イギリス政府がロシアへの「ゲームコントローラー」輸出を禁止すると発表。ドローン操縦に転用されないようにするため

FCDOの今回の制裁にゲームコントローラーが含まれているのは、こうしたドローンの操縦に転用されるのを防ぐためとのことである。

イギリスの外務・英連邦・開発省(FCDO)は4月24日、ロシアに対して150点超の品目の輸出を禁止する、追加制裁を発表した。この中には「ゲームコントローラー」の輸出禁止が含まれている。

ロシアが「特別軍事作戦」と称してウクライナへの侵攻を開始したのは2022年2月24日のことである。その後も戦闘は長期化し、2025年となった今でもウクライナ東部・南部を中心に続いている。戦闘ではロシア・ウクライナ両軍ともにドローンを使用しており、ドローンによる市街地攻撃やインフラ破壊による民間人の被害は深刻なものとなっている。FCDOの今回の制裁にゲームコントローラーが含まれているのは、こうしたドローンの操縦に転用されるのを防ぐためとのことである。

ゲームコントローラー型のデバイスを軍事目的に使用すること自体は、今となっては珍しいことではない。2017年にはアメリカ海軍の原子力潜水艦で、潜望鏡にXbox 360のコントローラーを使用している例が報じられている(GIZMODO)。また、遅くとも2010年前後には、アメリカ海軍の「MQ-8 ファイアスカウト」という無人ヘリや、陸軍と海兵隊が使っていた地上運用監視システム(GBOSS)などに、「行動の自由制御ユニット(FMCU)」という軍事用に作られたゲームコントローラー型のデバイスが使用されている。若い兵士たちにとって、慣れ親しんだゲームコントローラーに近い形状のデバイスは学習が容易なのだ(WIRED)。

イギリスがゲームコントローラーの輸出禁止をすることによる効果については、ゲームコントローラー市場におけるイギリスのシェアを理由に複数の海外メディアが実効性を疑問視している(PC Gamer/Tom’s Hardware)。しかしイギリスのロンドンには、さきほど触れたFMCUなどの軍用操作装置を手がけるUltra Electronicsという防衛・セキュリティ企業が存在しており、FCDOの発表したゲームコントローラーの輸出禁止は一般的なゲームコントローラーだけでなく、こうしたデバイスをも含んでいるという見方もできるだろう。

今回FCDOが発表した追加制裁では、さまざまな化学物質、電子機器、金属など、多くの品目が輸出禁止の対象となっている。この中にゲームコントローラーを含め、さらにSNS上であえて一般的なゲームコントローラーの輸出禁止のように取り上げるポストをしたのは、FMCUの輸出禁止をおこなうだけでなく、軍事と産業の両方に使える製品や技術「軍民両用(デュアルユース)」について世間の耳目を集めたいという狙いもあるのかもしれない。

いずれにせよ、ゲームコントローラーは本来ゲームを遊ぶためのものである。一ゲーマーとして、一日も早くゲームコントローラーが純粋にゲームを楽しむための機器として生まれ、使われる日が来ることを願ってやまない。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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