Thekla Inc.は日本時間6月1日、リマスター作品『Braid, Anniversary Edition』PC版に向けてアップデートを配信。そのなかでは、日本語を含む複数言語翻訳について「オリジナル版の翻訳に戻した」とされている。本作においては、「リマスター版で翻訳の質が下がった」との指摘が複数言語ユーザーから寄せられていた。
『Braid, Anniversary Edition』は、2008年にリリースされたアクションパズルゲーム『Braid』のリマスター版。今年5月14日に配信された。オリジナル版は、時間を巻き戻すといった操作を使ったゲームプレイと、心に残る物語などが高い評価を受けた。リマスター版では、オリジナル版のグラフィックを刷新し、高解像度に対応。アニメーション・オーディオ面にも手が加えられ、新たなパズルや開発者コメンタリーといったコンテンツ追加もおこなわれている。
また『Braid, Anniversary Edition』では、新規追加のコメンタリー部分も日本語含む多言語に翻訳対応。本編の翻訳テキストについても、オリジナル版から新たな文章へと刷新されている。オリジナル版では、Go Komatsu氏、Atsushi Horiuchi氏、Masato Ishida氏といった複数の日本人名が翻訳者としてクレジットされていた。一方で、リマスター版の翻訳は、米国を拠点とする企業であるLionbridgeが担当しているようだ。
本作に向けて日本時間6月1日、新たなアップデートが配信された。同アップデートのパッチノートでは、ウルトラワイドモニターへの対応やコメンタリー等の調整のほか、「戻せる部分について、オリジナル版の本編翻訳を復元した」とされている。その理由は、作中の文章について、オリジナル版の翻訳の方が全体的に質が良いと見られるため、とのこと。
この“翻訳巻き戻し”の対応言語は、日本語のほかフランス語・ドイツ語・イタリア語・韓国語・スペイン語・中国語(繁体字/簡体字)が対象。すなわち、オリジナル版『Braid』が対応していたほぼ全言語(ポルトガル語を除く)のテキストが、今回「前の方が質がよかった」として復活したわけだ。
『Braid, Anniversary Edition』においては、複数言語圏のユーザーより「文章が固く、機械翻訳のようである」といった指摘が寄せられていた。日本語版においても同様の状況があり、国内ゲーム翻訳者のnicolith氏が自身のXアカウントにおいて、本作の翻訳テキストの質について指摘。Steamにて、開発者に対する旧訳復活対応の要望スレッドを立てるといった活動をしていた。
そうした、リマスター版での新規翻訳に対する不評を背景として、今回のオリジナル版翻訳への巻き戻し対応がおこなわれたと見られる。なお、巻き戻されたのはあくまで本編の翻訳テキストであり、オリジナル版に存在しなかったコメンタリーなどの翻訳テキストは据え置きと見られる。とはいえ、コミュニティでは今回の対応を歓迎する声も、SNS上などで散見されるようだ。
翻訳の質に対する指摘を受けて、後に改善アップデートが実施された例としては『Kentucky Route Zero』などがある(関連記事)。一方、リマスター化にあたって用意された新翻訳からオリジナル版の翻訳に戻されるのは珍しい事例といえる。いずれにせよ今回の『Braid』も含め、詩的かつ深い文脈をもつ文章が多く盛り込まれた作品は、多言語対応のハードルも相応に高くなる傾向があると見られる。
『Braid, Anniversary Edition』はPC(Steam)PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switchおよび、iOS/Android(Netflix Games)向けに発売中。開発元によれば、今回のアップデートはコンソール版にも後々配信予定とのこと。