ゲーム開発者らが「ユーザーが確率を理解してくれない」とコミュニティで悩みを吐露し合う。でも優しくウソつく時もあるから単純な話でもない


あるゲーム開発者がRedditにて、ゲーム内に「確率」を表記した場合、多くのプレイヤーが正しく理解してくれないとの見解を投じ、話題を呼んでいる。ゲームにおいては数値どおりの確率で処理されるとプレイヤーにストレスが生じうる可能性もあるようだ。

今回ゲーム内の確率表記にまつわるトピックが議論されているのは、Redditのゲーム開発に関するコミュニティr/gamedev内のスレッドだ。スレッド投稿者のCable23000氏はゲームデザイナーだそうで、手がけた作品でプレイテストをおこなったところ、確率表記を正しく理解してくれないプレイヤーが続出したという。同氏はフィードバックの例として「10%の確率で新たなアイテムを獲得できるPerk」において、“10回に1回は新たなアイテムを獲得できる”といった認識をもたれていたとしている。


確率と試行回数

しかし、たとえば仮に50%の確率でドロップするアイテムがあったとして、2回試行すれば必ずドロップするわけではない。ドロップする確率もしない確率も同様に確からしい場合には、2連続、つまり25%の確率でアイテムがドロップしない可能性もある。そのため50%という確率から“2回に1回はドロップする”とのイメージをもっていた場合、実際の試行回数はイメージとズレうるわけだ。「10%の確率で新たなアイテムを獲得できるPerk」においても同様である。

スレッド内には、そうしてプレイヤーが確率表記に“正しい”イメージをもってくれないことが多いというCable23000氏の経験に共感する声が複数みられる。なかでも、ゲーム開発者を名乗るユーザーのwahoozerman氏は『ファイアーエムブレム』シリーズを例に挙げつつ、ゲームにおいてはあえて「確率をごまかして」を設定する方法もあることを示している。

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byu/Cable23000 from discussion
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『ファイアーエムブレム』シリーズでは戦闘の際の攻撃の命中率(あるいは目安となる数値)が表記されるものの、一部作品ではユーザー検証で数字通りの命中率ではないことが報告されている。たとえばゲーム内表記が「99」では実際の命中率は99.99%、一方「95」では実際には約99.5%、「80」でも約92%の命中率だという。逆に「10」の場合はわずか約2%の命中率しかないとされる。そうした仕様は一部プレイヤー間で“実効命中率”と呼称されてきた。あえてゲーム内の表記と実際の確率を乖離させているとみられる理由は公式には明かされていないものの、“数値のイメージどおり”に結果を起こして違和感やストレスを緩和する配慮もあるのかもしれない。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』


連続失敗するストレス

またスレッド内では別のユーザーpiiJvitor氏が、ゲームの“確率ごまかし”の例として、『バルダーズ・ゲート3』の「カルマ・ダイス」機能を例示。同作はファンタジー・テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の第5版ルールをベースとしており、TRPGのメカニクスをゲームに落とし込んだゲームプレイが特徴だ。さまざまな局面でダイスロールがおこなわれ、ダイスの出目に応じて行動の成否が判定される。

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byu/Cable23000 from discussion
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カルマ・ダイスはゲームプレイ設定にてオン・オフを切り替えできる機能。ダイスロールが連続で成功あるいは失敗することを避けられる機能となっており、ダイスロールの結果のバランスをある程度保つことが可能だ。つまり裏を返せば、あえて本来どおりの確率で生じた結果をごまかす機能といえる。

先述のpiiJvitor氏は、たとえば本来どおりの確率でダイスロールが連続失敗した場合、プレイヤーは“ゲームが自分に不利を強いている”といった印象を抱きうると指摘。また逆に連続成功した場合でも、そのあとの結果が悪ければストレスに繋がるとしている。そのため本来どおりの確率がプレイヤーに与えうるストレスを防ぐ配慮として、ゲーム内の確率をごまかせる「カルマ・ダイス」機能が用意されているとみられるわけだ。

このほか確率表記とプレイヤーのイメージのすれ違いが見られる例として、たとえば先日には、ルートシューター『The First Descendant』にて一部ユーザー間に「アイテムのドロップ確率を変動させて、手に入りにくくしているのではないか」といった疑念が発生。公式が明確に否定する一幕もみられた(関連記事)。同作でも、実際のところは公式の主張どおり表記されたとおりの確率でアイテムがドロップしていたのだろう。“確率どおり”の事象がもたらす、ストレスの一例かもしれない。


特にゲームでは「数値やプログラムに基づいて動いている」といった印象から、確率の数値のイメージどおりではない事態が発生したときに、プレイヤーの違和感やストレスが生じやすいのかもしれない。スレッド内で例示されたように、一部作品ではプレイヤーへの配慮として“確率をあえてごまかす”システムも導入されているようだ。

ちなみに投稿者のCable23000氏は追記として、スレッド内に「素晴らしい情報がたくさん寄せられた」と反応。またプレイヤーは特に高確率/低確率の表記に大げさなイメージをもつ傾向がありそうだとしつつ、楽しみのために少し確率をゆがめた方がよいのだろうとの見解を綴っている。同氏の作品には今回寄せられた知見を活かして、プレイヤーを配慮した“確率ごまかし”システムが用意されるのだろう。