「日本のゲーム開発元が作る黒人は美しい」との指摘に賛同集まる。ベテラン黒人ゲーム開発者の「(欧米スタジオで)きれいな黒人女性キャラ案が通らない」との悩みに際して
ゲーム業界歴10年以上のキャラクターアーティストが「美形の黒人キャラを提案しても採用されない」といった不満をこぼし、議論が発生。なかには興味深い反応として、日本の開発元のゲームにおける美形の黒人キャラを挙げるユーザーも複数みられ、賛同が寄せられている。
今回、自身のゲーム開発上の経験談を伝えているのはDel Walker氏だ。同氏はRespawn EntertainmentやNaughty Dogなどでキャラクターアーティストを務めてきた人物。現在は元Respawn Entertainmentの開発者たちが集って昨年設立されたWildlight Entertainmentで開発中の作品に、主任キャラクターアーティストとして携わっている。Xやビジネス向けSNSであるLinkedInのプロフィール写真を見るに、同氏もアフリカ系のルーツをもつ人物のようだ。
Del氏は、サッカー選手Bukayo Saka氏のガールフレンドであるTolami Benson氏の写真を投じたポストに反応。Tolami氏の美貌に関連して、Del氏のこれまでのゲーム開発におけるエピソードを語っている。Del氏によれば、キャラクターアーティストを務めるなかではTolami氏のような黒人女性キャラクターを何度も提案したことがあったそうだ。瞳や美しい髪が目立つ黒人女性を提案したのだろう。
一方で提案したキャラは同氏いわく、その後のやり取りを経て「当初の提案の美しさがかけらも残っていないコンセプトアートやモデル(the concept or model comes back without a speck of the original beauty I pitched)」として戻ってきたという。続くポストによると、この際にはポーズやスタイル、年齢などに至るまで、著しい変化があったそうだ。美形あるいは気の強い黒人キャラを提案した場合には、結果として年配でどっしりと構えたようなキャラになる傾向が強かったとのこと。同氏はどちらの風貌のキャラもゲームに登場する余地はあるとして、美形の黒人キャラが採用されにくい業界の状況を問題提起している。
Del氏の意見にはユーザーから賛同も寄せられており、なかには特定のキャラを美形の黒人ゲームキャラの好例として挙げる反応も見られる。あるユーザーは『Alan Wake 2』の主人公のひとりであるサーガ・アンダーソンを例に挙げ、最近のゲームでは珍しい美形の黒人ゲームキャラとして称賛している。
また興味深い反応として、日本の開発元のゲームに登場するキャラを、美形の黒人キャラとして示す投稿も複数みられる。たとえばあるユーザーは『ストリートファイター6』にて登場したキンバリーを例示。ほかのゲームでは見たことのないようなかわいらしい黒人キャラだとしている。また別のユーザーは『バイオハザード5』のシェバ・アローマを“格好の例”として挙げている。いずれの投稿にも若々しく麗しい容姿をした黒人キャラの一例として、支持が寄せられているようだ。ちなみに、このほか過去には『THE KING OF FIGHTERS XV』のドロレスのデザインが、海外ユーザーからも大きな注目と称賛を集めていたこともある。
なおシェバについてはリプライにおいて“アフリカ系人種の特徴がない”といった意見もみられるものの、これにはDel氏が反論。フェイスモデルを南アフリカ共和国・ケープタウン出身のMichelle van der Water氏が務めた点を説明しているほか、シェバに似ているとしてLiya Kebede氏などのアフリカ系の実在モデルを挙げている。
同氏はシェバが“アフリカ系っぽくない”という意見について「ステレオタイプなアフリカ系の特徴(stereotypical African features)」を備えていないからだろうとの見解を説明。アフリカ系といっても人それぞれであり、そもそも“人種の特徴”の有無を指摘すること自体に慎重になるべきといった考えを説いている。いずれにせよ、シェバはDel氏の目線ではアフリカ系人種として説得力のある見た目をしており、ユーザーからも美形の黒人キャラとして支持を受けているキャラといえそうだ。
なお先述の『Alan Wake 2』のサーガの例のほか、たとえば米国に拠点を置くRiot Gamesが手がける『VALORANT』のアストラのように、比較的スリムで若々しい美形黒人キャラは欧米のゲームにも存在。国産ゲームか欧米のゲームかを問わず、美形の黒人キャラが登場するかどうかは作品ごとのアートデザインや描きたいキャラクター像の違いも関わる部分だろう。とはいえ、Del氏が採用されにくいことに不満を述べるような美形の黒人キャラが、日本生まれのゲームでさまざま見られる点は興味深いところかもしれない。