ゲーム開発者の間で「自作ゲームの内部数値を1000倍にする」遊びが流行している。X(旧Twitter)におけるとあるポストを発端として、巨大数値がゲーム内で巻き起こす異常挙動がさまざま投稿されている。
ビデオゲームでは、さまざまな数値がプログラム内で管理されている。プレイヤーキャラの攻撃力・HPといった基礎的なステータスのほか、キャラのジャンプ力・移動速度・描画エフェクトの派手さなど、ゲーム内で起こるすべては数値の変化によって管理されている。現在X上にて多くのゲーム開発者たちが、自作ゲームの数値をあえて1000倍に巨大化し、発生する異常挙動を投稿・共有している。
“自作ゲーム1000倍化”が広まった発端と見られるのは、ゲーム開発者Tyler Glaiel氏による上述の投稿だ。同氏は『The Binding of Isaac』を手がけたEdmund McMillen氏とのタッグでの活動でも知られ、現在両名のタッグにてRPG『Mewgenics』を開発中。Glaiel氏は今回の投稿にて、「ゲーム開発の息抜きとして、自分が開発しているゲームの数値を1000倍にして結果を見せてほしい」と開発者向けに呼びかけた。例として、『Mewgenics』にて敵を倒した際に飛び散る「肉片の数」を1000倍にした様子の動画を投稿している。
Glaiel氏の呼びかけを受けて、多くのゲーム開発者たちが反応。Massive Monsterにてアートディレクターを務めるJames Pearmain氏は、同スタジオ開発のカルト運営ローグライト『Cult of the Lamb』を1000倍化。ゲームスピードを1000倍とした様子を共有している。ゲーム内時間を示す右上の時計の針は、身震いするようなスピードで回転。信者たちが飢餓のためか次々に倒れていく異常事態が映し出されている。
視覚的に派手なのが、「オブジェクトの数を増やす1000倍化」だ。たとえばアクションゲーム『Tossdown』を開発中のFer氏は、空中から降り注ぐミサイルの量を1000倍にした様子を共有。もはや何がなんだかわからない爆発の海となっている。釣りアドベンチャーゲーム『Fisherman’s Palace』公式Xアカウントは、同作の魚の量を1000倍に。大量の魚影がうようよと釣り針に向かうさまには若干の恐怖も覚える。
ほか、対戦格闘ゲーム『Combo Devils』開発元はあるキャラの攻撃のふっとばし力を1000倍化し、相手キャラがスーパーボールのように壁の間を往復して叩きつけられる凄まじい様子を共有している。
そして不用意な「1000倍化」は、ゲームプレイやパフォーマンスにも多大な影響を与える。寿司屋を救うアドベンチャーゲーム『Sushi Ben』を手がけるBig Brane StudiosのKane Tyler氏は、ゲーム内で「ネコ5000匹」を描画。ネコのビッグウェーブが道路を埋め尽くす様子を共有している。しかし、同氏のPCでは5000匹のネコの描画に耐えきれなかったという。
ほかにも、SFレースゲーム『Aero GPX』ではブーストパワーを1000倍化し時速1万キロオーバーの世界に。開発者は操作に難儀したと伝えている。一人称視点ホラーゲーム『3 Shots Left』は歩行による一人称視点の揺れを1000倍にして、視界が激しく上下動しプレイ困難な様相になっている。
当然のことながら1000倍化する数値によっては、ゲームそのものが“壊れて”しまうことがわかる。そうした常軌を逸したゲーム挙動は、思わず笑ってしまう魅力もあるようだ。Glaiel氏の投稿には、ほかにも多数の「1000倍化」報告が寄せられているため、気になる方はチェックしてみるとよいだろう。