Tango GameworksとArkane Austin、「どちらも新作開発スタート前に閉鎖された」との報道。タイミングが悪かった説

Tango GameworksとArkane Austinの閉鎖について、閉鎖前の両スタジオでは新作の開発プロジェクトが企画段階にあったことが報じられている。

先日5月7日、マイクロソフトが傘下のBethesda Softworks(以下、Bethesda)にて人員削減を実施することが報じられた。さらに、BethesdaおよびZeniMax Media(以下、ZeniMax)が擁する4つのスタジオが閉鎖されることが発表・報道されている。閉鎖となったのはTango GameworksとArkane Austin、Alpha Dog Games、Roundhouse Studiosだ。

『Hi-Fi RUSH』

Tango Gameworksは、東京に拠点を構えるゲームスタジオだ。元カプコンの三上真司氏によって2010年に設立。ZeniMaxの傘下スタジオとして、Bethesdaをパブリッシャーとしゲームをリリース。『サイコブレイク』シリーズに始まり、『Ghostwire: Tokyo』や『Hi-Fi RUSH』といった個性的な作品をリリースしていた。

またArkane Austinは、ZeniMax傘下のArkane Studiosのスタジオのひとつ。Arkane Studiosはフランス・Lyonの本拠スタジオのほかに、アメリカ・テキサスのAustinにスタジオを構えていたかたちだ。Arkane Lyonでは『Dishonored』シリーズや『DEATHLOOP』が、Arkane Austinでは『Prey』リブート版や『Redfall』などが開発されてきた。

『Redfall』

そんな両スタジオは、閉鎖前に新プロジェクトが企画されている段階にあったという。海外メディアBloombergが伝えるところによると、Xbox Game Studiosの責任者であるMatt Booty氏は現地時間5月8日の朝、ZeniMaxのスタッフを集めてミーティングを実施。同氏は、ZeniMax傘下のスタジオが「パンにピーナツバターを塗るように」手薄になっており、各部門のリーダーは人員不足を感じていた状況があったという。ほかの部分でのリソースを確保するためにスタジオの閉鎖が決定されたとのこと。

またBethesdaおよびマイクロソフトのCasual Game Studios部門責任者兼バイスプレジデントを務めるJill Braff氏は、「すべきことが増え続ける中で、手薄な本部チームが世界中にある9つのスタジオをサポートするのは難しかった」との見解を説明。組織再編によってより少数のプロジェクトに集中できるようになったとしている。

『Hi-Fi RUSH』

このほかBloombergが匿名の関係者証言として伝えるところによると、閉鎖前にTango Gameworksは『Hi-Fi RUSH』の続編の企画を進めていたという。またArkane Austinも『Dishonored』シリーズの新作など、シングルプレイのいわゆるイマーシブシム(攻略アプローチが多彩なゲーム)の企画を売り込んでおり、Arkane  Studiosとしての原点回帰を目指していたとのこと。両スタジオはそうした新プロジェクトを立ち上げるために人員補充も検討していたそうだ。

プロジェクトが本格的に始動していればスタジオを突然閉鎖するといった決定も下しにくいだろう。両スタジオともに新作開発の本格スタート前であったというタイミングも、閉鎖に繋がった一因かもしれない。

ちなみにTango Gameworksの設立者であり昨年同スタジオを退職した三上真司氏は「若手にチャンスを与えるサイクルを早めたい」「一から興す会社で思う存分やりたかった」といった理由から、同スタジオを辞めたいと思ったタイミングが「8年前ぐらい」であったと語っていた。この間には複数のプロジェクトが走っていたこともあり辞め時がなかったそうで、『Hi-Fi RUSH』の昨年1月の発売で、Tango Gameworkにとって進行中のプロジェクトが一段落を見せた節目となっていたことも伺える。


なおThe Vergeによれば、Matt氏はミーティングにおいて「名声や賞を与えてくれる小規模開発ゲームが必要(We need smaller games that give us prestige and awards)」といった方針も伝えていたという。一方、今回閉鎖となったTango Gameworksの『Hi-Fi RUSH』は昨年から今年にかけてのゲームアワードで複数の賞を獲得していた。Matt氏のコメントが真実ならば、『Hi-Fi RUSH』を手がけたTango Gameworksの閉鎖には矛盾が生じる。

新たな実績を上げたばかりのスタジオであり次回作も期待されていたものの、次回作の完成まで待てないといった経営方針もあったのかもしれない。また本部チームがサポートしづらいという点で、スタジオが日本に拠点を構えていたことも、閉鎖の一因とみられる。

ちなみにArkane Austinについては昨年5月にリリースされた『Redfall』は品質面などに課題を抱え、アップデートや新規コンテンツの開発が進められていた(関連記事)。今回のミーティングにおいてMatt氏は、同スタジオの閉鎖は同作の出来とは関係ないことを明言していたそうだ。

いずれにせよ、実績ある複数のスタジオの突然の閉鎖を受けて、ファンや業界人からは驚きや落胆の声も寄せられている状況にある。今回の報道ではTango GameworksやArkane Austinが“新作開発前だった”といったタイミングも閉鎖の一因になった可能性もうかがえる。また目標として掲げられたという「名声や賞を与えてくれる小規模開発ゲーム」が、新たな体制でどのように作り出されていくのか注目される。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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