“世界最悪のクソゲー”とも悪名轟く『Big Rigs: Over the Road Racing』、突如Steamストアに出現。「メタスコアたった8点」の問題作がなぜか蘇る

パブリッシャーのMargarite Entertainmentは3月23日、『Big Rigs: Over the Road Racing』をSteamでリリースすることを発表した。あまりの品質の低さで今も語り草となっている2003年発売のゲームが、現代のPC向けに展開される格好だ。

『Big Rigs: Over the Road Racing』（以下、Big Rigs）は、パトカーからの追跡を振り切って他のトラックよりも早く荷物を運ぶレースゲームという設定で作られ、2003年にPC（Windows）向けにリリースされた作品である。ゲームのレビューサイトGameSpotでは10点中1点、Metacriticでのメタスコアは100点中8点と、きわめて低い評価を記録。作中のあらゆる要素がそうした評価につながっているものの、その象徴ともいえる文法ミスを含むフレーズ「YOU’RE WINNER！」がネットミームとして広がったことで世界的に有名になった。「世界最悪のクソゲー」とも評され、悪名を轟かせてきたゲームだ。

『Big Rigs』について敢えてゲームプレイの説明するならば「パトカーからの追跡を振り切るという設定にも関わらずゲーム中にパトカーが存在しない」「荷物を運ぶという設定なのに実際に走るのは周回コースであり荷台がからっぽ」と、作品の設定からはさっそく矛盾。またライバルのトラックが動かない（後に修正されたが先着されても勝敗に影響はない）、建物などに当たり判定が存在しない、無音（後にエンジン音のみ追加）、フリーズが頻発……と、レビューでの散々な評価にも頷ける内容となっている。こうした各種要素を象徴するかのようにレース終了時に無音で表示される「YOU’RE WINNER！」が、ネットミームとして広まっていった。

ちなみに作品の品質とは裏腹に、「YOU’RE WINNER」はネットミームとしてかなりの人気ぶり。ネットミームデータベース「Know Your Meme」に掲載されているのはもちろんのこと、「YOU’RE WINNER」というネットミームそのもののファンサイトが存在する。EtsyやeBayなどのオンラインマーケットプレイスでは、3Dプリントで作られた「YOU’RE WINNER」のトロフィーまで販売されているほどだ。

ちなみに上述した「YOU’RE WINNER」のファンサイトでは『Big Rigs』のリードプログラマーとして「誤って」クレジットされているSergey Titov氏へのインタビューを行っている。ここでは、同氏はリードプログラマーとしてクレジットされているが実際にはゲームエンジンのライセンスを供与しただけであること、開発に関わる権限もリリースを阻止する権限もなかったことなどが赤裸々に語られている。また同氏によれば、『Big Rigs』はプレアルファ段階、つまり開発初期のテスト版「アルファ版」以前の試作段階でリリースされたという。

『Big Rigs』を実際に開発したのはStellar Stoneというアメリカの開発会社だが、少人数の開発チームは予算を抑えるためにロシアやウクライナに駐在していたと語られている。2000年に設立され、8つの作品をリリースしたが、もっぱら『Big Rigs』の悪評で知られている会社だ。2006年にすでに解散している。

今回、そんな『Big Rigs』のSteamストアページがお披露目。パブリッシャーのMargarite Entertainmentの発表によれば、本来はまだストアページを公開する予定ではなかったらしく、うっかり公開されて反響を呼んでしまったために慌てて発表に至ったようである。全世界でのライセンスを正式に取得したとのことだが、本稿執筆時点でSteamストアページの開発元にはStellar Stoneの名前のみがクレジットされている。つまりリメイクやリマスターではなく、オリジナルの作品が現在のWindowsでも動作するように調整を加えられてリリースされるものと思われる。

『Big Rigs: Over the Road Racing』はPC（Steam）向けに、2025年第2四半期リリース予定。2003年にリリースされ、20年以上が経った今もなお色褪せぬネットミームの発生源を探訪できる日が、すぐそこまで近づいている。