教会銃乱射事件が及ぼす南北戦争ゲームへの影響、“南部連合の国旗”理由にAppleがアプリ削除へ

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米国サウスカロライナ州チャールストンで、21歳の白人男性がエマニュエル・アフリカン・メソジスト監督教会内にて銃を乱射し、男性3人と女性6人、合計で9人のアフリカ系アメリカ人が殺害された。現地時間の6月17日に発生したこの事件を当局やメディアは「ヘイトクライム」であるとの見方を強めており、容疑者のディラン・ルーフ氏がネット上に「黒人は下等人種」と訴えるメッセージを公開するなど、彼の持つ人種差別の心が犯行の動機になったと見られている。

この事件と関連して、いま米国にて騒動となっているのが南北戦争における“南部連合の旗(Confederate flag)”だ。1861年に始まった南北戦争は、各々が望む貿易の形態に加え、奴隷制度の賛否を巡る戦いでもあった。工業化が進む北部では奴隷が必要なくなり、むしろ奴隷制度からの脱却を望んでいた。一方で、当時の南部では綿花のプランテーション事業が盛んであり、その下敷きには奴隷制度があった。結果、北部の代表者であるリンカーン大統領の就任を機に、北部と南部がアメリカという国を二分し戦ったのである。

現在、その奴隷制度を推進していた南部連合の旗を、ディラン・ルーフ氏が車のナンバープレートなどに付けていたことが明らかとなっており、大きな批判が集まっている。以前にも増して、南部連合の旗は奴隷制度やレイシズムに賛同する“象徴”として強く捉えられつつあり、もはや米国においては歴史の一部や白人のアイデンティティを象徴するだけの存在ではない。実際にAmazonやWalmartなどは、南部連合の旗や関連商品を販売中止にしている状況だ。

Apple、南部連合の国旗を理由に南北戦争ゲーム削除へ

さらにビデオゲームにおいても、今回の事件の影響が出始めている。AppleはApp Storeにおいて、南部連合の国旗が描かれているゲームアプリの削除を始めた。iOSゲーム関連のニュースサイト「Touch Arcade」によれば、『Ultimate General: Gettysburg』や『Civil War: Gettysburg』といった南北戦争ゲームがストア上から削除されているという。

AppleはTouch Arcadeに対し、南部連合の国旗が使用されていたことを理由に、この2つのアプリをストア上から削除したと認めている。攻撃的か道徳を欠いた手法はガイドライン違反であるとしており、南部連合の旗が描写されていなければゲームはふたたびストア上で販売できるという。App Storeのレビューガイドラインにおいては、第19条の「宗教、文化、および民族性」にて、特定のグループに対して中傷的か攻撃的、道徳を欠いていたり、対象のグループを損害や暴力に晒す描写およびメッセージは禁止されている。

AppleのCEOであるTim Cook氏はTwitterにて、「私の考えはサウスカロライナにおける被害者の家族と共にある」とし、レイシズムの根絶やそのシンボルの除外に賛同する姿勢を示している。ただし、編集部でApp Store上のアプリを確認したところ、一部の歴史資料用や学習用のアプリにおいては、南部連合の国旗を使用することはまだ現在可能とされているようだ。

ビデオゲームにおいて南北戦争をテーマにした作品はそれほど主流ではないが、少なからず今後の描写に影響を与えることとなりそうだ。“現実に存在した戦争(あるいは問題や事件)を描く作品”が規制されたり、発売が停止されることは珍しくない。たとえばプレイヤーがアメリカ軍の兵士となり日本軍を倒す『Call of Duty: World at War』は、日本国内では発売されていない。また『Wolfenstein: The New Order』では、ドイツでは刑法典に触れぬよう、ナチス関連のシンボルが存在しないバージョンが販売されている。

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。