猫をクリックするだけの“ゲーム”『Cats』に、不自然ながらも猛烈に人が集まる。取引可能な猫の概念に「業者」の影ちらつく

 

100 Cozy Gamesは5月21日、『Cats』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作は6月16日を境に同時接続プレイヤー数が異常な上昇を見せている。とはいえプレイヤー数の増減に不自然な点も見られ、“投機”を目的とした業者が存在する可能性も垣間見える。

『Cats』はさまざまな格好をした猫などをひたすらクリックしていく無料ゲームだ。クリックによってカウント数字のカウントが増え、クリック数ごとに色やイラストが変化していくだけのシンプルな内容だ。


それにも関わらず、本作には多くのプレイヤーが集まっている。本稿執筆時点では同時接続プレイヤー数が4万人前後で推移。ピーク時でも5万6921人を記録している(SteamDB)。先述のとおり本作は“ほぼクリックするだけ”といったゲーム内容だ。それでも高い人気を誇っている理由は、Steamの「コミュニティマーケット」にあるとみられる。

本作ではプレイに応じて、ゲームとは直接関係のないアイテムを入手することができる。アイテムはSteamのインベントリに残り、コレクション要素だけでなく、売買をともなった取引をおこなうことも可能だ。Steamのコミュニティマーケットでは、Steamウォレットクレジットを使って取引が可能。なおこのクレジットはゲームの購入にも用いることができる。そのためのクレジットを獲得する、“投機”のような目的で猫を集めて取引するプレイヤーが集まっているようだ。

コミュニティマーケットを見ると、現在では「COLORED Hourglass Immortal」がもっとも高額で3万円ほど。逆にもっとも流通している「COLORED Christmas Common」が0.04円ほどと、レアリティによってかなり価格にはばらつきがみられる。とはいえ、相当量の猫が市場に出回っているようだ。


なおこうした“投機目的”によって遊ばれているとみられる、ほぼクリックするだけの作品はSteam上でほかにも存在している。4月にリリースされた『Banana』はSteamDBを見ると最大同時接続プレイヤー数が約90万人を誇っており、“バナナの取引”によって非常に多くのプレイヤーを集めている様子だ。さらに『Banana』は2月にリリースされた『Egg』に影響を受けたとみられ、その『Egg』もSteamDBを見るに取引可能なアイテムを求めて多数のアカウントがプレイしているようだ。

一方でこれらの作品群については、SteamDB上で確認できる同時接続プレイヤー数の推移を示すグラフが極端に不自然な形状となっており、状況証拠のみではあるもののBotを用いて複数のアカウントで取引用のアイテムが収集されている可能性が見受けられる(関連記事)。実際に『Banana』の開発者のひとりHery氏は、同作にて同時接続プレイヤー数が14万人を記録していたとき、その3分の2がBotであったとみられることを明かしている(Polygon)。同作開発元はValveのサポートチームにも連絡し、対応をとろうとしているそうだ。

本作『Cat』についても不自然なプレイヤーの増減がみられ、Botの影響という可能性はあるだろう。SteamDB上では見かけ上多くのプレイヤーが集まっているように見えるものの、実際のところこのうちどの程度が“生身”のプレイヤーなのかは気になるところかもしれない。また通常の“ゲーム”とは異なり、“取引用アイテム”を主軸に扱う『Banana』などの作品については、フォロワー作品も含め、Valveがどういった見解を示すのかが注目されている状況。それぞれの作品で今後Botへの対策がとられるかどうかも含め、動向が注目される。