『Escape from Tarkov』開発元トップ、“コピー作品”とそれを遊ぶプレイヤーに苦言。次々出てくるリアル志向脱出FPSを受けて

『Escape from Tarkov』の開発元Battlestate Gamesの代表を務めるNikita Buyanov氏は5月9日、Xアカウントにて声明を投稿。“同作を模倣するゲーム”が存在するとして、苦言を呈している。

『Escape from Tarkov』の開発元Battlestate Gamesの代表を務めるNikita Buyanov氏は5月9日、Xアカウントにて声明を投稿。“同作を模倣するゲーム”が存在するとして、苦言を呈している。

『Escape from Tarkov』

『Escape from Tarkov』は、PvPvE要素をもつハードコアサバイバルFPSだ。舞台となるのは、政治的混乱から無法地帯となり隔離された架空の都市Tarkov。通常ゲームモードではプレイヤーはソロまたはフレンドと部隊を組んでマッチに参加し、NPCやほかのプレイヤーと戦いつつマップからの脱出を目指す。死亡した場合、保険をかけていなかったり、ほかのプレイヤーに持ち去られたりすると持ち物や装備をロストするハードコアなゲームルールも特徴だ。

本作の開発を手がけるのはロシアに拠点を置くBattlestate Games。本作は2016年12月にクローズドアルファ版として公開され、2017年7月からはクローズドベータ版として公式サイト上での予約購入者向けに提供されてきた。クローズドベータ段階ながら特徴的なゲームプレイからストリーミング配信なども巻き込んで人気を博しており、脱出型PvPvEゲームの先駆けのひとつといえるゲームだ。


“模倣作品”を遊ぶかどうかはプレイヤー次第

今回、Battlestate Gamesの代表兼本作のゲームディレクターを務めるNikita Buyanov氏がXアカウントにて声明を投稿した。同氏は「黙っていたかったが」と前置きつつ、本作を模倣するゲームが存在すると言及。そうした作品をサポートしてプレイし続けるかどうかはユーザー次第だとして、模倣作品とするゲームやそのプレイヤーに対して苦言を呈している。


声明にて具体的なタイトルは述べられていないものの、Nikita氏は続くポストでソースコードとみられるスクリーンショットを投稿している。これを見るに、本日よりクローズドベータテストが実施され、『Escape from Tarkov』のソースコードが盗用されている可能性が報告されているハードコア脱出型FPS『ArenaBreakout: Infinite』に関する言及とみられる。ゲームプレイも類似しており、ソースコードの盗用も疑われる作品を遊ばないように呼びかけたかたちだろう。


『Escape from Tarkov』からの“乗り換え”

このほか直近では『Gray Zone Warfare』などの作品が『Escape from Tarkov』になぞらえられつつ注目を集めている。同作は4月30日にPC(Steam)にて早期アクセス配信開始された、オープンワールドMMOFPSだ。同作の舞台は3社のPMC(民間軍事会社)が軍事基地を設ける架空の島国。PMCはそれぞれ違った場所に軍事基地を設立しており、選んだ陣営によって拠点となる場所が変わってくる。プレイヤーは輸送ヘリに乗り込んで移動し、任務を実行。戦闘や収集をこなして脱出地点にヘリを呼び、基地まで帰投することを目指す。

本作では写実的なグラフィックのほか、銃のパーツのカスタマイズや現実的にシミュレートされているという弾道などリアリスティックなシステムが特徴。また戦闘において被弾した部位は負傷し、止血や治療の必要性が生じる。一方で弾が急所にあたると即死することもあるほか、死亡すると装備の回収に行かないと取り戻せないハードコアなバランスも特徴となっている。そうしたシステムから、『Escape from Tarkov』になぞらえる声も散見される作品となっている。

『Gray Zone Warfare』は早期アクセス配信開始後すぐさま人気を博し、最大同時接続プレイヤー数は7万2548人を記録(SteamDB)。直近でも連日数万人のプレイヤー数を維持している。発売4日後となる5月4日には売上50万本を達成したことが報告されており、サーバー問題などの課題を抱えつつも、絶好調なスタートを見せている作品だ。

『Gray Zone Warfare』

そして『Gray Zone Warfare』が高い人気を獲得している要因のひとつには、早期アクセス配信開始された“タイミング”もあるかもしれない。というのも同作の早期アクセス配信開始直前となる4月25日には、『Escape from Tarkov』にて新エディションとなる「The Unheard Edition」が発売。今年1月に販売終了した「Edge of Darkness Limited Edition」(以下、EoD)に代わる豪華版となっている。そして新モードである「PvE Co-opモード」が当初は「The Unheard Edition」限定のコンテンツとして実装され、「EoD」購入者も追加の支払いが必要となった。

過去に「EoD」が完全版のように販売されていたにもかかわらず、後出しで新たな支払いの必要があるコンテンツが登場した点にはユーザーやストリーマーを中心に多数の批判が寄せられていた。結果としてBattlestate Gamesは「EoD」購入者への“補填”をおこなうことを発表。さらに後日にはコミュニティへの謝罪と共に「PvE Co-opモード」もサーバー容量を確保しつつ段階的に「EoD」購入者向けに開放していくことを表明した。しかし一部ユーザーからは、突然新たな支払いが必要になるコンテンツが登場した点や、当初「PvE Co-opモードはDLCではない」といった見解を曲げなかった公式への疑念の声も引き続き投じられている。

そうしたなかで、新たに登場した『Gray Zone Warfare』への“乗り換え”を表明するユーザーも存在。またTwitchなどでは、過去に『Escape from Tarkov』を配信していた国内外のストリーマーがこぞって『Gray Zone Warfare』をプレイしている様子も見られる。類似した要素をもつ点から、試しに遊んでみる『Escape from Tarkov』のプレイヤーやストリーマーは多いのだろう。

『Gray Zone Warfare』

なお『Gray Zone Warfare』では、PvPの戦闘が起こりやすい『Escape from Tarkov』よりもPvE要素が主体といえるシステムになっている。そうした点は『Escape from Tarkov』が苦手だったとするプレイヤーも含め、ユーザーから本作の持ち味として評価されている様子も見られる。また本作のユーザーレビューでは『Arma 3』などになぞらえる声も散見され、一見『Escape from Tarkov』のようでひと味違うリアル志向シューターとする意見も寄せられている。

このほか、このタイミングで脱出型シューターである『Project L33T』がクローズドベータテストを実施。『Escape from Tarkov』の人気ストリーマーであるLVNDMARK氏などがその様子を配信し、注目を集めていた。『Escape from Tarkov』のコミュニティで騒動が起こったタイミングで、類似要素のあるシューターが次々と話題を博している状況といえる。ちなみに4月11日にはPvE特化の脱出型シューター『Incursion Red River』が早期アクセス配信開始され、こちらも人気を博していた(関連記事)。

『Incursion Red River』

先述のとおりNikita氏は“模倣作品”の具体的なタイトルを示していないものの、模倣作品として指摘したのは『Arena Breakout: Infinite』とみられる。一方で、直近ではリアル志向のFPSとして新作が連続してリリースされ注目を集めていた状況もある。さらにはソースコードの盗用まで疑われる作品が出現し、「黙っていられず」声明を投じた格好だろう。

ちなみにNikita氏は続くポストにて、『Escape from Tarkov』の正式リリースに向けて取り組むことや果たすべき約束が数多く残っているとして、精力的に開発を続けていくことを表明している。4月25日の「The Unheard Edition」発売からの2週間は困難な時期であったとしつつも、気持ちを切り替えて『Escape from Tarkov』の将来に目を向けているようだ。脱出型ジャンルの作品がさまざまリリースされてきたなかで確固たる人気を誇ってきた『Escape from Tarkov』が、新たな競合作品も現れるなかで今後どのように運営されていくのかも注目される。

【UPDATE 2024/5/9 20:28】
Nikita氏の投稿が『Arena Breakout: Infinite』に向けた言及とみられる可能性を追記

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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