『League of Legends』には本当に“強制腕前不利マッチング(ルーザーズキュー)”は存在しないのか、統計学的に本格調査した人現る


Riot Gamesが開発・運営しているMOBA『League of Legends』(以下、LoL)。本作については、強制的に負けさせようとするマッチング、いわゆる“Losers queue(ルーザーズキュー)”は存在しないと開発者によってコメントされていた。そんなルーザーズキューの存在について、統計学的観点からアプローチしたユーザーが登場。海外掲示板Reddit上で話題となっている。

“Losers queue(ルーザーズキュー)”とは、プレイヤー間で俗語的に使われている用語のひとつだ。ランクマッチにおいて連勝した後などに、ゲーム側で負けが続いているプレイヤーとマッチングさせ、むりやり負けさせようとしている仕組みがあるのではないか、といった意見に基づいて使われることが多い。この言葉は日本語で「懲罰マッチ」「格差マッチ」などと呼ばれることもある。


『LoL』におけるルーザーズキューの有無については、リードゲームプレイデザイナーを務めるMatt Leung-Harrison氏によって、「存在しない」と明確にコメントされていた。Matt氏は、連勝した後に急に負け始めたのであれば、それは高いレベルの相手と対戦しているだけであり、それはRiot Gamesがわざと実力の低い味方などとマッチングさせているわけではない、と述べていた(関連記事)。

とはいえ、「勝ち続けた後になぜか負け続ける」という状況に遭遇すると主張するプレイヤーは少なくない。Matt氏のコメントについても、連勝後には自分の味方に勝率の低いプレイヤーが集まる一方、敵には勝率の高いプレイヤーが実際に集まっている、という返信などが散見される。

こうした「ルーザーズキュー」の有無について、統計学的観点からその存在を確認しようとする試みがおこなうユーザーが現れた。今回分析をおこなったと発表したのはrenecotyfanboy氏。同氏は「LeagueProject」というサイトを立ち上げ、独自にマッチを分析。相関関係などから、ルーザーズキューの存在が実際に確認できるかどうかを検証しているという。


今回の調査でrenecotyfanboy氏は、西ヨーロッパサーバー(EUWサーバー)の全ランク帯におけるソロキューの試合の約18万戦分をサンプルとして使用。2100名ほどのプレイヤーについて分析がおこなわれたという。ちなみに同氏は2023年にも同様の分析をおこなっているものの、マスターランク以上のサンプルに絞っていた。そのため前回は「学術的な水準からはかけ離れていた」と振り返り、今回ではサンプルの範囲を広げたようだ。ちなみに、分析結果より検証、および結論を出すにあたっては、博士号を取得している友人に査読を実施してもらったという。ルーザーズキュー分析における“本気度”がうかがえる。

renecotyfanboy氏いわく、ルーザーズキューが実装され“意図的に勝率が調整されている”のであれば、ゲーム数を重ねるほど勝率は調整された値に近づき、ランダム性から逸脱していく、と考えられるとのこと。つまり「勝ちすぎ」であれば負けるように、「負けすぎ」であれば勝たせるようになっている、ということだ。

renecotyfanboy氏は、確率にかかわる分析に用いられるマルコフ過程によって「ルーザーズキュー」のメカニズムを検証。ここで実際の試合のデータを分析したところ、試合の勝敗は、前回の試合の結果と“弱い相関”があると判明したようだ。具体的には、前回の試合に勝っていた場合、0.12±0.17%勝ちやすくなり、前回の試合に負けていた場合は、0.60±0.17%負けやすくなるという。

*直前の試合の結果に対し、現在の試合の勝敗がどうなるかを示した確率
Image Credit: renecotyfanboy on Web


以上の結果より、『LoL』ではわずかに連勝/連敗しやすいという、「ルーザーズキュー」にて主張されている内容に合致している。とはいえ、その影響は1%にも満たない。そのためrenecotyfanboy氏はこの結果について、存在しないという断定を避けつつ、「(ルーザーズキューが)あるとしても機能していないので、別の理由から相関があると解釈したほうが合理的だ」と結論づけている。

なおrenecotyfanboy氏は、いまだに根強くルーザーズキューの存在が信じられている要因として、シーズンの初期にランクが高すぎる/低すぎると、内部レート(MMR)が安定するまで連勝や連敗が続くためではないかと推察。ほかにも同氏は、「勝率が調整されているに違いない」という思い込みもルーザーズキューの妄信に繋がりうると示した。また低ランク帯では、自分のスキルを過大評価する傾向にあるともいい、複数の要因が影響しているのではないかと推察している。

以前より存在しないことが開発者により明言されていた「ルーザーズキュー」。今回はユーザーによる検証までおこなわれ、やはりそのような機能が存在する可能性が低いことが示されたかたちだ。連勝後に一度負けてしまうと、それまで調子が良かったにもかかわらず流れを逃してしまう気もするし、それがプレイに影響する、という事態も考えられるだろう。またそのような場合の負けというのは印象に残りやすい。そうしたさまざまな心理的要因が重なって、「ルーザーズキュー」によって勝率が操作されているように見えてしまうのかもしれない。