『シャドウハーツ』精神的後継作に取り組んでいた町田松三氏、DANGEN EntertainmentとBen Judd氏を訴える。新作の報酬支払請求事件として
ゲームクリエイターの町田松三氏は11月22日、Ben Judd氏(Double Kickstarter・プロデューサー、バッジコンサルティング株式会社代表取締役)及び、DANGEN Entertainment(Double Kickstarter・キャンペーンチーム)を、大阪地方裁判所へ5月より提訴していることを公表した。町田氏が現在開発している新作『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』の報酬支払請求に関する件だという。具体的には開発費が支払われていないようだ。
『ペニーブラッド』は、ゴシックホラーRPGだ。舞台となるのは、1920年代の“悪意に満ち混乱に歪んだ世界”。主人公の捜査局に雇われた私立探偵マシュー・ファレルとして、ニューヨークの精神病院で発生した怪事件の捜査。そこから陰謀に巻き込まれていく。
同作については、『シャドウハーツ』第一作目と第二作目のディレクションとシナリオを担当した町田松三氏が、ゲームデザイン・総監督・脚本を担当。楽曲とサウンドについては、弘田佳孝氏が楽曲を提供。こうしたスタッフ陣のほか、テーマや戦闘システム、正気度システムなどもあり、『シャドウハーツ』の精神的続編として開発されていた。定期的な進捗報告はなされていた一方で、今回町田氏からBen Judd氏およびDANGEN Entertainmentを訴えたことが報告された。
どのようなトラブルだったかは定かではないが、状況からはKickstarterに絡んだものであるとみられる。というのも『ペニーブラッド』を開発するYukikazeおよびスタジオワイルドローズは、『ワイルドアームズ』スタッフによる新作『アームドファンタジア』開発チームWild Bunch プロダクションと共にKickstarterキャンペーンを実施。Double Kickstarterなるプロジェクトとしてユーザーから支援を募り、約3億8000万円もの資金を集めていた。
今回町田氏は、そのDouble KickstarterのプロデューサーとしてBen Judd氏を名指し、そのキャンペーンチームであるとしてDANGEN Entertainmentの名をあげ訴訟を起こしている。こうした経緯から、Kickstarterでなんらかの支払いトラブルがあったと推察される。
なお、Ben Judd氏といえば、DANGEN Entertainment(以下、DANGEN)の元CEOだ。DANGENは国内外のユニークなインディーゲームをリリースするパブリッシャーである。ただ2019年当時CEOであったJudd氏は、セクシャルハラスメントおよびパワーハラスメントにより告発されていた。またDANGENもまたデベロッパーから不払いなどの告発を受けていた。DANGEN側は当初反論していたものの、最終的にJudd氏はその内容を部分的に認め、DANGENを退職。DANGENもまた今後の運営方針を変更するなど再建が図られた(関連記事)。またJudd氏はDANGENから身を退くだけでなく、ゲーム業界から距離を置くことも示唆していた。
一方で今回の町田氏の訴えが定かならば、Ben Judd氏はいまだゲーム業界に関わっており、DANGENと共にゲームのKickstarterキャンペーンに関与していたようだ。町田氏の訴訟のみならず、Judd氏と関係解消していたはずがまだ同氏と協働していたとなれば、DANGENの動向も注目されそうだ。
なお訴訟の告知にあわせて、「ペニーブラッド・インヘリターズストーリー Vol.1」が発表された。同作は電子書籍であり、『ペニーブラッド』だけでなく『シャドウハーツ』から描かれてきた世界観のもと、オムニバス形式で三篇の物語が展開されるという。三篇の物語は、ヨーロッパ篇を町田松三氏が、日本編を葛田冬夜氏が、アメリカ篇をアリ・リー氏が担当するという。『ペニーブラッド』のIPの価値を高めるために刊行するとのこと。
「ペニーブラッド・インヘリターズストーリー Vol.1」の購入で得た収益は、“確実に”スタジオワイルドローズへ届くとしている。町田氏は11月15日にはX上で進めている企画に参加するスタッフを称賛。ストーリー制作は順調なものの、なんらかの困難に直面しているようだ。町田氏を応援したい人は、「ペニーブラッド・インヘリターズストーリー Vol.1」を購入するのもいいだろう。