「Nintendo Switchは特にインディーゲームが売りやすい機種」とDevolverのマーケティング責任者が分析。コンセプトやアイデアで勝負しやすい

 

Devolver Digitalの共同設立者であるNigel Lowrie氏が海外メディアGamesIndustry.bizに伝えたところによると、Nintendo Switchではインディーゲームに関心をもつユーザーがPlayStation/Xboxよりも多い傾向があるという。

Devolver Digitalは、米国に拠点を置くゲームパブリッシャー兼映画配給会社だ。ゲーム事業においては小規模開発と区分される作品を中心に、『Hotline Miami』や『Inscryption』、『Cult of the Lamb』など数々のヒットタイトルの販売を手がけてきた。


今回同社の共同設立者兼チーフマーケティングオフィサーを務めるNigel Lowrie氏に向けて、GamesIndustry.bizがインタビューを実施。同氏によりコンソール市場における小規模開発ゲームの動向など、さまざまな見解が語られている。

まずGamesIndustry.bizによれば、ゲーム開発者向けイベント「Game Developers Conference 2024(GDC 2024)」では、自分の作品をPS/Xboxには展開しないと語るインディー開発者も見受けられたという。PS/Xboxではインディー向けのサブスクリプションサービスでの提供を契約できなければ見込める売上が少なくなることが理由とされていたようだ。

また同誌は、PS/Xboxにおいてはストアページ上で有料の広告枠が存在していることも伝えている。Nigel氏によれば、Devolver Digitalのようなパブリッシャーがいなければ広告担当者との関わりももてず、小規模デベロッパーにとっては売り込みづらい状況に繋がっているとのこと。そうした背景もあり、PS/XboxよりもNintendo Switchの方が「インディーゲームの販売向き」であるとNigel氏は見ているようだ。

ただしNigel氏によると、PlayStationやXboxでもインディーゲームを好きなユーザーは多く、実際Devolver Digitalがパブリッシングを務める『Cult of the Lamb』も両プラットフォームで好調な売上を見せたという。しかしPS/Xboxのユーザーはコンソールの性能をフルに活用するようなタイトルを目当てにする傾向もあるとのこと。そのため同氏によれば、たとえばPSにおいては直近では『Destiny』シリーズや『HELLDIVERS 2』、Xboxにおいては『Starfield』などのタイトルが、各プラットフォームによる宣伝で強く押し出されていると考えているようだ。先述のように有料広告枠の存在もあるとみられ、ストア上では広告予算の少ないインディーゲームの周知が難しい状況もあるのだろう。

『Cult of the Lamb』

Nigel氏は、各プラットフォーマーはインディーゲームを支持して売り出してくれているとも言及。ただPSやXboxにおいては、インディーゲームに興味をもつようなユーザーはDevolver Digitalが望むよりも少ないとしている。

一方でNigel氏によればNintendo Switchでは面白いコンセプトやゲームプレイのアイデアを受け入れてくれるユーザーベースがあるといい、インディーゲームにとってコンソールでは一線を画する市場となっているようだ。たとえば本稿執筆時点でのニンテンドーeショップのダウンロード専用ソフトランキングを見てみると『8番出口』や『スイカゲーム』、『偽夢』といった小規模開発と区分される作品も名を連ねていることがわかる。

Nintendo Switchでは2017年のリリース当初からインディーゲームを強く押し出す方針が打ち出されてきた。たとえば海外向けには2017年内に60本以上のインディーゲームが発売されることが発表。その後も公式番組「Indie World」が配信されさまざまな新作インディーゲームが紹介されるなど、任天堂はそれまで以上にインディーゲーム展開に積極的な姿勢をみせてきた。

またNintendo SwitchではWii U以前よりも開発キットが安価になったことや、任天堂がより緊密にインディーデベロッパーとの連携をおこなう傾向になったことも伝えられていた(The Verge)。このほか2016年から毎年国内のインディーゲームイベントBitSummitに任天堂ブースが出展されるなど、同社がさまざまな側面からインディーシーンに熱を入れてきたことがうかがえる。


なおPSにおいても吉田修平氏が率いるインディーズ イニシアチブによりインディーゲームデベロッパーへの発掘・支援がおこなわれてきたほか、PlayStation Indiesとしてリリースされた作品も存在。またXboxでもインディー開発者向けプログラムID@Xboxが用意されているほか、サブスクリプションサービスXbox Game Pass向けに積極的にインディーゲームが提供されるなど、各社でさまざまな取り組みがおこなわれてきた。

そうした施策もあってか、小規模開発ゲームはSteamなどPC向けの展開が主流ながらも、近年では積極的にコンソールにも展開されている。その中でNintendo Switchではローンチ時から特にインディー作品が押し出されてきたこともあり関心の強いユーザーベースが形成されたようで、現時点ではインディーゲーム開発者・販売元からコンソールのなかでひと際重視されている状況もあるようだ。今回数々のインディーゲームを手がけるパブリッシャーDevolver Digitalのマーケティングを率いるNigel氏からそうした見解が語られたことも興味深い。

なおNintendo Switchは後継機が今期中、つまり2025年3月末までに発表予定。後継機においても今と同様の戦略がとられるのか、あるいはさらに強化されていくのかは注目されるところだろう。