Steamユーザー100人を名誉毀損で訴えた開発元が訴訟を中止、Valveとの絶縁で資金不足に陥ったため

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アメリカのインディーゲーム開発会社Digital Homicide Studios(以下、Digital Homicide)は先月29日、コミュニティでの度重なる名誉毀損を理由に提訴していたSteamユーザー100人に対する訴状を取り下げた。先日、ValveがSteamストアページから同社のタイトルを全て削除したことで、資金不足に陥ったことが主な原因と見られる。これに伴い、同社の代表者は事実上の廃業を示唆している。

 

競合他社による妨害工作も

Digital Homicideは、アメリカ・アリゾナ州を拠点に活動するインディーデベロッパー。『The Slaughtering Grounds』や『Assault On Orion 7』など、1ドルから3ドル程度の安価なゲームをPC向けに制作・販売している。これまで50作品以上を手がけてきたが、完成度の低さやフリー素材を使いまわしたような内容に、多くのSteamユーザーから批判が寄せられていた。先月Digital Homicideは、一部コミュニティメンバーによる誹謗中傷や殺害予告、悪質ななりすましなど、複数の名誉毀損と風評被害を理由に、Steamの匿名ユーザー100人に損害賠償1800万ドルを求めて、アリゾナ州地方裁判所へ提訴した。これを受けてSteam運営元のValve Corporation(以下、Valve)は、消費者と敵対する相手とは取引しないとして、ストアページからDigital Homicideのタイトルを全て削除。両社は絶縁関係に陥っていた。

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風評被害の原点『The Slaughtering Grounds』

業界メディアTechRaptorによると、Digital Homicideの共同設立者James Romine氏は、今回の訴訟をキャンセルした理由について、あくまでもValveがSteamストアから同社のゲームを削除したことによる資金不足が原因だと説明している。また、今年3月にゲームジャーナリストの“Jim Sterling”ことJames Stanton氏を名誉毀損で提訴した案件についても、近々取り下げる予定であることを明かした。Digital Homicideの今後については、事実上の閉鎖を示唆。その上で、オープン市場の中で低価格化に挑戦しただけにも関わらず、否定的な消費者の観点を煽ったメディアの責任は大きいとコメントしている。

嫌がらせに加担したユーザーの中には同業者もいたという。「少なくとも2人は商売敵でした。訴状を取り下げたのは、あくまでも弊社製品が撤去されたことによる経済的な理由に過ぎません。提訴に踏み切った判断は間違っていなかったと思います。11人のSteamユーザーによる140件を超える虚偽の主張や、私個人や顧客を誹謗中傷する何万件という書き込み。3件にいたっては、同業者を含めた一部ユーザーから、第三者との書面による契約を直接妨害されました。解決策が見い出せないまま、最もたちが悪かった11人に対して、合わせて25件以上の報告を提訴したという次第です」。

くわえてRomine氏は、Steam側のユーザー管理にも責任の一端があると指摘。中には十数回も通報したにも関わらず、同じユーザーから18か月にわたって嫌がらせを受けたケースもあったという。また、競合他社の人間がサポートされていない環境で意図的にゲームを起動し、欠陥品であると見せかけた虚偽のレビューを投稿していたことも報告している。確かにDigital Homicideのタイトルは、お世辞にも傑作と呼べる完成度ではなかった。以前からSteam Greenlightへ頻繁に投稿されていた同社製品が一斉に取り消されたように、ユーザーに生じた不信感が少なからず運営元にも伝わっていたことも明白だろう。しかし、悪意に満ちた一部ユーザーの不適切なツール利用を、Valve側が管理しきれていなかった事実も否定できない。

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カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。