ゲーマーは年々「ストラテジー」要素へのモチベを失っているとの調査報告。なぜか戦略要素だけ向かい風

海外ゲーム市場調査会社Quantic Foundry社は、ゲーマーが興味を示す動機についての調査結果を報告した。ゲーマーは戦略的思考や計画に興味を示さなくなってきている傾向にあるという。

海外ゲーム市場調査会社Quantic Foundry社は、9年間にわたり収集した同社によるゲーマーが興味を示す動機についての調査結果を報告した。その中で、ゲーマーは戦略的思考や計画に興味を示さなくなってきている傾向にある、との見解が伝えられている。

Quantic Foundry社は2015年に設立された調査会社だ。同社では「Gamer Motivation Profile」として、世界中で約9年間にわたって170万人以上を対象にしたアンケート調査を元にデータを収集し、アルゴリズムで統計的に分析。ゲームを遊ぶ際に駆り立てられるというモチベーションを「Action(アクション)」や「Creativity(創造性)」など6つに分類。さらにそれぞれを2つずつのカテゴリーに分け、計12のカテゴリーに分類している。そして同社によると、このうちのゲームの「戦略(Strategy)」要素に対するモチベーションが大幅に下降傾向にあるという。

戦略要素へのモチベーション低下

同社によると「戦略」に対するモチベーションが高いゲーマーは慎重な意思決定や計画を必要とするゲームを好み、選択肢や起こりそうな結果を考え抜くことを好む傾向にあるそうだ。主にストラテジーゲームなどで、資源と競合する目標のバランス、外交管理、最適な長期戦略の発見などに関する意思決定を楽しむという。

また同社は「戦略」のモチベーションを満たす具体的なゲームと要素の例として、『XCOM』シリーズや『ファイアーエムブレム』シリーズのようなゲームでの戦術的な戦闘を示している。また『Sid Meier’s Civilization』シリーズや『Cities: Skylines』のようなシミュレーションゲームで、綿密に練った計画が実現するのを見ることにも喜びを見出す傾向があるとのことだ。

そしてQuantic Foundry社が集積した、中国を除く世界中のゲーマー157万人のデータでは、ゲームの「戦略」要素に興味をもつゲーマーが減少傾向にあることが判明した。「戦略」要素に対するゲーマーのモチベーションのスコアとして、2016年のデータの標準値を基準として(50パーセンタイルとして)比較した際、2024年4月時点の「戦略」に対するモチベーションの標準値のスコアは33パーセンタイルまで低下。年々ゲーマーが「戦略」要素への興味を失ってきた傾向を示している。

なお同社によると、ほかの11の動機の長期的な傾向を調べたところ、多くの動機は過去9年間大きな傾向の変化はなく安定しているとのこと。「戦略」要素へのモチベーションだけが突出して下降傾向にあるという。

「戦略」に対するモチベーションが突出して低下していることについて、Quantic Foundry社は複数の視点から分析を試みている。しかしたとえば男性と女性、または米国のゲーマーと米国外のゲーマーといった条件で比較したものの、明確な違いを見つけることはできなかったという。なおレポートでは、昨今「注意力の低下」の要因としてやり玉にあげられがちなソーシャルメディアについても言及。相関的に注意力の低下に繋がっている可能性を示す先行調査はあるものの、具体的な因果関係を特定することは困難であるとしている。

戦略ゲームは時間がかかる?

今回のQuantic Foundry社のレポートではゲームの「戦略」要素へのやる気が失われている原因までは説明づけられていない。一方で原因のひとつとして年々ゲーマーがひとつのゲームに割くことのできる時間が減少している傾向は関わっているかもしれない。たとえば市場調査会社Newzooのレポート「PC & Console Gaming Report 2024」では、ユーザーによるゲームの平均プレイ時間が2021年第1四半期から26%もの減少を見せたことが伝えられている。さらに同レポートでは、プレイ時間の多くを、新作ゲームではなくライブサービス型ゲームをはじめとする数年前のゲームが占めていることが明かされていた(関連記事)。

そして直近ではDevolver Digitalの共同設立者兼チーフマーケティングオフィサーであるNigel Lowrie氏が、最近ではユーザーがライブサービスゲームに夢中になっている傾向があると言及。さまざまな大作ゲームがリリースされていてもユーザーが(買い切り型)ゲームに割ける時間はあまり多くなくなっているとの見解を述べていた(GamesIndustry.biz)。市場調査や業界人の目線で、ライブサービス型ゲームにユーザーの可処分時間が割かれている傾向が示されてきたわけだ。

一方で戦略ゲームでは持ち味を楽しむために長時間のプレイを要するゲームも多い。また1プレイにかかる時間が長かったり、繰り返しプレイできたりといった点から、長時間親しまれている傾向もあるだろう。たとえば先述の『Cities: Skylines』や『Sid Meier’s Civilization VI』のSteamScoutを見ると、100時間以上のプレイ時間を誇るプレイヤーが大量にユーザーレビューを寄せている。このほかにも「戦略」要素が主体の作品はプレイ時間の長いユーザーレビューが多く寄せられる傾向はあり、長時間専念して遊ぶプレイヤーに親しまれやすいといえるかもしれない。そのため先述したようなユーザーの可処分時間の減少傾向が、「戦略」要素主体のゲームにとって向かい風となっている可能性もある。


とはいえ今回のQuantic Foundry社のレポートが示した「戦略」要素への興味が薄れている傾向の明確な原因は不明だ。また直近ではファンタジーSRPG『ユニコーンオーバーロード』や、中世都市づくりシム『Manor Lords』などが非常に高い人気を獲得。「戦略」要素主体のゲームも、根強い人気もあるジャンルといえるだろう。いずれにせよ、ゲームの「戦略」要素だけが向かい風という今回の調査報告は興味深く、今後業界で検討されていくかどうかも注目される。

Jun Namba
Jun Namba

埼玉生まれBioWare育ちです。悪そうなやつはだいたいおま国でした。RPG全般が好きですが、下手の横好きでいろいろなジャンルに手を出しています。

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