任天堂、15年前から続く「Wiiリモコンの特許侵害を巡る係争」でようやく第一審に決着。被告には13億円弱の損害賠償判決下るも控訴
任天堂およびNintendo of Europeが“15年前”に提起し、翌年に勝訴した係争において、今年10月になってようやく“損害賠償額についての”第一審判決が下されたという。

任天堂およびNintendo of Europeが“15年前”に提起し、翌年に勝訴した係争において、今年10月になってようやく“損害賠償額についての”第一審判決が下されたという。Wiiリモコンの互換製品が同社の特許を侵害している可能性を巡る裁判であり、特許の有効性をめぐる係争も長年にわたって繰り広げられていた。任天堂およびNintendo of Europeの代理人を務める特許法律事務所Bardehle Pagenbergが報告している。
事の発端は2010年に遡る。任天堂およびNintendo of Europeはドイツのマンハイム地方裁判所において、当時のBigben Interactive(以下、Bigben)を提訴。任天堂は、同社が手がけるWiiコントローラのうち、リモコンに関する欧州の特許EP 1 854 518号をBigbenが侵害しているほか、リモコンとヌンチャクに関する複数の実用新案権も侵害していると主張していた。対象となっていたのは、当時Bigbenがドイツで販売していたWiiコントローラの互換製品。特許EP 1 854 518号は、Wiiリモコンにおける人間工学的特徴や、カメラや加速度センサーを含むセンサー技術を組み合わせたゲームコントローラに関するものだ。

本訴訟について同裁判所は2011年に特許EP 1 854 518号についての侵害を認める判決を出していた。しかしBigbenはこの判決をカールスルーエ高等裁判所に控訴し、欧州特許庁に係争中の特許の異議を申し立てた。ここからはドイツの連邦特許裁判所も巻き込みながら、特許の有効性を巡る長きにわたる係争が続くこととなる。ちなみにこの間にはBigbenは2020年に傘下のNaconと統合されるかたちで、「Nacon」に名を改めている。
とはいえまずは欧州特許庁で2016年に特許の有効性が認められ、カールスルーエ高等裁判所は2017年に第一審判決を全面的に支持する判断を下した。ドイツでも2021年になってようやく、EP 1 854 518号の保護範囲が全面的に回復している。
そしてその裏では、特許侵害に関する第一審がおこなわれたマンハイム地方裁判所にて7年以上にわたって“損害賠償額を定める”審理が続けられており、このたびようやく判決が下されたかたち。つまり特許侵害の判決が下されてから、実に14年越しに損害賠償額の第一審判決が伝えられたわけだ。賠償額は700万ユーロ(約13億円)弱にのぼるそうで、ここには基準金利に5%を加算した利率での利息も含まれているとのこと。Bardehle Pagenbergは、Bigbenが裁判所が任命した鑑定人を拒否するなどして裁判を“遅延”させてきたと述べており、これによって大幅に賠償額が増加したとしている。
なおBardehle Pagenbergによれば損害賠償額を決める法的手続きは、ドイツの特許訴訟において珍しいことだという。特許侵害による逸失利益を算定すると賠償額自体は基本的に高額になるそうだが、原告側が売上や利益率などを細かく開示する必要があるため、ほとんどは当事者間の和解で済まされるとのこと。つまり今回は異例の対応として、損害賠償額についての係争も長らく続けられてきたわけだろう。
とはいえBigben側は今回の損害賠償額の判決についても、カールスルーエ高等裁判所に控訴しているという。引き続き損害賠償額についての係争は続いていく可能性もあるものの、提訴から数えて15年越しにマンハイム地方裁判所での裁判はひと区切りがついたといえるだろう。
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