ゲーム開発者による「落下ダメージなし」宣言がほのかにブーム。ある開発者は「母親がプレイしやすくするため」落下ダメージを無効にしたと報告


とあるゲーム開発者が、現在作っているゲームに落下ダメージを設けないと公表したことが話題を呼んでいるようだ。最近では落下ダメージを設定せず、それを公言するゲームも数多く見受けられる。GamesRadar+が伝えている。

発端となったのは、『Overthrown』開発者の投稿だ。『Overthrown』は、都市開発型マルチプレイヤーゲーム。プレイヤーは広大なフィールドに王国を建設。資源を収集したり、土地を耕したりして、発展させていく。最大6人のマルチプレイに対応していることも特徴だ(関連記事)。

同作を開発するゲームスタジオBrimstone Gamesは9月14日に、解説ゲームプレイ映像を投稿。「いろんな人に遊んでほしいから」という理由で、落下ダメージを削除したことを公表した。理由としては、落下ダメージはイライラするものだとし、そのおかげで好きなだけ飛び上がることができ、思い切って崖から飛んで敵を攻撃することもできるという。また開発者の母が(落下ダメージが原因で)やりたいことができなかったといい、そうした背景もあり『Overthrown』には落下ダメージがないようである。


落下ダメージは、広大なフィールドを探索するゲームでは、お決まりのように入っている要素だ。一定の高さから落ちると、ダメージを受けるというパターン。一定以上の高さから落ちると即死するという仕様にし、移動範囲を制限するという使い方もある。

こうした「当たり前」を逆手にとり、落下ダメージがないことをウリするゲームも存在。『Overthrown』はその代表例ともいえる。また先日発売された郊外探索オープンワールドゲーム『Caravan SandWitch』でも落下ダメージはなく、この仕様もまたアピール要素のひとつとなっている(関連記事)。上の投稿への好意的な反応を見ても、落下ダメージがないことはゲームにおけるアピールポイントになっているようだ。落下ダメージは、もともとユーザー間でやや賛否のある要素。落下は少しの操作ミスで起こりやすいにもかかわらず、ペナルティが大きく、罰されていると感じやすい点が不評なのだろう。


しかしながら、落下ダメージがないからといって、それが必ずしもゲームに良い体験をもたらすかどうかは不明。たとえばリアリティに寄せたサバイバルゲームでは、落下ダメージがなければ没入感を欠く。落下ダメージがあることによって、高低差があるエリアを避けるといった誘導や選択につながるかもしれない。リスクがあることにより駆け引きが生まれ得ることも多い。そのため特にオープンワールドゲームやノンリニアに探索・進行できるゲームでは、誘導や探索ルートの制限として採用されやすい傾向もあるだろう。

一方で、昨今では落下ダメージなしを採用するオープンワールド型ゲームも複数見かけるのは興味深い。中でもたとえば、そもそもフィールドでのHP管理の概念のないゲームには落下ダメージは入れようがない。オープンワールド型ではあるがバトル要素のない『なつもん! 20世紀の夏休み』には落下ダメージはなしで、この点が好評を呼んでいる。またセミオープンフィールドを採用しており高低差あるエリアもある『聖剣伝説 VISIONS of MANA』では、落下ダメージなし。こちらも落下ダメージがないことにより探索や戦闘に集中できるようになっている。このほか『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』では落下のペナルティがない上、落下前の場所に戻れるアクセシビリティ設定「おたすけ機能」まで用意されていた。

落下ダメージは、開発者の思想が反映されている要素のひとつといえる。根本的にはジャンルによる相性も大きく、よりサバイバル寄りならば入れたほうがいいし、よりカジュアルな作品ならば入れないなど、ジャンルにあわせた選択によって導入/非導入が選ばれているのだろう。ジャンプや落下要素のあるオープンワールド型のゲームを見かけた際には、落下ダメージがあるかどうか見てみることで、どういうゲームであるかより深く理解できるかもしれない。

今回のトピックの発端となったゲーム『Overthrown』は、PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けにリリース予定である。