フロム・ソフトウェア宮崎社長、“レイオフ”のような解雇は「絶対したくない」と海外メディアにコメント。任天堂元社長・岩田聡氏の「スタッフを怯えさせないゲームづくり」に賛同
フロム・ソフトウェアの代表取締役社長・宮崎英高氏には、同社での“レイオフ”のような解雇を絶対に避けたいという考えがあるという。海外メディアPC Gamerのインタビューにて明かしている。
フロム・ソフトウェアは国内のゲーム会社だ。3DダンジョンRPG『キングスフィールド』シリーズやメカアクションゲーム『アーマード・コア』シリーズなどの開発元として知られるほか、2009年にはアクションRPG『Demon’s Souls』を、2011年には『DARK SOULS』をリリース。いわゆるソウルシリーズとして、流れを汲む作品がさまざま展開され、ヒットを上げてきた。また両作のディレクターなどを務めた宮崎英高氏は、2014年にフロム・ソフトウェアの代表取締役社長に就任。同時期に同社は株式会社KADOKAWAの連結子会社となっている。
なお宮崎氏は社長就任後もディレクターとしてフロム・ソフトウェア作品の開発にも携わってきた。なかでも2022年2月発売の『エルデンリング』は世界的な大ヒットを記録し、同年のKADOKAWAのゲーム部門の利益が“前年同期から約12倍”になったことも報告されていた(関連記事)。同作の大型DLC「SHADOW OF THE ELDTREE」の6月21日の発売が迫るなか、先日6月12日には『エルデンリング』本編の世界累計出荷本数が2500万本を突破したことも伝えられている。
今回、宮崎氏に向けて海外メディアPC Gamerがインタビューを実施。昨今欧米のゲーム業界でレイオフが巻き起こっている点について言及し、フロム・ソフトウェアでは将来レイオフの懸念がないのかどうかを同氏に訊いた。先述のとおりフロム・ソフトウェア作品は大きなヒットを上げているものの、欧米でのレイオフは実績あるスタジオでもおこなわれている背景もあるためだろう。
一方、宮崎氏は返答において、フロム・ソフトウェアのスタッフについては(“レイオフ”するという発想は)ありえないと明言。また同氏は、親会社であるKADOKAWAも(レイオフをしない)方針について理解してくれていると考えているそうだ。なお日本国内では労働契約法上、企業側の都合によっておこなわれる海外におけるレイオフ(一時解雇)のような人員削減はあまり認められることはない。いわゆるリストラ(整理解雇)や一時帰休が類似の仕組みとして挙げられるものの、条件などに違いがある点は留意したい。
そして宮崎氏はレイオフのような解雇をしない理由として、任天堂の第4代代表取締役社長を務めた故・岩田聡氏の発言について言及している。岩田氏は2013年におこなわれた任天堂の第73期 定時株主総会の質疑応答にて、第72期・第73期と続けて営業赤字になっていたものの、コスト削減のためにリストラをおこなわなかった理由について説明。短期の業績を求めてリストラをすることでスタッフのモラール(士気)が下がるとしつつ、そうしてスタッフが不安におびえながら作ったソフトでは世の中の人の心を動かせなくなる懸念を示していた。なおその後2014年1月に任天堂では、取締役全員の報酬減額が実施。岩田氏が50%、岩田氏以外の代表取締役2名が30%、ほかの取締役が20%の減額となった(日本経済新聞)。
従業員解雇がスタッフの士気を下げるという点については宮崎氏もまったく同じ考えだそうで、「職を失うことを恐れていては良いものを作れない(people who are afraid of losing their jobs are afraid of making good things)」と述べている。インタビューのなかで宮崎氏はKADOKAWAやフロム・ソフトウェアの将来について確実なことは言えないとも言及。ただ、同氏がフロム・ソフトウェアの経営を担う限り、レイオフのような事態は絶対に避けたいと考えているそうだ。
昨年に引き続き2024年も欧米を中心にレイオフが頻繁におこなわれており、スタジオ閉鎖も相次いでいる。6月半ば時点ですでに、失職者数が昨年全体の合計を超えているとの調査報告もある(関連記事)。業界では苦境を人員削減で乗り切るといった経営方針もみられる一方で、フロム・ソフトウェアでは決してレイオフのような判断をおこなわないと社長の宮崎氏から明言された点は注目されるところだろう。