『パルワールド』訴訟に関連する任天堂の特許出願が「拒絶理由通知」を受ける。ただし“却下”ではない

『パルワールド』を巡る訴訟に関連して任天堂から分割出願されていた特許出願が、拒絶理由通知を受けていたことが明らかとなった。

任天堂および株式会社ポケモンは昨年、ポケットペアが手がける『パルワールド』が、複数の特許権を侵害しているとして東京地方裁判所でポケットペアを提訴。本訴訟に先がけては複数の分割特許が出願されていたが、今回は審査中の特許のひとつに拒絶理由通知が出されたことが明らかとなった。あくまで最終決定ではなく、むしろ特許出願においては拒絶理由通知を踏まえて手続補正がおこなわれる手順が一般的とみられるが、今回の訴訟の提起後に初めて関連する特許出願への拒絶理由通知が出された点で注目を集めているようだ。

今回拒絶理由通知が出されたのは2024年3月に提出された特許出願2024-031879。特許7505852を親特許とする分割出願だ。特許7505852はフィールド上キャラクターに照準で狙いを定めて捕獲アイテムを投擲し捕獲の成功判定をおこなったうえで捕獲する「第1のモード」、および照準で狙いを定めて戦闘キャラクターを投擲して戦闘開始する「第2のモード」を備えたゲームプログラム等に関する特許であった。

Image Credit: J-PlatPat

一方で今回の特許出願2024-031879は、前述した第1のモードで投擲するアイテムを捕獲アイテムに限定せず、フィールド上キャラクターに影響を与えるアイテム全般として定義するような特許の出願となっている。このなかには捕獲において成功判定を出やすくするアイテムや、フィールド上キャラクターの動きを制限する効果をもつアイテムなどが含まれている。また請求項では、イベントアイテムをフィールド上キャラクターに命中させることでイベントを進行させるといったシステムも想定されている。

今回はそんな特許出願2024-031879に対して、特許庁から拒絶理由通知が出されたかたち。拒絶理由通知書内を見るに、特許法29条2項に基づき、特許の進歩性がないとの判断がおこなわれたようだ。なお、引用文献としては『ARK: Survival Evolved』などのプレイ動画や解説記事などが示されている。通知書ではこの文献をもとに、同作での麻痺矢を用いて敵キャラクターを昏睡させてフィールド上キャラクターの動きを制限させるシステムなどがすでに知られていることを例示。特許出願2024-031879における請求項の一部は、その技術分野の標準的な知識を有する者が容易に発明できると判断されたことが示された。

ただ拒絶理由通知は出願者の多くが受け取る文書であるとされる(特許庁)。親特許である特許7505852においても拒絶理由通知を踏まえて任天堂から手続補正書と意見書が提出され、特許として認められた経緯がある。そのため特許出願2024-031879についても今後拒絶理由通知を踏まえて再検討されるとみられ、最終的な拒絶処分である「拒絶査定」ではないことには留意したい。

とはいえ今回の拒絶理由通知については海外メディアgames frayなども報じており、『パルワールド』を巡る訴訟の提起後に初めて拒絶理由通知が出された点で話題となっているようだ。

Image Credit: J-PlatPat

なお先述した画像のとおり、特許出願2024-031879からの分割出願によって、特許7545191が登録されており、この特許は訴訟の争点のひとつになっている(関連記事)。ただし特許7545191は独立して成立済みとみられ、仮に特許出願2024-031879が拒絶査定を受けたとしても自動的に無効になることはないようだ。とはいえ将来的に特許7545191について無効審判等の別の手続きが生じた際に影響する可能性はあり、その点でも特許出願2024-031879の今後は注目されるところだろう。

【UPDATE 2025/10/30 13:21】
特許7545191について追記

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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