英国人から見た勘違い侍アクション『The First Samurai』の3Dリメイク『Super Samurai』が正式発表

1993年に国内版が発売され、勘違いされた日本文化の表現により一部のゲーマーたちの記憶に刻まれたツッコミどころ満載の2Dアクション『The First Samurai』。その往年の奇作が20数年の時を経て3Dリメイク『Super Samurai』として帰ってくる。

1993年に国内版が発売され、勘違いされた日本文化の表現により一部のゲーマーたちの記憶に刻まれたツッコミどころ満載の2Dアクション『The First Samurai』。その往年の奇作が20数年の時を経て3Dリメイク『Super Samurai』として帰ってくる。デベロッパーは『The First Samurai』の開発メンバーも在籍するPixel Age Studios。やけに流暢な英語と肉弾戦が得意な伝説のサムライを蘇らせるべく、11月5日にKickstarterでのクラウドファンディングが開始された。

 

日本中にシュールを届けた『The First Samurai』

そもそも『The First Samurai』とは何なのか。当時の衝撃を知らない方のために説明しておこう。開発を担当していたのは英国のデベロッパーであるVivid Image。80年代後半から90年代初頭にかけて人気を誇ったゲーミングPCのAmigaで発売されたのち、Atari ST、コモドール64、DOS、スーパーファミコン向けにも登場した。サムライの一族である主人公は、時空を超えて世界を支配しようと目論む古代の悪霊を退治すべく、江戸時代から2245年の近未来ジャポンまでを旅していく。

「英国人が誤って解釈した日本」の世界観、奇妙なボスデザイン、サムライなのに流暢に英語をしゃべる主人公、演歌風のBGMに被せるように流れる「メサイア」のハレルヤコーラス、そしてシュールなサウンドエフェクト。これらがオーソドックスな横スクロールアクションにスパイスを加えることで『The First Samurai』は「バカゲー」の歴史に名を残すことになった。操作自体は「サムライソード」での攻撃、パンチ&キックの肉弾攻撃、ジャンプ、アイテム使用という特筆すべき点は少ないシンプルなもの。5ステージしか収録されていない短いゲームであったが、エンディングまでに残機をすべて失えばゲームオーバーとなり、一番最初のステージからやり直しになる。昔ならではのシビアな仕様であった。

1993年に国内リリースされた『The First Samurai』
1993年に国内リリースされた『The First Samurai』

なぜ主人公はサムライなのに上半身裸で手裏剣(正確には手裏爆弾)を投げるのか、なぜ日本の城がネオンでライトアップされているのか。日本人としては最初から最後までとにかくツッコミどころに事欠かない作品であった。海外では1994年に続編の『The Second Samurai』がリリースされたものの、多くの謎を残したままシリーズは幕を閉じていた。

 

今度のサムライはタトゥーを彫った魔法使い

リメイクとなる『Super Samurai』では『The First Samurai』のアクション性やユニークなボス、高難度のレベルデザインを残しつつ、美しい3D空間に舞台を移すことで現代のゲーマーにもアピールできる爽快なサムライアクションを目指している。

物語は『The First Samurai』の完全リメイクではなく続編という立ち位置。『The First Samurai』で倒したはずの悪霊(Kickstarterページでは「妖怪」と改名されている)が実は生きており、再び世界征服のため動き出したのだ。オリジナルよりも強力な敵が待ち受けているが、主人公のサムライも修行を怠けていたわけではない。『The First Samurai』では単調なパンチ&キックしか繰り出せなかったが、今ではコンボ技まで繰り出せるようになったのだ。その一方で、本職であるはずの剣術からは野球のバットを振り回すような荒々しさを感じる。

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これが『The First Samurai』で師匠を失った剣豪の末路かと落胆するのは気が早い。そう、前作で妖術師の力を借りたサムライは魔法の訓練を積み、エネルギー波を放てるほどにまで成長したのだ。これこそが『Super Samurai』という名の由来だろう。ほかにもファイアーボール、ライトニングボルト、スーパージャンプなどサムライ離れした必殺技を繰り出せるとのこと。また、刺青ではなく西洋風のタトゥーを彫ったサムライは敵の接近や隠されたアイテムの位置を察知する能力を手にした。これらの多様なスキルを活かしたアクションは前作を超える派手さとシュールさを見せてくれそうだ。

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『Super Samurai』の世界では『The First Samurai』と同様に時空を行き来できる。今作では3つのエリアが用意される予定であり、それぞれのエリア内でも時間軸を移動することが可能だ。同じエリアでも過去と未来では様子が異なり、過去の世界でとった行動は未来の世界に影響を及ぼす。逆に未来の世界で手に入れたアイテムが過去の世界の物語を進めるカギとなる場合もある。各エリアには「民話上の獣たち」が待ち受けているということで、前作のような奇怪な妖怪デザインに期待したい。『The First Samurai』では誤った認識の日本像から生まれるモンスターデザインが作品の肝となり、強いインパクトを残した。それを3D空間でどこまで再現できるのかが気になるところ。

『Super Samurai』は2018年にリリース予定であり、対象プラットフォームはWindows/Mac /Linux。Kickstarterキャンペーンでは初期目標の資金額が9万ユーロ(約1000万円)に設定されている。ストレッチゴールとしては、11万ユーロを達成することで対象プラットフォームにPlayStation 4/Xbox Oneを追加。そして22万ユーロを達成すればエリア数を3つから6つまで増やすことを掲げている。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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