOをも破り、第二週全勝でグループステージ1位を獲得したのだ。

特に第5試合の対KOO戦は素晴らしく、KOO側にDarius、Azirといった強力なチャンピオンを渡しながらも、適切な対抗戦略を見せた。必ずしも俊足とは言えないDariusに対して強力なスローを使うLuluを対抗させることでその戦闘力を削ぎ、砂の兵士による強力なゾーンコントロールを誇るAzirに対しては兵士と本体との間隙をついて大ダメージを与えられるLeBlancを当てたのだ。この試合におけるMaple選手の活躍は往年のアサシンメタを彷彿させるほどに圧倒的なものだった。

更に集団戦ではイニシエート(先手を取って相手のフォーメーションなどを崩すために仕かけること)役のGollira選手をKarsa選手が完全にシャットアウトしてKOOに有効な攻撃を行わせなかった。この日のKarsa選手は全ての試合で素晴らしいJungleの仕事を披露しているので、ぜひ動画で確認してほしい。

かくして、アジア勢の一角としての存在感を示したFWが第一シードで決勝トーナメント進出となった。なおKOOは勝ち数が同じながら、直接対決においてFWに2敗しているため第2シードとなる。

グループA結果

1位 Flash Wolves(台湾) 4勝2敗 ※KOOとの直接対決で全勝しているため1位
2位 KOO Tigers(韓国) 4勝2敗
3位 Counter Logic Gaming(北米) 2勝4敗
3位 paiN Gaming(Wildcard – ブラジル) 2勝4敗

 

グル―プC:覇者の矜持 盤石のSKTelecom T1がグループを突破

はっきり言ってしまうと、このグループについてはあまり書くことがない。
S3のWorld Championshipを制覇し、今なお世界中のプレイヤーから敬意を集めるSKTelecom T1は、全グループ中で唯一無敗という 圧倒的なパフォーマンスを見せてステージ突破を果たしているからだ。

中国からの出場チームの中で唯一大崩れしなかったEDGは、SKT以外のチームに危なげなく勝利し、2位でグループステージを突破している。

グループC結果

1位 SKTelecom T1(韓国) 6勝0敗
2位 Edward Gaming(中国) 4勝2敗
3位 H2K(ヨーロッパ) 2勝4敗
4位 Bangkok Titans(Wildcard – タイ) 0勝6敗

 

グル―プD:漂白の強者、KT Rolsterの快進撃

グループ突破候補と思われていた中国からの出場チームが調子を落とし、一方でヨーロッパの新鋭チームであるOrigenが好調なスタートを切ったグループD。第二週はKT Rolsterが快進撃を見せた。不調を修正しきれないLGDを下すと、そのままTeam SoloMidとOrigenをも下して5勝1敗でグループリーグを1位通過。

Origenは先週と比べると、ダブルテレポート編成などの奇襲効果が薄れたこともあってか、精彩を欠く展開が多かった。また、グループステージ敗退が決まったLGDは、残りの2戦では打って変わったようにリラックス。本来のチーム編成とプレイスタイルを取り戻し、KT以外の2チームとの戦いで勝利を収めている。最終的な結果としては、4勝2敗のOrigenが2位でグループステージを突破している。

グループD結果

1位 KT Rolster(韓国) 5勝1敗
2位 Origen(ヨーロッパ) 4勝2敗
3位 LGD Gaming(中国) 2勝4敗
4位 Team SoloMid(北米) 1勝5敗

 

グル―プB:Take my energy Fnatic!

Cloud9の思わぬ躍進により、残り3チームが1勝2敗の横並びで第二週を迎えることになったグループB。EU LCS Summer Splitにおいて無敗の記録を打ち立てたFnaticが、とっておきであろう隠し玉を披露してみせた。

この日のFnaticの試合は、ピックが特殊だった対Cloud9、対Invictus Gaming戦もさることながら、対AHQ e-Soprts Club戦は凄まじい試合となった。第1シードを賭けた一戦において、AHQのJinxがこれ以上ないほどに成長し、それを万全のTahm-Kenchが守るという圧倒的に不利な状況を迎えた彼らがいかに戦ったのか……試合結果もさることながら、適切に使用されるTahm Kenchの力強さも強く印象付けられる試合であったとだけ述べておこう。実際の試合は、ぜひとも録画を見て確かめてほしい。

敗れたAHQは、3勝3敗で並んだCloud9とのタイブレークを制して2位でのグループ突破を決めた。

Cloud9は第二週において、グループ突破に必要なたった一つの勝利を得ることができなかった。シンデレラの魔法は終わってしまったのだ。こうして今年のWorldsは、グループステージを突破した北米のチームがいないという、史上初の事態となった。

グループB結果

1位 Fnatic(ヨーロッパ) 4勝2敗
2位 ahq e-Sports Club(台湾) 4勝3敗
3位 Cloud9(北米) 3勝4敗
4位 Invictus Gaming(中国) 2勝4敗

 

ノックアウトステージに向けて

トーナメント方式で戦うノックアウトステージは、今年から事前決定方式ではなく、抽選で準々決勝の配置が決まる方式となった。準々決勝は以下の組み合わせに決定している。

画像参照元: LoL Esports
画像参照元: LoL Esports
グループステージ最終日に行われたノックアウトステージの配置抽選会では、Season 2 Worldsにて華麗なプレイで観客をわかせたMoscow Five(当時) のJungle・Diamondprox選手が抽選を行った。画像参照元: Riot esports Flickr
グループステージ最終日に行われたノックアウトステージの配置抽選会では、Season 2 Worldsにて華麗なプレイで観客をわかせたMoscow Five(当時) のJungle・Diamondprox選手が抽選を行った。画像参照元: Riot esports Flickr

10月15日25時から行われるのはFlash Wolves vs. Origen。Pick/Ban戦術に優れるFWと、西洋の復活を象徴するチームのひとつOGが激突する。16日25時からはSK Telecom T1 vs. ahq e-Sports Clubの試合が配信される。グループステージ無敗の王者SKTに対し、台湾最強のチームAHQはどのような戦いを挑むのだろうか。

17日22時からはFnatic vs. EDward Gaming。中国の強豪EDGと新生Fnaticの対決は、準々決勝でも随一の注目カードとなる。18日22時からの配信は、KT Rolster vs. KOO Tigers。奇しくも韓国チーム同士の対決となってしまったカードだが、強豪同士の対決なのは間違いない。

準々決勝前半は、日本からは少々観戦しづらい時間帯となるが、再配信やYouTubeでの録画配信も予定されている。今年の世界王者決定まであと2週間。白熱する戦いをお見逃しなく。

[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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