『アサシン クリード』シリーズを率いたUbisoftのベテラン幹部、退職報道を受け「自分から辞めたわけじゃない」と報告。でも恨みはなし
元UbisoftのMarc-Alexis Coté氏は、改めてUbisoftを退職することを報告した。

元UbisoftのMarc-Alexis Coté氏は、改めてUbisoftを退職することを報告した。同氏は、『アサシン クリード』シリーズのクリエイティブディレクターやエグゼクティブプロデューサーを歴任してきた人物だ。先日にはUbisoftの社内メールをもとにした報道で、退職はCoté氏自らの決断であると伝えられていたが、同氏によると実際の退職の経緯とは異なるという。
『アサシン クリード』は、主にオープンワールドアクションゲームとして展開されてきたシリーズだ。2007年発売の『アサシン クリード』以降、さまざまな作品がリリースされ、最新作としては日本が舞台の『アサシン クリード シャドウズ』が今年3月に発売された。なお今後のシリーズ作品については、中国テンセントの出資を受けてUbisoftが今年10月に設立したVantage Studiosが担当することが伝えられている。同社は『アサシン クリード』『ファークライ』『レインボーシックス』シリーズの開発に特化した子会社になるという。

先日海外メディアVGCがUbisoftの社内メールの内容を報じ、このなかでMarc-Alexis Coté氏が退職することが明らかとなった(関連記事)。同氏は20年にわたって同社に在籍してきたベテラン。2010年発売の『アサシン クリード ブラザーフッド』ではミッションディレクターを担当し、その後も多くのシリーズ作品でクリエイティブディレクターやエグゼクティブプロデューサーといった要職を担っていた。このうち2018年の『アサシン クリード オデッセイ』以降はすべての作品にエグゼクティブプロデューサーとして携わっており、近年ではシリーズのバイスプレジデントにも就任。シリーズ全体の戦略を主導していた。
VGCが報じた社内メールにおいては、Coté氏にはVantage Studiosにおいても戦略的な方針を決めるリーダーシップチームの一員となることが打診されたものの、同氏はこれを辞退したと説明。Coté氏の決断に残念な思いもあるとされつつも、同氏の選択を尊重するとして、これまでの貢献への感謝も綴られていた。
そんなCoté氏が今回、自身のLinkedInアカウントでUbisoftを退職することを改めて報告。しかし退職の経緯について、先述した社内メールの内容とは異なる説明がおこなわれており、このことは海外メディアPC Gamerなどにも報じられている。
Coté氏によれば、同氏の退職について知った人々からは、同氏が長年携わり今でも情熱を注いでいる『アサシン クリード』シリーズからなぜ離れることを決断したのかと驚く反応が寄せられたそうだ。一方でCoté氏によると、実際には同氏自身が退職の決断をしたわけではないのだという。

Coté氏いわく、Ubisoftは『アサシン クリード』シリーズの指揮について「新たな組織構造により即した人物(someone closer to its new organizational structure)」に引き継ぐことを決定したそうだ。そのため同氏には別の役職が提示されたものの、これまで同氏が任されていた仕事と同じような範囲・権限・継続性を伴うものではなかったとのこと。
このほかCoté氏は声明の中で「自ら去ったのではない(I did not walk away)」と強調しており、Ubisoftから退くように言われるまでリーダー職を務めあげたことを伝えた。Ubisoftの決定に基づいて退職する運びになったと主張している格好だ。
なおCoté氏は、Ubisoftに対して何の恨みも抱いていないとも説明。同社は同氏の職業人生すべてを過ごしてきた拠点であるとし、共に働いた人々や携わったプロジェクトに心から感謝していると伝えた。今回の声明には元同僚や友人、ファンに向けて、自ら退職したのではないことを報告する意図があったようだ。とはいえあくまで同氏個人の投稿であり、退職にあたってどのような交渉があったのかは不明である点には留意したい。
今後はVantage Studiosにて開発されていく『アサシン クリード』シリーズ。新体制となる裏では、近年同シリーズを主導してきたCoté氏から別のリーダーへの交代もおこなわれるかたちだ。同シリーズはこれまで、同氏が属していたUbisoft Québecのほか、Ubisoft Montrealなど、各地のスタジオが分担しながら制作されてきた。Vantage Studiosに移管されるにあたり、従来とは異なる指揮系統で開発が進められていくのかもしれない。新体制で開発される『アサシン クリード』がどのような作品となるかは引き続き注目される。