元ベセスダのベテラン開発者、20年以上在籍したベセスダを辞めた理由を赤裸々に語る。“大きくなりすぎた”スタジオと、キャリア観のすれ違い

Bethesda Game Studiosに20年以上在籍してきたベテラン開発者のKurt Kuhlmann氏が、同社を去った理由を海外メディアのインタビューで明かした。その背景には、同社の拡大が関係しているようだ。

Bethesda Game Studios(以下、Bethesda)に20年以上在籍してきたベテラン開発者のKurt Kuhlmann氏が1月16日、海外メディアPC Gamerのインタビューにて、同社を去った理由について語り、注目を集めている。

Kuhlmann氏は1990年代後半および2003年以降の二度にわたってBethesdaに在籍してきたベテラン開発者だ。『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)では共同リードデザイナーを務め、長年にわたりシリーズの世界設定を管理する立場にもあった。また近年では、『Starfield』においてリードシステムデザイナーを担当しており、同スタジオの主要タイトルに継続的に関わってきた人物である。こうした経歴を経て、Kuhlmann氏は、2023年にBethesdaを退社している。当時、退社理由について詳細は語られていなかったが、今回、海外メディアPC Gamerのインタビューに応じるかたちで、その背景を明かした。Kuhlmann氏によれば、退社は突発的な決断ではなく、長年の在籍を通じて感じてきた違和感が積み重なった末の判断だったという。

『Starfield』

スタジオ拡大で変わった開発環境

Kuhlmann氏がまず挙げたのは、Bethesdaの規模拡大に伴う環境の変化だ。『Skyrim』の開発当時、スタジオは比較的小規模で、開発者同士が近い距離で意見を交わしながら制作を進めていたという。しかしその後、複数のスタジオが関与する体制へと移行し、『Starfield』では数百人規模が関わる大規模プロジェクトとなった。Kuhlmann氏は、こうした成長自体は成功の結果だとしつつも、組織が大きくなるにつれて、意思決定の流れや現場の感覚が以前とは大きく変わっていったと語っている。

複数スタジオ体制が生んだ意思疎通の難しさ

環境が変化するなかで、Kuhlmann氏が具体的な問題として挙げたのが、開発現場での意思疎通の難しさだ。とくに『Starfield』の開発では、複数のスタジオが並行して関わる体制となったことで、判断や方針が共有されにくくなる場面があったという。あるスタジオの開発リードから得た回答と、別のスタジオの開発リードからの説明が食い違うこともあり、現場が何を優先すべきか分かりづらい状況が生まれていたと振り返っている。

判断の流れと役割の変化

この変化は、Bethesdaにおいて長年主要タイトルの制作を率いてきたTodd Howard氏の立場にも及んでいたという。Kuhlmann氏によれば、スタジオが小規模だった頃は、設計上の疑問点をHoward氏と直接話し合い、その場で判断が下されることも多かった。しかし組織の拡大に伴い、Howard氏は複数のスタジオやプロジェクトを横断して関わる立場となり、現場との距離は徐々に広がっていった。その結果、判断が管理層を経由する形になり、決定までに時間を要する場面も増えていったと語っている。

『Starfield』

加えて、Kuhlmann氏は、その影響として判断の一貫性が保たれにくくなった点も挙げている。Howard氏が多忙で現場に関われない状況では、別の管理層によって決定が下されることもあり、後になって方針が見直されるケースが発生していたという。結果として、一度進んだ設計や作業が差し戻される場面もあり、開発のテンポや手応えに影響を及ぼしていたと振り返っている。この意思決定の流れの変化は、Kuhlmann氏自身の役割にも影響を及ぼし、制作に直接関わる立場から管理寄りの役割へと比重が移っていったという。

『TES6』をめぐるキャリアの転機

こうした環境の変化に加え、Kuhlmann氏は自身のキャリアにおいて重要だった出来事にも言及している。それが、『The Elder Scrolls VI』(以下、TES6)をめぐる役割の問題だ。Kuhlmann氏によれば、『Skyrim』の開発後、当時の制作体制の中で、次回作にあたる『TES6』では自身がデザインリードを務める想定が伝えられていたという。しかし実際には、『Fallout 76』や『Starfield』の開発が優先され、『TES6』の着手は長期間先送りされることになった。Kuhlmann氏自身、その期間はおよそ11年に及んだと振り返っている。

『Fallout76』

やがて『TES6』の制作に向けた話が具体化した際、Kuhlmann氏に提示されたのはリード職ではなく、別の重要な役割だった。スタジオ側としては妥当な判断だった可能性もあると理解を示しつつも、自身が思い描いてきたキャリアの方向性とは一致しなかったと語っている。この時点で、スタジオの規模や制作体制の変化、自身の役割の変遷が重なり、Bethesdaにとどまり続ける選択肢は現実的ではなくなっていったという。そしてKuhlmann氏は、2023年に同スタジオを離れる決断を下した。

個人の判断ではなく、構造の問題として

Kuhlmann氏は、こうした経緯について恨みや失望を前面に出すことはなく、冷静な言葉で振り返っている。スタジオ側が下した判断についても、結果だけを見れば妥当だった可能性があると理解を示しており、自身がその役割に就いていたとしても、当時の環境では満足できなかったかもしれないと語っている。スタジオの規模や制作体制が大きく変わった以上、『Skyrim』時代と同じ感覚でリードを務めることは難しかっただろう、というのが現在の認識だという。

『The Elder Scrolls VI』

Kuhlmann氏の語りを通して浮かび上がるのは、特定の人物や判断の是非というよりも、Bethesdaというスタジオそのものが置かれてきた環境の変化だろう。少人数で意思決定が完結していた開発体制から、複数スタジオが関与する大規模な制作体制へと移行するなかで、判断の流れやクリエイターの立ち位置は大きく変わっていった。その流れはスタジオの成功の裏返しでもある一方で、長年現場を支えてきた開発者にとっては、かつて当たり前だった感覚や役割が失われていく過程でもあったようだ。

なお現在Bethesdaでは『TES6』の開発が進められている(関連記事)。Kuhlmann氏は同作の内容について具体的な言及を避けつつも、次回作は自身が想定していた形とは異なるものになるだろうと述べている。巨大化した制作体制のもとで、どのような判断が積み重ねられ、どのような作品として結実するのか。『TES6』の行方は、AAAスタジオにおける開発とキャリアの関係性を考えるうえでも、一つの指標となりそうだ。

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Junya Shimizu
Junya Shimizu

ローグライクが大好きです。映画や海外ドラマも好きなので、常に時間に追われています。

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