酷評受ける映画版「ボーダーランズ」、Take-TwoのCEOからも「実に残念だった」と言われる。でもゲームの売上は伸びる
Gearbox Softwareが手がける『ボーダーランズ』シリーズの実写映画「ボーダーランズ」が今年8月9日より、アメリカにて公開されていた。同シリーズ販売元2K Gamesの親会社であるTake-Two InteractiveのCEOを務めるStrauss Zelnick氏によれば、映画の評価は芳しくなかったものの、ゲームの売り上げに貢献していたという。Variety誌のインタビューにて語られている。
『ボーダーランズ』シリーズはFPSのシリーズ作品だ。宇宙の荒野を舞台に、殺伐としつつも癖の強い世界観が展開されることが特徴的な作品だ。ゲームプレイでは性能の異なるプレイヤーキャラを選べる点や、多種多様な性能をもつ武器がドロップするハクスラ要素などもシリーズの特色。またシリーズ最新作としては、8月21日に『ボーダーランズ4』が発表、2025年に発売予定と告知された(関連記事)。
映画「ボーダーランズ」はそんな『ボーダーランズ』シリーズの映像作品だ。リリス役をケイト・ブランシェット氏、ローランド役をケヴィン・ハート氏が務めるなど、豪華俳優陣が集結。監督は「ノック・ノック」や「グリーン・インフェルノ」を手がけたイーライ・ロス氏。名だたるメンバーが集っており、公開前から高い注目を集めていた。
しかしながら同作は8月9日の公開直後から厳しい評価を受けてきた。映画評論サイトRotten Tomatoesでは、一時批評家からの評価において好評率0%を記録。本稿執筆時点でも批評家からの好評率は10%にとどまっている。興行収入も振るわず、全世界で3100万ドル(約48億円)での公開終了となったとのこと。伝えられているところでは製作費は1億1500万ドル(約177億円)とのことで、興行としては“失敗”に相当すると言えるだろう。
こうした状況は、Take-Two InteractiveのCEO、Strauss Zelnick氏も把握しているようだ。Zelnick氏は決算発表において、映画「ボーダーランズ」は実に残念だった(the ‘Borderlands’ movie was indeed disappointing)とコメント。しかし一方で、『ボーダーランズ』シリーズタイトルのカタログ販売にはプラスであった、としている。つまり、ゲームシリーズの売上は向上したわけだろう。
公表されているデータから、実際に映画公開前後の売上を比較してみよう。8月21日のPR TIMESでの発表によれば、『ボーダーランズ』シリーズは世界累計で8700万本以上の売上とされていた。対して、本日公開されたTake-Two Interactiveの投資家向けプレゼンテーション資料では、「nearly 89M units」、つまり8900万本近く売り上げたとされている。正確に映画公開から現在までの売上の変化が反映されているわけではないものの、少なくとも200万本ほどを追加で売り上げている可能性がうかがえる。
また映画公開にあたっては、プレイヤー数も増加しているようだ。たとえば『ボーダーランズ3』Steam版では、3000人から6000人ほどで推移していた同時接続プレイヤー数が、映画公開を境に急増し、1万人を超える日が続いている(SteamDB)。これは数字の伸びこそ異なるものの、『Borderlands Game of the Year』『Borderlands 2』でも同様の傾向がみられる。さらには『ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界』といったスピンオフ作品についても、プレイヤー数が増加している様子がうかがえる。映画「ボーダーランズ」は評価や興行の面では低迷していたものの、映画からゲームを知った、あるいは映画が良くも悪くも話題になったことで、シリーズ作品をプレイするユーザーは増加したようだ。
そうした点も見るに、低迷を見せた映画「ボーダーランズ」ながらも、売上には貢献している模様だ。この結果を受けてか、Zelnick氏は(映像化などをおこなう)IPは選びつつも、別媒体への展開自体には意欲的なようだ。なお、かねてより制作中と伝えられている映画版『バイオショック』については保留中とのこと。同作の続報も含め、今後もTake-Two Interactive、および傘下スタジオ作品の映像化については注目されるところだろう。
『ボーダーランズ』シリーズ最新作となる『ボーダーランズ4』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5/Xbox Series X|S向けに2025年に発売予定だ。