なぜ5pb.は5年前のXbox 360向けSTGを北米でいまさら発売するのか、『BULLET SOUL』の先に見据えるもの
【UPDATE 2016/10/27 20:20】 5pb.の盛政樹氏はTwitter上にて、Xbox 360向け北米版『BULLET SOUL -Infinite Burst-』の発売日が11月1日に決定したと発表した。価格は14.99ドルで、国内版の価格も追って改訂されるようだ。
【原文 2016/9/20 15:47】 MAGES. / 5pb. Games(以下、5pb.)は9月16日、『BULLET SOUL』をアメリカとカナダで発売した。プラットフォームはXbox 360でダウンロード専売。Xbox 360からXbox Oneへと世代交代のバトンがわたされてから約3年が経ち、Xbox 360向けに販売されるタイトルはスポーツゲームなどのマルチプラットフォームタイトルばかりという現状の中、それでも今あえて北米で前世代機種向けにシューティングゲームを発売した5pb.の狙いとは何だろうか。
『BULLET SOUL』は、2011年に国内で発売されたXbox 360向け縦スクロール・シューティングゲーム『バレットソウル -弾魂-』の北米バージョンだ。開発は有限会社タキオン。
いわゆる弾幕シューティングではあるが、敵を倒すとその敵の弾が無効化されるというゲームシステムにより実現したアグレッシブなゲーム性が大きな特徴。プレイヤーが積極的に攻める姿勢でプレイすると、そのゲームプレイが魂(ソウル)ゲージに反映されスコアアップに繋がる。
2014年には、ゲームモードの追加や各種調整などが施された『バレットソウル -インフィニットバースト-』が、同じくXbox 360向けに国内発売されている。
国内発売からおよそ5年半を経て北米地域で発売されることとなった『BULLET SOUL』、その狙いは何なのか。本作のプロデューサーである5pb.の盛政樹氏は、公式ブログにて「後方互換への道」と題した記事を投稿し、Xbox One上でXbox 360タイトルがプレイ可能になる後方互換と発売決定の経緯を報告している。
Xbox Oneの後方互換機能は、すべてのXbox 360タイトルがそのままプレイできるわけではなく、基本的にマイクロソフトがタイトルを選別して販売元に提案し、承認を得た上で互換対応をおこなう。そして作業が完了したタイトルから順次ユーザーがプレイできるようになる。所有しているXbox 360タイトルがディスク版であれダウンロード版であれ、互換処理が施されたゲームデータをXbox Oneにダウンロードしてプレイすることができる。ユーザーに追加費用は発生しない。
後方互換に対応したXbox 360タイトルは、2015年11月のサービス開始から追加され続けており、本記事の執筆時点で約250タイトル。その中には本作と同じく5pb.が販売、盛氏プロデュースにより世界中で発売されたXbox LIVE アーケードタイトル『ファントムブレイカー:バトルグラウンド』(以下、PBBG)など、日本のタイトルも数多く含まれる。
しかし、『バレットソウル -弾魂-』のように日本でのみ発売されたタイトルに関しては現時点でゼロである。シューティングゲームやアドベンチャーゲームなど、日本では国内でのみ発売のXbox 360タイトルが数多く登場し、当時は独自のポジションを築いていた。だが、そういったタイトルは、いまだひとつも後方互換されていない状況なのだ。
上で述べたように、後方互換を実現するにはマイクロソフトの技術的な協力が必要だ。マイクロソフトがどの程度の規模のチームを編成しているのかは公開されていないが、当初ユーザーが期待したほどのペースでは対応タイトルが追加されておらず、またフルプライスタイトルよりも比較的小規模なXbox LIVE アーケードタイトルが多く追加されている現状から、互換対応にはそれなりの手間が必要で、順番待ちが起きていると推察できる。そうなれば当然優先順位がつけられるはずで、実際マイクロソフトはユーザーに対して互換対応を望むタイトルと、それに対する投票を公式フォーラムで呼びかけている。投票数の上位に位置するタイトルから順番に互換対応がなされているわけではないものの、世界中でヒットしたタイトルがズラリと並ぶ様子を見ると、Xboxが苦戦している日本でのみ発売されたタイトルの優先順位がいかほどであるかは容易に想像できる。
盛氏は『PBBG』以外のタイトルについても互換対応させるべく働きかけを行ってきたが、いろいろな壁があり難航していたそうだ。しかし今回の北米発売は、その壁をひとつ打ち破ることに繋がり、『BULLET SOUL』の互換対応へのファーストステップになるという。
どこにどのような壁があるのかは書けないとしているが、そのひとつとして考えられるのは先ほど述べた優先順位ではないだろうか。盛氏は後述する生配信番組内で、Xboxのメイン市場である北米での発売が、互換対応してもらう上で大事だと感じていたと語っている。国内はもとより北米でもファンを獲得することができれば、公式フォーラムでの投票などが大きな後押しとなることは間違いない。
今回、盛氏に直接お話をうかがったところ、北米で発売することによって互換対応を目指すという手法は、正式なタイトルの選別プロセスとしてマイクロソフトから提示されたわけではなく、またそもそも正式なルールをマイクロソフトはメーカーに公開していないため、あくまで盛氏が過去の傾向などから推測し見いだした道だという。そして後方互換に関するルールは、今後状況によって変化していくのではないかと考えているとも伝えている。
『BULLET SOUL』は国内版で配信されたDLCをすべて収録する完全版として発売された。また、ノーコンティニューで2周クリアするとアンロックできる実績が削除され、実績がコンプリートしやすいように調整されている。そのため国内版とは別タイトル扱いとなり、もし『BULLET SOUL』が互換対応されたとしても、すなわち同時に国内版も互換されるというわけではないだろう。ただ盛氏は、「タイミングの差はあれ国内版も対応されると思います。 いや、させます」と心強いコメント(※)を残している。
※盛氏のTwitter上の発言は転載禁止とされていますが、同コメントについては掲載の許可をいただいております。
『BULLET SOUL』の北米発売を見届けた盛氏は16日、株式会社アリカのニコニコ生放送「そんなんアリカ 2」に出演し、『バレットソウル -インフィニットバースト-』についても北米版の制作が決定したことを発表した。発売時期など詳細については語られなかったが、こちらも後方互換を見据えた動きととらえていいだろう。
Xbox 360では、ダウンロード専売であれば現地法人やパートナーとなる現地販売元を必要とせず世界中でゲームを自主販売できる。とはいえ、ローカライズやレーティング取得を含めさまざまなコストや手続きが必要となるため、互換対応を目的にこのような手法をとるのはかなりのイレギュラーといえる。
もっとも5pb.にしても、互換対応のみを目的に商売は二の次でやっているわけではない。同社は8月に販売元としてSteamに参入し、海外展開に本格的に乗り出した。盛氏は5pb.の海外向け情報ポータルの立ち上げやブランドの海外展開にも携わっており、今回の北米発売はその一環でもあるという。現時点ではXbox One向けのタイトルがないので、代わりにせめて後方互換でユーザーに届けたいという想いがあるそうだ。
今年7月、Video Gamerが「『Red Dead Redemption』が後方互換に対応したことで売上が倍増した」と報じたように、後方互換はメーカーに直接利益をもたらす側面もある。もちろん、Xbox 360で所有していたゲームライブラリがふたたび日の目を見るのは、ユーザーにとっては嬉しいことだ。今回の北米発売が、Xbox Oneでの後方互換対応の見通しが立ちにくい国内Xbox 360タイトルにとって突破口となりうるのか、またよりスムーズな新しい道を切り拓くことに繋がり、ほかの国内タイトルの互換対応が進む結果となるのか、その行く先に注目したい。