Steamで販売禁止になったホラー『HORSES』開発者、「1000万円を売り上げローンを返せた」と喜びの報告。しかしチーム活動継続にはまだまだ足りず

ホラーゲーム『HORSES』を手がけるSanta Ragioneは12月18日、同作が1万8000本を売り上げていることを発表した。

ホラーゲーム『HORSES』を手がけるSanta Ragioneは12月18日、同作が1万8000本を売り上げていることを発表した。『HORSES』は当初SteamおよびEpic Gamesストアで販売が予定されていたものの審査が通らず、GOG.com/itch.io/Humble Storeのみで日本時間12月3日に発売となった。これまでの売上で借り入れた負債を十分返済できる程度の利益は得られているという。IGNなどが報じている。

『HORSES』は牧場を舞台にした一人称視点のアドベンチャーホラーゲームだ。牧場では動物の代わりに、馬のフェイスマスクを被った全裸の男女を飼育しており、プレイヤーはそこで14日間の異常な仕事を体験する。プレイ画面はすべてモノクロで描かれており、時折挿入される実写映像も本作の特徴だ。

『HORSES』は2023年に発表され、当初はSteamでの発売が予告されていたが、Steam側から作中の表現がガイドラインに反しているとして配信禁止の宣告を受け、同ストアでの発売が中止となった経緯を持つ(関連記事)。さらに発売の前日には、配信予定だったEpic Gamesストアからも突如配信禁止が言い渡され、GOG.com/itch.io/Humble Storeでのリリースとなった(関連記事)。くわえてHumble Storeでも本作の配信ページが一時削除される事態が起きたが、現在は販売が再開されている。

12月18日にSanta Ragioneから発表されたプレスリリースによると、GOG.comおよびHumbleでの発売により、『HORSES』は1万8000本を売り上げ、純利益は6万5000ドル(約1000万円)に達したそうだ。これは本作の作者であるAndrea Lucco Borlera氏へのロイヤリティの支払い、およびSanta Ragioneが借り入れた債務を返済するのに十分な額の金額だという。

しかしながら、この売上はチームが新作ゲームの開発に取りかかれるほどの額ではなく、今後もその水準に達する可能性は低いことも示唆。もし販売が引き続き好調なら、将来的に新しいプロトタイプを作る資金を出すことは可能かもしれないが、それまではチームメンバーは別の仕事やプロジェクトに従事するという。

Santa Ragioneによれば、『HORSES』のローンチは同スタジオが過去にSteamで発売したゲームと比べても非常に好調だったとのことだが、本作が販売されているストアでの2週間の売り上げだけでは、Steamでの完全リリースがどのようなものになっていたかは予測できないという。というのも、同スタジオの過去作はSteamでは複数年にまたがるロングテール販売、およびSteamキーを通じたバンドル販売も重要な売り上げになってきたそうだ。そのためSteamで販売できなかったことで、そうした長期的な売上の機会が失われた可能性があるということだろう。

本件の発端は、Santa RagioneがSteamに提出した初期ビルドを「未成年が関与する性的行為」だとしてValveが拒絶したことから始まる。同スタジオは、少女が裸の女性にまたがる描写が拒絶の原因になったのではないかと推測し、その少女を成人女性に変更するなど対策を講じたが、Valveは依然として本作を承認しなかったという。

Steamでの発売が絶望的になった時点で、同スタジオは閉鎖の危機に瀕した。というのも、スタジオの前作『Saturnalia』の売り上げが芳しくなかったうえに、頼みのバンドル販売もValveがSteamキーの提供を拒んだために行えなかったそうだ。そういった苦しい懐事情に加えて、新作『HORSES』がSteamで取り扱いを拒否されたことによって、外部パブリッシャーやパートナーからの資金調達の可能性が完全に消滅。こうした経緯によって、Santa Ragioneは友人からの私的な資金調達に頼らざるを得なくなり、持続不可能な財政状況に陥ってしまったことを本作発売前に報告していた。

とはいえSanta Ragioneは資金調達やプラットフォーマーに対する対応に追われつつも、12月2日に本ゲームをリリース。発売後はIGNから10点中7点の評価を受けるなど、批評家からは好意的に受け止められた。またSteamで発売禁止になったゲームとして注目も集めており、Steam・Epic Gamesストア以外のストアでの限定販売でも一定の売上に到達できたのだろう。とはいえ現時点では先述したような債務を返済する程度の売上にすぎず、本作プロデューサーがPolygonに明かしたところによると、『HORSES』が同スタジオの最後の作品となる可能性が非常に高いという。

Santa Ragioneは引き続きSteamなどの対応を批判視しており、より明確なルールやプロセスの透明化を求めるコメントを綴っている。なおSteamやitch.ioでは今年7月より主に成人向けゲームの規制が強化され(関連記事)、その後Steamでは成人向けではないゲームでも審査に通らなかったことを理由にやむなく同ストアでのリリース中止・延期となるケースがたびたび見られる(関連記事1関連記事2関連記事3)。開発元が自由な発想で作品づくりをおこなう上では、引き続き各プラットフォームには基準や対応に透明性・一貫性のある審査体制が求められるところだろう。

『HORSES』はPC(GOG.com/itch.io/Humble Store)向けに発売中。

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Kousetsu Taguchi
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