新作2DアクションRPG『Indivisible』のIndiegogoキャンペーンで苦戦するLab Zero Games、ゲームの開発費に対し誤解あると語る


2D格闘ゲーム『Skullgirls』の開発元として知られるLab Zero Gamesは、新作2DアクションRPG『Indivisible』のIndiegogoキャンペーンを実施中だ。初期ゴールは150万ドルだが、15日を経過し現在までに集まっている額は38万ドル弱。残り25日で目標の金額を集められるかどうかは不透明な状況である。終了間際に支援が加速することを予想しても、到達はなかなか難しいラインだと言えるだろう。

そんな中、Lab Zero GamesのリードデザイナーMike Zaimont氏がYouTuberのJBgolden’s氏の番組に出演し、どうして『Indivisible』の開発にこれだけの額が必要なのかなどをあらためて語った。海外メディアEurogamerがこの一件を報じている。なお『Indivisible』は505 Gamesのパブリッシングが決定しており、今回150万ドル以上が集まれば同社から200万ドルが出資されるため、『Indivisible』の開発費は合計で350万ドル(約4億2000万円)かそれ以上となる。

人件費

Zaimont氏はまず放送のなかで開発費に関して言及し、ゲームを開発するなかで「人件費」がどれだけ必要なのかを、『スーパーメトロイド』の開発コアチーム(23人)を例にだして説明した。Zaimont氏によれば、米国政府が制定した貧困線(最低限の生活ができる収入)は年間およそ2万ドル(約240万円)。つまり『スーパーメトロイド』の開発には、最低でも年間に46万ドルが必要となる。同作は3年間にわたり制作されたため、合計金額は138万ドルだ。これらにはオフィスの賃料やインターネット代、開発キットにローカライゼーション、さらにはテストやマーケティングなどの費用は含まれない。

もちろんこれは貧困線レベルで人件費を割り出した場合の額であり、年収をおよそ4万ドルとすれば、3年間の人件費は276万ドル(約3億3120万円)が必要となる。そしてZaimont氏によれば、『Indivisible』での開発には23人以上の人員が必要になる見込みだという。実際に『Skullgirls』では70人の契約アートデザイナーが参加し、そのお陰で素晴らしいアニメーションを構築することができたともしている。

数十人かあるいは100人以上の社員に働いてもらい、さらに人件費以外のコストを算出した結果、実際に350万ドル(約4億2000万円)が必要だったとZaimont氏は語る。また今回はスタッフの雇用数を増やすことで、開発期間を3年間から2年間に縮小したとも伝えた。さらに505 Gamesとの契約により、ローカライズ費用やテスト費用、マーケティン費用などが今回かからないとした上での350万ドルだという。

クラウドファンディング、開発費の誤解招く?

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505 GamesとLab Zeroが契約を結んでいることは作品発表時より明らかにされている

また配信中、Zaimont氏はほかの大多数のクラウドファンディングに対し批判を投げかけている。氏の考えは、多くのクラウドファンディングのせいで、ユーザーたちは実際のゲーム開発コストを勘違いしているというものだ。「すでに投資家から90パーセントの資金を調達していて、注目度を測るためだけに動いているクラウドファンディング」が多すぎると伝え、また今年Kickstarterで大きな成功を収めた『Bloodstained』を取り上げ、「『Bloodstained』は500万ドルだぞ。50万ドルじゃなく!彼らは450万ドルの資金をすでに調達していたさ」とも発言した。

『Bloodstained』は当初から開発費がある程度は確保できていることが伝えられていたので、Zaimont氏の指摘はやや誤りのようにも思えるが、確かに「これだけの額で開発ができるのか?」と疑問符がつく作品は多い。ワンマンか数人のようなかなり小規模のデベロッパーでもない限り、KickstarterやIndiegogoにて集められる数万ドルから数十万ドルの開発費だけでゲームを完成させることは到底不可能だ。そのためスタジオはあらかじめ自己資金を用意していたり、あるいは他パブリッシャーと契約したり、新たなクラウドファンディングや早期アクセスでの販売で追加資金を得ようとする。一方でZaimont氏はこういう動きが多すぎる、あるいはその事実が隠されているせいで、ゲームの開発費が安く見られていないかという指摘をしているわけだ。『Indivisible』が現在Indiegogoで募っている150万ドル、そして開発費350万ドルという額は、けっして非現実的なものではないといえるだろう。

ただ提示したアイディアでユーザーを惹きつけ、規定額まで支援を募らなければ資金は得られないのが、KickstarterやIndiegogoなどのクラウドファンディングである。『Indivisible』は現在37万9247ドルを5881人から集めており、残り約112万ドルを25日間で集める必要がある。150万ドルが集まらない場合、505 Gamesから200万ドルの資金は提供されない契約であるという。

なお今回の配信にてZaimont氏は、体験版は3か月と1週間にわたり小規模なチームが開発したものであり、カットシーンや物語が盛り込まれていない、またレベルが完成していないのはそのためだと伝えている。