美しくも荘厳なファンタジー世界に“ブルマ”はありか、なしか?あるMMORPGファンの切なる願い


「どうか僕の愛するファンタジー世界に「ハローキティ」の衣装やら「オレオ」の形をした武器を持ち込まないでくれ!」

ある1人の男性MMORPGファンによる、こんな悲痛な叫びがKotakuに先日投稿された。

MMORPGのさまざまなタイトルで遊び続けて18年というMike Fahey氏は、どうやらかつては筋金入りの”role-play(RP)愛好家”でもあったようだ。”大人の事情”でガチガチのRPを続けることは不可能と悟ってからも、彼はそれぞれのゲームの舞台となるファンタジー世界から逸脱しすぎない名前を考えてキャラクターにつけたり、「チャック・ノリスのジョーク」やら「『World of Warcraft』以上に優れたMMOか否か」といったプレイヤー同士の議論に世界観をぶち壊されぬようチャットを不可視にするなど、「ファンタジー世界で遊ぶ大好きな時間」を大切にしてきた様子がよく分かる。

しかし、最近の彼の努力を無にするMMORPGの環境には我慢ならぬようだ。『The Exiled Realm of Arborea(TERA)』の課金ショップには「ハローキティ」の種族別アクセサリとペット用キティ着ぐるみらピンクのアイテムが並び、『Final Fantasy XIV』では”お子様向けアニメ”「妖怪ウォッチ」とのコラボが実施された。Fashey氏は「クロスメディア展開を否定しているわけじゃない」としつつも、ただエオルゼアの世界でドラゴンと戦っている最中に、ファンタジー世界から現実に引き戻されるようなそれらを「見たくないんだ」とする。

■『The Exiled Realm of Arborea』

「基本プレイ無料のMMORPGの場合、運営はどこかでお金を稼がねばならないわけだし」と大人の事情も考慮した柔軟な意見もあるなか、読者からのコメントの多くは、

「東洋の開発会社が作ったMMORPGが欧米プレイヤー向けの配慮をするわけない」
「そもそも”HPバーと戦う”時点で世界観も何もないのに、何をいってるのか」

と、アジア産のMMOはそんなもんでしょという意見や、

「『Wildstar』『Star Wars: The Old Republic』ならばそんなことはないよ」
「『The Secret World』は素晴らしいゲームとは言い切れないが、雰囲気でいうならおすすめ」

など、安易なコラボに走らない他タイトルを推薦する声が目立つ。もちろん中には「あなたの言うとおり、その手のアイテムやコラボは幼稚だ」という賛同もあるのだが。

Fahey氏の18年には及ばないものの、10年近くMMORPGに触れてきた筆者も彼の言いたいことはわかる。ローンチ当初はオリジナルの神話世界をベースに幻想的な物語と連動したクエストやNPCにうっとり浸っていたのに、しばらくするとヒット中のアニメやライトノベルとのコラボを開始。美しい風景の中に突然あふれるメイド服姿のNPC、スクール水着やブルマのアバター、アニメと同じ声優さんを起用したキャラクターが街角に配置され、「神話世界とは何だったのか」そう問いたくなるのも無理はない。

とは言えFahey氏本人も認めているように、年単位でサービスを続けるMMORPGの場合、特に基本無料プレイをうたうタイトルであれば、どこかで稼ぐ”ネタ”を用意しなければいけないのも事実。また、月額課金制よりもアイテム課金制度のMMORPGのほうが高い収益を誇ることは今となっては周知の事実だろう。
Fahey氏が嘆く『TERA』も日本サービス開始当初は月額課金制であり、世界観とかけ離れたファッション系アイテムはゲーム内にほぼ存在しなかった。2013年2月の無料化以降に制服アバター&体操着アバターが登場。特定種族かつ女性キャラクター専用のアバターアイテムという時点で、販売したいターゲット層がどこにあるのかは明らかだ。

 『TERA』の開発は韓国Blueholeスタジオだが、日本でも"絶滅"したブルマや新クラスの「くノ一」を人気No.1種族「エリーン」限定で実装するなど、日本プレイヤーの好みを強く意識したアップデート内容が多い。

『TERA』の開発は韓国Blueholeスタジオだが、日本でも”絶滅”したブルマや新クラスの「くノ一」を人気No.1種族「エリーン」限定で実装するなど、日本プレイヤーの好みを強く意識したアップデート内容が多い。
制服アバターは好評のようで2016年版も実装。やはり女性キャラクター限定だ。
制服アバターは好評のようで2016年版も実装。やはり女性キャラクター限定だ。

また、ライトノベルを中心とした出版業界にも数年にわたり関わってきた筆者だが、オンラインゲームの運営元に対して大ヒット中の小説とのコラボ話を営業マンが持ち込むことは珍しくなかった。特に、まだ公式には明かされていないが水面下でアニメ化が決まりつつある作品などは、そのタイトルの世界観に合う合わないは関係なく「アニメ化が決まり●●●製作委員会ができるとタイアップ料金が跳ね上がります。今ならまだお安くコラボできますよ」というウリ文句でプッシュしていたのも事実である。
そもそも、ゲームファンとアニメファンは兼ねている層が多く、クロスメディア展開がオンラインゲーム運営にとって多大なメリットをもたらす限り、Fahey氏にとっては残念だが日本産およびそれ以外のアジア産MMORPGでは今後も、彼の望まぬ有料アイテムが実装され続けるであろう。

「せめて、それらコラボアイテムを見えなくするような機能をつけてほしい」と願うFahey氏。ファンタジーの世界観をゲーム内ではできるかぎり守るべきという彼の意見に本誌読者は賛成か、それとも反対だろうか。

作品自体がゲームをベースにしていたり、ダンジョンやモンスターが登場する親和性の高い作品も今は数多く、コラボ対象には事欠かない。
作品自体がゲームをベースにしていたり、ダンジョンやモンスターが登場する親和性の高い作品も今は数多く、コラボ対象には事欠かない。

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既にサービス終了している台湾産MMORPG『Le Ciel Bleu~ル・シエル・ブルー~』も剣と魔法のファンタジー世界だが、過去には現代日本の女子高生が主役の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』とコラボ。
既にサービス終了している台湾産MMORPG『Le Ciel Bleu~ル・シエル・ブルー~』も剣と魔法のファンタジー世界だが、過去には現代日本の女子高生が主役の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』とコラボ。(image sourced by 公式ブログ