PC版『Batman: Arkham Knight』で動作不良の声が多数、Rocksteadyが現在調査を続ける

PC版『Batman: Arkham Knight』に関してパフォーマンスに問題があるとの声が多く挙がっており、Steamでは多数のネガティブなレビューが寄せられている。開発のRocksteadyも問題を認識しているという。

【UPDATE 2015/6/24 20:00】: 開発のRocksteadyは、最小動作環境と推奨動作環境において推奨するグラフィック設定を公開した。最小動作環境ではほぼ最小のグラフィック設定が勧められている。推奨スペックでは、各種クオリティは「Normal」に設定し、Nvidiaの各種演出をすべてオフするように勧められている。後者の設定は現行世代の家庭用ハード機で動作する体験と同等のグラフィック表現になるという

AMDのGPUを搭載した場合にはさらに設定を下げる必要があり、推奨動作環境でも解像度などの各種クオリティは「Low」に設定しなければならない。最小動作環境に値するAMDのGPUでは、グラフィックを最小設定にしてもバットモービルのシーンなどで問題が発生するようだ。

最高設定については、Rocksteady側がこれからさらなるテストを実施して、動作が可能なマシンのスペックをあらためて公開する予定となっている。


 

「バットマン」を題材にしたアクションアドベンチャーシリーズ最新作『Batman: Arkham Knight』は、海外では一足先にリリースされ、現地メディアから華々しい評価で迎え入れられた。一方で、PC版に関してパフォーマンスに問題があるとの声が多く挙がっており、Steamでは多数のネガティブなレビューが寄せられている状況だ。開発を担当したRocksteady Studiosは公式フォーラムにて、今回の問題を把握しており、解決に乗りだしていることを明らかにしている。

フレームレート問題、批判の嵐

国内でのPC版『Batman: Arkham Knight』の発売は7月16日が予定されているが、一足先に解禁された海外では複数のメディアが今回の問題を伝えている。特に指摘が集中しているのは、GTX 970など一部ビデオカードを搭載したマシンでの動作不良と、本作の目玉要素である「バットモービル」の登場シーンにおけるフレームレート問題である。

Rock, Paper, Shotgunの記者Adam Smith氏は、GTX 970と3.5GHzのクアッドコアCPU、16GBのメモリを積み、さらに最新のNVIDIAのドライバをインストールしたマシンにて、さまざまな設定で同作を起動した。最高設定では、一人称視点のオープニングシーンではフレームレートが一桁台に下落し、窓から雨と風が吹き荒れる外の様子を見ようとすると、ゲームがほぼフリーズに近い状態になったという。NVIDIAのエフェクトを切った状態で再び試してみると、軽く症状は改善はしたものの、動いたり周りを見渡したりするとやはり不安定になったそうだ。NVIDIAのドライバーを以前のバージョンに戻すと、最高設定でも前述の問題は改善したものの、それでも「バットモービル」のシークエンスではフレームレートが安定しないとSmith氏は報告している。

Steamに寄せられているレビューは赤色一色となっており、プレイヤーによる5829件の評価は“ほぼ不評”だ。海外フォーラムRedditなどでも1600件以上のコメントが寄せられており、メディアVG247Eurogamerなどがその模様を伝えている。批判の的はやはりパフォーマンス問題に集中しており、GTX 970や980、Titan Xといったカードでのフレームレートの不安定さが報告されている。開発元のRocksteadyは、発売直前となる6月23日にAMDカードに関する最小動作環境を変更し、さらにAMDマシンでは既知のバグが存在することをあらかじめ報告していたが、NVIDIAのカードを積んだマシンでも問題が広がっている状況だ。また、プリインストールしたユーザーが動作不良により再びゲームをダウンロードする事態に陥ったとの報告が複数あるほか、30fps制限やグラフィックオプションの少なさなどにも批判が集中しており、ネガティブな評価のレビュー増加に拍車を掛けている。

Rocksteadyが現在調査を続ける

Rocksteadyのコミュニティマネージャーは、「我々は複数のユーザーがPC版『Batman: Arkham Knight』においてパフォーマンス問題を報告していることに気づいています」と公式フォーラムにてコメントした。今回の事態を真摯に受け取っており、共にPC版を開発した外部のパートナーとできるだけ早く問題を解決すると続けている。

PC版移植にどのスタジオが参加したかは正式に発表されていないが、同作のクレジットにはIron Galaxyの12人のスタッフの名が「Additional Engineering & PC Support」の担当として記されている。Iron Galaxy Studiosは、滑空蹴りのみの格闘ゲーム『DiveKick』を開発したことで話題となった米国のスタジオだ。本業は移植開発を担っており、多数の実績があるが、過去には『Borderlands 2』のPS Vita版における移植を担当し、フレームレートなどの問題で不評を買ったこともある。とはいえ、Rock, Paper, Shotgunが伝えるようにドライバのバージョンを戻すと一部問題は解決したとの報告もあり、現時点でその原因は不明だ。Iron Galaxyは『Batman: Arkham Origins』でも移植を問題なく成功させており、そして『Batman: Arkham Knight』におけるゲームエンジンは同じく専用に調整されたUnreal Engine 3である。

『Batman: Arkham Knight』は、当初からPCおよび次世代機にターゲットを絞っていた。完成度が高く人気もあった「Batman: Arkahm」シリーズの最終章であり、さらにオリジナルの開発元であるRocksteadyが手がけている。特に海外ではファンから高い期待をかけられていただけに、今回の問題に対する反応にも非常に熱いものがある。RocksteadyとIron Galaxyが問題を解決しない限り、騒動は当分続くこととなりそうだ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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