ディズニー、歴史上3度目の自社パブリッシング終了を宣言、今後ライセンス貸与に専念 。『Disney Infinity』生産中止が契機に


『Disney Infinity』シリーズのゼネラルプロデューサーであるJohn Blackburn氏は、公式ブログにて同シリーズの生産中止を発表した。Blackburn氏は、今回の決断を非常に困難なものであったことを強調し、ファンのこれまでのサポートに感謝の言葉を述べている。『Disney Infinity』は「アリス・イン・ワンダーランド」や「ファインディング・ドリー」のキャラクターが登場するプレイセットのリリースを6月に控えているが、これは予定どおり発売されるのだという。また、これに伴いディズニーは自社パブリッシングをやめライセンス貸与に専念することを、ディズニー・コンシューマー・プロダクトの代表であるJimmy Pitaro氏がWIRED誌に告白している。

熟考を重ねたすえに、コンソールゲームへのアプローチを変更し、これからはライセンスに専念することを決めました。Toys-to-lifeの市場は成長の余地がなく、開発費用の高い『Disney Infinity』の生産をやめるということになります。

 

Toys-to-lifeサイクルのおわり

Toys-to-lifeとは、文字通り“おもちゃに生命を吹き込む”という意味を持つビデオゲームのジャンルのひとつだ。フィギュアやアクセサリーのような外観を持ちながら、コンソール機のNFCリーダーにあてるとゲーム内と連動する機能を持つ。2011年にアクティビジョン(現アクティビジョン・ブリザード)から発売された『Skylanders』シリーズがブームの火付け役となり、任天堂からリリースされている「amiibo」もこのジャンルとなるだろう。

画像出典: Nintendo of America
画像出典: Nintendo of America

Toys-to-lifeの市場の成長は著しく、任天堂やアクティビジョン・ブリザード、そしてもちろんディズニーもこのジャンルで多大な収益を得てきた。しかし売上が好調な時期からすでに『Disney Infinity』の生産におけるコストは懸念されており、最終的にその心配があたってしまう結果となってしまった。Pitaro氏がToys-to-lifeの市場に成長の余地がないと述べていた一方で、米国の調査会社NPD Groupの2015年のゲーム市場のデータでは、依然として同ジャンルは成長曲線を描いており、『Lego Dimension』や「amiibo」などの勢いはまだまだ衰えそうにない。そう考えると『Disney Infinity』はひとり負けしてしまった感も否めない。同作の開発の中心になっていた子会社であるAvalancheスタジオも閉鎖されることになり、300名ほどのスタッフが解雇されたようだ。

 

繰り返す歴史

また、ディズニーがゲーム販売から手を引くと発表したことも大きなニュースだろう。ディズニーは1988年にWalt Disney Computer Software(以下、WDCS)として、家庭用ゲーム機向けに独自のゲーム事業を開始した。WDCSは当時既存のディズニーキャラクターを用いて、作品のスピンオフのようなかたちでゲームを開発していたものの、ゲームの品質の低さや映画とゲームの性質の違いをよく理解できていなかったことが原因で苦戦し、一度販売を休止していた。しかしながら1993年に『アラジン』や『ライオンキング』といった主要なディズニーのアニメーション作品をもとに他社に委託して開発・発売した作品が成功を収めると、自社で開発し発売する形態から他社にキャラクターを貸し出して開発・発売してもらうという形態を採りつつも再び自社でのゲームの開発にも尽力していった。1994年には新たにDisney Interactive(以下、DI)という名前に生まれ変わったが、ゲームの売り上げは思うように伸びず、家庭用ゲーム機向けのゲーム開発はまたも終了を迎えた。それからはまた他社へのディズニーキャラクターのライセンス貸し出しを増加させ、外部委託によるゲーム開発に注力していく。

2003年になるとまたしても自社販売を再開することを選択し、Buena Vista Games (以下、BVG)を設立した。DI時代においては子ども向けのゲームに焦点をあてて開発を進めていたが、BVGではモバイルやオンラインなど、ゲーム開発との関係を強めていった。特にスクウェア(現スクウェア・エニックス)と協同で開発した『キングダムハーツ』は大ヒットし、現在でも人気のフランチャイズとなっている。その後BVGはAvalanche SoftwareやPropaganda Gamesといったゲームスタジオを買収、Fall Line Studioなどを設立しニンテンドーDSやWii向けのタイトルの開発を進めていった。2007年には、ディズニーはBVGの名前をDisney Interactive Studios(以下、DIS)に変え、新たなスタートを切ることとなる。DISでは『Disney Infinity』といったタイトルのほかにも『Epic Mickey』を代表とした本格的なディズニーライセンスタイトル、また『Pure』や『Split/ Second』のようなディズニー以外の大型タイトルも開発がおこなわれてきた。しかし、『Disney Infinity』のみならずディズニーのビデオゲーム部門の業績は芳しくなかった。結果として、ディズニーはまたしても自社販売をやめることになった。これでディズニーの歴史上3度目の撤退宣言となる。今後はライセンスの貸与に専念し収益を得ていくようだ。

ディズニーとゲームはくっついては離れ、またくっついては離れるという合従連衡とも言える不思議な関係にある。世界的に絶大な人気を誇り、数々の有名シリーズのIPを保有しているディズニーでさえビデオゲームの世界では苦戦し続けていることは、興味深い事実ではある。まだまだエンターテイメントとしてディズニーが持つ影響力は強く、ぜひ4度目の自社販売を心待ちにしたい。