大流行バナナ取引“ゲーム”『Banana』開発者のひとり、過去の「Steamアイテム価格吊り上げ」関与疑惑で開発チームを離脱。開発元は『Banana』は潔白とアピール


アイテム売買を軸として、Steamにて急激な人気の高まりを見せる『Banana』。本作の開発チームのひとりが、過去に「Steamコミュニティマーケットのアイテム売買におけるトラブル」に関与していたことが指摘され、物議を醸している。これを受けて別の開発者が声明にて「『Banana』では詐欺のような行為は一切ない」と強調、問題の開発者がチームを離脱したことを伝えている。

『Banana』は、バナナの画像をクリックするだけの基本プレイ無料ゲームだ。PC(Steam)向けに4月23日にリリースされた。本作では画像をクリックすることで表示されたカウントが増えていくが、それ以外は特に何も起こらない。実績は画像を1回クリックするだけで獲得可能だ。


ゲーム中にできることは画像をクリックするだけにもかかわらず本作は高い人気を博しており、その理由は“バナナの取引”にあるとみられる。本作では、一定時間おきにゲーム内の画像をクリックすることによりレアなバナナを獲得可能。さらに本作コミュニティでは期間限定で、ゲーム中に低確率で希少なバナナがドロップしたり、公式Discordサーバー上で希少なバナナが抽選プレゼントされたりといったイベントも実施されている。

取得したバナナはSteamのアイテムインベントリ上に反映され、コレクションや取引のみに用いる“概念”のような存在となっている。Steamのコミュニティマーケットにてウォレットクレジットを用いて売買することも可能。SteamウォレットクレジットはSteamストアでの支払いに用いることもできるため、ゲームプレイではなく“投機目的”で本作はプレイされているようだ。本稿執筆時点で最大同時接続プレイヤー数が約88万人を記録する大流行を見せている(SteamDB)。


開発者のひとりに向けられた疑惑

そんな本作『Banana』の開発元について、YouTuberのTDM_Heyzeus氏がとある指摘をおこない、注目を集めている。同氏は、本作の開発者のひとりであるTheselions氏が、かつてSkog氏が手がけた『Run!』というゲームに関わっていたと説明。同作では「ジョーク」として“Bitcoin”という名のSteamのインベントリアイテムが販売。当然ながら本物の仮想通貨のBitcoinとは無関係であり、『Banana』におけるバナナと同じくSteam上のみで取引されるアイテムだ。


Skog氏はそんな“Bitcoin”を友人たちに大量に配っていたという。そしてあるとき“Bitcoin”は不自然な価格高騰を見せ、取引が活発なアイテムとしてSteamコミュニティマーケットのトップページに躍り出ることになった。また価格が高騰した際にSkog氏の友人らは“Bitcoin”を一気に売却して利益を得ていたとされている。価格高騰の原因は不明ながら、Steamの運営元であるValve側からは価格の吊り上げを目論んだ不正行為と判断されたようだ。Steamから“Bitcoin”が削除されただけでなく『Run!』も販売停止となり、Skog氏やTheselions氏を含む友人らのSteamアカウントは停止されることになった。なおSkog氏は価格高騰などについて、Steam側の不具合が原因であると主張していたという。

TDM_Heyzeus氏の動画では、『Run!』における“Bitcoin騒動”に、『Banana』の開発者のひとりであるTheselions氏が関わっていた点への懸念が示されているわけだ。過去の同氏の経験から、『Banana』においてもバナナの価格の吊り上げなどが故意におこなわれている可能性がある、といった考えだろう。そうした動画の内容を受けて、『Banana』の公式Discordサーバーにて開発者のaestheticspartan氏が声明を投じている。

aestheticspartan氏によると、『Banana』の開発チームはTheselions氏が『Run!』において“Bitcoin”の不正あるいは不具合を巡る問題に関与していたことを今まで知らなかったという。開発チームも前述の動画を見て事情を知ったといい、Theselions氏に状況の説明を求めたそうだ。声明いわく同氏は深く反省しているとのことで、過去の出来事から詐欺師呼ばわりされ続けるべきではないとして、同氏への嫌がらせなどをやめるようチームから呼びかけている。また話し合いの結果、Theselions氏には円満なかたちでチームを離脱してもらうことが決定されたとのこと。またチーム離脱にあたって、同氏がスタッフとして保有していた貴重な“バナナ”はすべて回収されているそうだ。

またaestheticspartan氏は声明にて、本作『Banana』においては詐欺のような行為は一切ないと強調。コミュニティの声に耳を傾けており、今後本作をさらに改善・拡張していくと伝えている。ユーザーが保有するバナナで「もっと多くのことができるようになる(let you all do much more with your bananas)」アップデートも予定されているとのことだ。


破竹の勢いと裏腹に生じる混乱

ちなみに『Banana』においてはSteamDBにて同時接続プレイヤー数が不自然な急増減を繰り返す現象が確認可能。かねてよりBotを使って複数のアカウントで投機目的のバナナを収集する“業者”が存在する可能性が懸念視されていた。海外メディアPolygonに開発者のひとりHery氏が語ったところによると、開発元でもそうした状況は認識されているそうだ。たとえば同時接続プレイヤー数が約14万人だった時期には、開発元が確認する範囲で実際にプレイしていたのは約3分の1だけだったという。開発元はValveのサポートチームにも連絡をとりつつ、対策を探っているそうだ。

“取引可能なアイテム”を主軸とする風変わりな仕組みをもつ『Banana』。非常に高い人気を博しつつも、開発チームメンバーの過去のおこないや、Bot疑惑のあるプレイヤーの存在、フォロワー的作品の乱立(関連記事)などさまざまな混乱も生じている。そもそも“ゲーム”としては奇妙なかたちをとっている本作や類似作品にValveがどのような見解をもっているのかも含めて、先行きは注目されるところだろう。