『スーパーマリオ64』のAボタン禁止RTA、「86時間」かけてついに達成。ジャンプなしでクリアする方法は“約3日間待機”
『スーパーマリオ64』ではシンプルにクリアまでの時間を競うRTA(リアルタイムアタック)のほか、スターを一切取らなかったり、目隠しをしたりといった風変わりな条件付きRTAも盛んなタイトルだ。そんな挑戦のひとつである“Aボタン縛り”で本作をクリアするという試みが、5月21日にあるプレイヤーによって達成された。
『スーパーマリオ64』は1996年にNINTENDO64向けに発売された3Dアクションゲームだ。同作は広く人気を博し、任天堂の他機種に向けてもリメイク/移植などがおこなわれてきた。
本作においては「いかにAボタンを押さずにクリアできるか」に挑戦するABC(A-button Challenge)なる試みが存在。今回、そうした挑戦の一環として『スーパーマリオ64』のWii向けのバーチャルコンソール版(以下、Wii VC版)にて、Aボタンをゲーム内で一度も押さずにクリアしたプレイヤーが現れた。本作において、Aボタンはジャンプや走り幅跳び、泳ぎ、金網に捕まるなどといったアクションをおこなうのに必要なボタン。さまざまな局面で必要になるボタンを封じてクリアに至ったわけだ。クリアを果たしたのはMarbler氏。同氏はたびたび“Aボタン縛り”に挑戦しており、今回のランは5月18日から開始していた。
Aボタンを使わずに本作をクリアするには、多くの段差をジャンプせずに超える必要がある。この課題は、走りつつBボタンを押して出すことのできる「ボディアタック」中に再度Bボタンを押すことで解決されている。そうするとボディアタックの動作を中断し、Aボタンを1回押す程度のジャンプ高度を稼ぐことができるのだ。ほかにもスタートボタンを押しつつアクションをおこなうことで、高度を稼いだり急な坂を登ったりすることができるテクニックも用いられている。
なお本作では全120枚のスターが存在しているが、最後のステージとなる「てんくうのたたかい!」をクリアするだけであれば、スターは70枚で十分。主にAボタンの代わりにBボタンを駆使しつつ、獲得できる範囲でのスターを集めてクリアするチャレンジとなっていた。
しかしながら、挑戦において避けては通れないステージも存在する。それはクッパが出てくるステージだ。本作では「やみのせかいのクッパ」「ほのおのうみのクッパ」「てんくうのたたかい!」にてクッパが登場する。うち前半の2つは、ピーチ城の次の階層に通じる扉を開ける鍵を獲得できるステージとなっている。そのため、壁抜けなどで扉をスキップしない限りは、クッパの登場するステージもクリアする必要があるわけだ。
ここで、「ほのおのうみのクッパ」では、ステージ中盤でポールを使わないといけない場面が登場する。ポールから降りるにはAボタンを使う必要があり、同ステージのクリアに、絶対に一度はAボタンを押さねばならない、と目されていた。しかしWii VC版では、システム上の計算のずれを起因として、ステージ内の浮き沈みする足場が時間とともに少しずつ上昇することが発見された。2018年には、この現象を利用して“約3日”待つことにより、Aボタンなしでも「ほのおのうみのクッパ」がクリアできることが判明(関連記事)。このことによりWii VC版では理論上Aボタンを一切押さずにクリアできることが立証されたのだ。
Marbler氏もこの“約3日待機”走法を取り入れており、今回のランでも使用されている。4時間ほどでスター49枚を集めた同氏は「ほのおのうみのクッパ」へと突入。以後約78時間にわたる“足場上昇”への期間に突入することとなる。同氏のTwitchチャンネルにおいては数時間~数十時間にわたる足場上昇配信のアーカイブが複数記録されており、本チャレンジにおける「ほのおのうみのクッパ」の比重の大きさがうかがえる。
そして5月21日、およそ78時間を経て、足場はついに必要な高さまで上昇。ミスしてしまえばまたやり直しとなるため、Marbler氏も緊張していた様子。セットアップに不安があったようで、ボディアタックで無事に足場に乗り継いだ瞬間には、同氏も息をのんだようだ。
ようやく難関を乗り越えたMarbler氏はクッパ撃破後、みずびたシティーやたかいたかいマウンテンなどを巡りつつ、残る21枚のスターを回収。そしてラン開始から約85時間かけ、「てんくうのたたかい!」へと到達。Marbler氏はラスボスとなるクッパを倒した際には、何度も「It’s done!(終わったよ!)」と言い、喜びをあらわにした。記録は86時間48分30秒だった。
『スーパーマリオ64』については、根強い人気のスター120枚RTAのほか、目隠しクリアRTAといったさまざまな条件下での挑戦や研究がおこなわれており、現在でも活発にコミュニティが活動しているタイトルといえる。今回おこなわれた“Aボタン縛り”RTAもそうしたうちのひとつであり、長らく挑戦を続け知識を集積してきたコミュニティの執念と熱意が生み出した記録といえそうだ。