クリックするだけの“ゲーム”『Banana』、プレイヤー数がなんと約40万人まで爆増。「バナナの概念」取引の人気過熱続く

 

Steamにて基本プレイ無料で配信中の『Banana』が、さらなる活況を見せている。SteamDBによると同時接続プレイヤー数は約40万人に到達。Steamウォレットクレジットで“取引”可能なバナナを巡って、さらに多くのユーザーが集っているようだ。

『Banana』は、バナナの画像をクリックするだけの基本プレイ無料ゲームだ。画像をクリックすることで表示されたカウントが増えていくが、それ以外は特に何も起こらない。実績は画像を1回だけクリックすることで獲得可能だ。


画像をクリックするだけの本作ながら高い人気を博しており、その理由は“バナナの取引”にあるとみられる。本作では、3時間おきにゲーム内の画像をクリックすることによりレアリティ「Common」のバナナをひとつずつ獲得可能。そして18時間おきにゲーム内の画像をクリックすることでレアリティ「Rare」のバナナをひとつずつ獲得できる。さらに期間限定で、ゲーム中に低確率で希少なバナナがドロップしたり、公式Discordサーバー上で希少なバナナが抽選プレゼントされたりといったイベントも実施されている。

獲得したバナナはSteamのコミュニティマーケットにてSteamウォレットクレジットを用いて売買することが可能。コミュニティマーケットでは1円未満のバナナもあれば、高額で売られているバナナも存在し、多種多様なバナナの取引がおこなわれている。SteamウォレットクレジットはSteamストアでの支払いに用いることもできるため、ゲームプレイではなく“投機目的”で本作はプレイされているようだ。なおバナナは装飾アイテムのようにゲーム内で利用することはできず、Steamのアイテムインベントリ上でコレクションや取引のみに用いる“概念”のような存在となっている。


本作のプレイヤー数は4月23日のリリースからじわじわと増加を見せ、5月初旬にはピーク時1000人前後の同時接続プレイヤー数を記録。さらに5月20日ごろには不自然なほどプレイヤー数の急増を見せてピーク時には1万8000人に達し、その後も奇妙な増減を繰り返しながらプレイヤー数を伸ばしていた。そうした点から注目も集まったからか、プレイヤー数はさらに成長を続け、本稿執筆時点ではなんと同時接続プレイヤー数は約40万人に到達している(SteamDB)。

そして5月末時点で約8400人であった公式Discordサーバーのメンバー数も、本稿執筆時点で約4万6000人にまで成長。サーバー内では先述のとおり抽選プレゼントなどのイベントもおこなわれており、着実にメンバー数を伸ばしてきた様子だ。またサーバー内ではユーザー間のバナナの取引・交渉が盛んにおこなわれている様子もみられる。

ちなみに本稿執筆時点ではもっとも高額な「Crypticnana」は約12万円もの金額で取引されており、そのほかの希少なバナナも5月末時点から約2週間で価格高騰を見せている。プレイヤーベースの増加にあわせ、バナナの需要や市場価値が高まっている様子もうかがえる。

*5月30日時点の『Banana』のコミュニティマーケット
*6月14日時点の『Banana』のコミュニティマーケット

なお本作においては先述のとおり不自然なプレイヤー数増加を見せていた経緯もある。たとえば5月30日ごろには、小刻みに波打つような同時接続プレイヤー数の増減がみられた。状況証拠しかないものの、“バナナ”の収集目的で複数のアカウントがBotで運用され、SteamDB上での同時接続プレイヤー数増加に繋がっている可能性もある点には留意したい(関連記事)。

*5月30日時点のSteamDBのグラフ

ちなみに本作におけるバナナは先述したようにSteamのアイテムインベントリ上で管理されている。Steamでは公式に、暗号通貨またはNFT(Non Fungible Token・非代替性トークン)の発行や交換を許可するブロックチェーン技術に基づいて構築されたアプリケーションの公開が禁止されており、本作にもそうした仕組みは用いられていないとみられる。そのため本作におけるバナナは、Steamのコミュニティマーケット内だけで、ウォレットクレジットのみで取引される存在といえそうだ。

いずれにせよ、『Banana』によってゲームプレイではなく取引可能な“概念”、それもバナナの概念を求めて数多くのユーザーが集まる、奇妙な状況が生じているかたちだ。またSteam上では『Banana』に先だって2月にリリースされた『Egg』など、同様の仕組みの作品も存在する。Steam上では取引可能な“概念”だけを扱う作品の注目は高まっており、そうした作品にSteamを運営するValveがどのような見解をもっているのかも注目されるところだ。