都市づくりゲーム『Manor Lords』が「一人で作ったゲーム」としてPRされていることに同業他社が困惑。比較されるし、スタッフロールは“一人”ではないとして

Slavic Magicが手がける『Manor Lords』は公式サイトなどで、“個人開発”されているゲームとして宣伝されている。このことに関連してか、別のゲームでは開発スピードが遅いとする批判が生じているという。

ポーランドの開発者Greg Styczeń氏によるスタジオSlavic Magicが手がける『Manor Lords』は公式サイトなどで、“個人開発”されているゲームとして宣伝されている。このことに関連してか、チーム開発されている別のゲーム『Farthest Frontier』には開発スピードが遅いとする批判が生じているという。『Farthest Frontier』の開発元Crate EntertainmentのCEOであるArthur Bruno氏が、海外メディアPC Gamerに伝えている。

『Manor Lords』は、14世紀のドイツ・フランケン地方をモチーフにした世界を舞台にする都市建設・戦略ゲームだ。本作にてプレイヤーは中世を生きる領主となり、未開の地を開拓。土地ごとの特徴にあわせていくつもの集落を築き、活気ある街へと発展させていく。また、本作にはほかの地域との交易といった外交要素も用意。領土をめぐって戦争が勃発することもあり、プレイヤーはリアルタイムで展開する戦略バトルを制することになる。

『Manor Lords』

個人開発との宣伝アピールと思わぬ弊害

本作を手がけるのはポーランドの開発者Greg Styczeń氏によるスタジオSlavic Magicだ。本作公式サイトなどでは、開発者が一人で手がけてきたこと(Hand crafted by a solo developer)がアピールされている。このことについて、同じく中世を舞台とする都市づくりゲームであり、早期アクセス配信中の『Farthest Frontier』の開発元Crate EntertainmentのCEOであるArthur Bruno氏が言及。PC Gamerが同氏との通話の内容として伝えるところでは、『Manor Lords』が個人開発作品と宣伝されていることから生じたとみられる“弊害”が吐露されている。

『Farthest Frontier』は2022年8月の早期アクセス配信開始以降、数か月に一度のペースでアップデートが続けられてきた。Steamの本作公式ニュースなどではアップデートの開発状況も都度伝えられており、特段アップデート間隔が遅い、あるいは開発状況が不透明というわけでもないだろう。

にもかかわらず、Bruno氏によると『Farthest Frontier』のSteamユーザーレビューでは、アップデートを実施してからわずか2週間後に「開発を放棄したのか」といった不評レビューが寄せられるという。つまりアップデートのペースが遅いとする不満だろう。またそうしたレビューはいつも投じられている(We get that all the time)といい、これまでにも同作の開発が“遅い”とする意見が寄せられてきた状況もあるようだ。

『Farthest Frontier』

またBruno氏によると、『Farthest Frontier』がCrate Entertainment全体で作られているとの誤解や、60人規模で開発されているとの憶測に基づく批判もあったという。そうした状況もあり、同氏はこうした批判が寄せられるようになった要因として『Manor Lords』が個人開発とアピールされていることがあるのではないかと考えているようだ。なおBruno氏によると『Farthest Frontier』の開発チームは7人とのこと。


そもそも個人開発なのか

『Manor Lords』も『Farthest Frontier』も中世の都市づくりゲームという点でジャンルが共通している作品だ。いずれも戦闘要素を含む戦略性や、美麗なグラフィックで中世都市を構築できる点などが特徴となっている。そのため『Manor Lords』を“個人”で開発できるのであれば、チームで開発されている『Farthest Frontier』はもっとスムーズに開発が進むはず、といった憶測が“開発が遅い”とする批判に繋がった可能性はある。

一方でBruno氏はそうした意見への反論として、厳密には『Manor Lords』の“開発に携っている人間が一人ではない”点を強調している。実際、『Manor Lords』のスタッフロールでは、Greg Styczeń氏のほかにも追加プログラミング(Extra Programming)、3Dアート、アニメーションなどにさまざまなスタッフが携わっていることを確認可能。ゲーム内でもチームによって開発されていることは明言されている。ちなみにBruno氏は、『Manor Lords』のスタッフロールを見ると、『Farthest Frontier』よりもチームの規模が大きいかもしれないとの見解を伝えている。

なお『Manor Lords』には、当初は趣味として個人開発されていたというプロジェクトが、Patreonでユーザーから支援を受けたり、Epic MegaGrantの資金援助を獲得したりして開発が進められてきた経緯がある。引き続き宣伝上は“個人開発”とアピールされているものの、Greg氏を中心としつつも、開発規模が拡大されて外部の協力を受けつつ開発された部分もあるのだろう。

『Manor Lords』

個人開発と標榜されるゲームはさまざまあるものの、プログラミングやアート、音楽などをすべて一人で手がける開発者もいれば、一部が外部委託される場合もあり、開発体制はまちまちだ。外部委託は開発者のビジョンを実現するために専門的な分野をプロに任せる選択であり、『Manor Lords』のほかの個人開発作品でも広くとられている開発方針といえる。

一方で『Manor Lords』では注目を集めてプロジェクトが大規模化したことから外部委託の範囲も拡大していたとみられ、早期アクセス配信開始時点で個人開発とは思えないほどのボリュームや品質をそなえている。このことからチーム開発かつジャンルの似たゲームである『Farthest Frontier』に一部ユーザーが批判を寄せているとみられ、Bruno氏がそうした状況への複雑な思いをこぼしたかたちだ。

そもそも開発規模に関わらず、アップデートのペースを含めた方針は開発元によって異なる。ジャンルが似ているとはいえゲームシステムやコンセプトの違いもあり、開発元の規模が大きい方が開発スピードが早くなるとは限らないだろう。いずれにせよ『Manor Lords』も『Farthest Frontier』も早期アクセス配信中の作品であり、今後正式リリースに向けたブラッシュアップがそれぞれじっくりと進められていくとみられる。ジャンルは共通するもののそれぞれ違った持ち味を備えており、遊び比べてみるのもいいかもしれない。

『Manor Lords』はPC(Steam/GOG.com/Microsoft Store)向けに早期アクセス配信中だ。PC Game Pass向けにも提供されている。

また『Farthest Frontier』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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