とあるインディーゲーム開発者、自作ゲームを大手ストリーマーに酷評され落ち込み助けを求める。多勢の開発者意見は“くよくよするな”
あるインディーゲーム開発者が「自身のゲームが大手ストリーマーに取り上げられたものの、配信内で酷評された」と海外掲示板に投稿。ストリーマーの意見が作品の売り上げに大きな影響を与えるのではないか、といった懸念を示し、多くの反応が寄せられ話題となっている。
発端となったのは、ゲーム開発者のJames Slagter氏による8月10日のReddit投稿だ。同氏はホラーアドベンチャー『Improbability』をPC(Steam)向けに8月7日に発売した。同氏は18歳と年若い開発者であり、本作は初めてSteamで公開した大型ゲームであるとのこと。その完成までにはソロ開発で4年の歳月を費やしたという。
『Improbability』のリリース後、TwitchストリーマーのForsen氏が本作を配信上でプレイしたという。Forsen氏は、配信プラットフォームTwitchにおいてフォロワー数175万人超を誇る人気ストリーマー。過去には『StarCraft II』や『ハースストーン』といったタイトルでプロプレイヤーとして活躍し、現在はTwitchストリーマーとして多くのフォロワーと視聴者を抱えている。James氏は、Forsen氏の配信で自分のゲームが遊ばれたことを知った際にはとても興奮したとのこと。
しかしJames氏によれば、配信内でForsen氏はゲームを20分ほどプレイしたところで行き詰まり、『Improbability』を未完成だと批判したとのこと。またJames氏によれば、本作はノンリニア型のストーリーとなっており、クリアまでは15時間以上かかり、繰り返しのプレイが必要であるとのこと。同氏は、自身がそうして設計したつもりの作品が大勢の視聴者の集まる配信にて、序盤の20分で「未完成である」と判断されたことについて大変なショックを受けたことを伝えている。James氏はパッチにてゲーム進行の改善も実施したとのこと。しかし同氏は、Forsen氏の批判コメントにより、当時の視聴者が自身のゲームの購入を避けるのではないかとの懸念が拭えない様子。一体どう対処したらいいかをRedditユーザーに問いかけている。
上述の8月8日の配信にて、Forsen氏はさまざまなゲームをプレイ。その中で視聴者のすすめにより『Improbability』をプレイしたかたちとなるようだ。実際の配信のアーカイブを見ても、James氏が言及したように、本作のある場面で行き詰ってしまったとみられるForsen氏。「素晴らしいゲーム」「Steamで出すにふさわしい完成度」と皮肉たっぷりにコメントし、そのままプレイを中断してしまっている。
James氏の投稿に対してはさまざまな意見が寄せられている。ゲーム開発について話し合う場に投稿されたこともあり、自身もインディーゲーム開発者であるといったユーザーや、ゲーム開発というトピックについて大きな関心を持つユーザーがコメントを投じているようだ。
そんなユーザーたちから寄せられた意見として多く見られるのは、Forsen氏の反応による売り上げのへの影響は気にしないで、フィードバックとして受け止めて次に進むべきだという声だ。有名ストリーマーのコメントといえどあくまで一意見であり、影響を過大に悲観するよりも、批判を真摯に受け止めて改善に取り組むべきだということなのだろう。またForsen氏の例に限ったことではなく、プレイヤーが行き詰ってしまうのであればレベルデザインが適切ではなく、ほとんどのプレイヤーもそこで行き詰ってしまうということではないかという意見も。実際に『Improbability』を購入し、膨大な量のフィードバックを送るユーザーも現れている。
また、大手ストリーマーに言及されたこの機会を活かして宣伝をするべきだという意見も見られる。小規模開発のゲームにとっては知られないことよりも話題に上がることのほうが圧倒的に好ましいとし、どういったかたちであれ大手ストリーマーに取り上げられたチャンスを生かすべきだという意見だ。Forsen氏の発言を引用し、寄せられたレビューのひとつとして堂々と宣伝に利用すればよいのではないかという声もある。
その実例として、あるユーザーはパズルゲーム『Recursed』の例をあげている。同作のストアページで紹介されているレビューのなかでは「しばらくの間プレイしてみたが、スローで単純な印象だった。(I played for a while but it seemed really slow / simple)」と評したJonathan Blow氏のツイート(現在は削除済み)が引用されている。Blow氏は『Braid』『The Witness』といった高評価パズルゲームを手がけた著名なクリエイターである。本作のストアページではそんな同氏の発言を堂々と引用、ゲームの宣伝に利用しているかたちだ。Blow氏のネームバリューの高さを認識した上での手法ともいえる。なお『Recursed』はSteamユーザーレビュー上で「圧倒的好評」ステータスを獲得。Blow氏のインプレッションと裏腹に、プレイヤーからはおおむね高い評価を得ているようだ。
発端の投稿に寄せられたさまざまな反響はJames氏にも届いたようで、同氏は最終的に寄せられたフィードバックに率直に感謝を述べている。作品には欠陥があるかもしれないが、完璧でないからこそ学ぶことは多いと改めて言及。今後も開発を続けていくにせよ、新たなゲームを制作するにせよ、このスレッドから信じられないほど多くのことを学んだとしている。また人々がどう思うかに関係なく、自身は最終的な作品の出来にとても満足しているとも述べた。
James氏もForsen氏に取り上げられた際は非常に興奮したと述べるように、宣伝や露出の機会の少ないインディーゲームにとって、大手ストリーマーによるゲーム配信は作品知名度を向上させる大きなチャンスとなるだろう。反面、今回のケースのように、配信で作品を批判されることもありうる。とはいえ、今回開発者たちからJames氏に寄せられた励ましのように、ストリーマーの知名度や大勢の視聴者といった尺度にとらわれすぎず、批判は一意見として受け止めて前を向くべきかもしれない。
『Improbability』はPC(Steam)向けに発売中だ。