SF系ゲームパブリッシャーが新作をEpic Gamesストアで販売するも“意図的に宣伝しなかった”と明かす。Steam配信という「弾」を万全にするため

 

パブリッシャーのStardockは5月1日、Ironclad Gamesが手がける『Sins of a Solar Empire II(ソーラーエンパイアの罪II』をSteam向けに、2024年夏に配信すると発表した。本作は2022年10月より、Epic Gamesストアにて早期アクセス配信が開始されていた。その後正式リリースもされたが、その際特別な告知はおこなわれてこなかった。

Epic Gamesストアでの先行配信は宣伝されず、今回発表されたSteam向けの配信は、広く告知がおこなわれているかたちとなっている。こうした販売戦略がとられた背景には、一度限りのSteamでのリリースには準備が必要だ、という販売元の意向があるようだ。米IGNが報じている。

『Sins of a Solar Empire II』はSFリアルタイムストラテジーゲームだ。Steamストアページの表記によると、Steam版は日本語表示に対応予定である。またソロプレイおよび最大10人のマルチプレイに対応。本作の宇宙には、3つの種族からなる6種類の派閥が登場する。交易を生業とするTECや、集合意思をもつ変異体のアドベントなど、それぞれ違った特徴をもつ派閥が存在。自分の勢力を選び、星系の覇権を巡って争うことになる。

ゲームプレイは、惑星の管理から艦隊同士の戦いまで、ひとつのマップでシームレスにおこなわれる。プレイヤーはマップをズームインやズームアウトしながら、リアルタイムで戦闘を指揮しつつ戦略を練ることになる。また本作に登場する星は公転を続けているため、マップの構造もリアルタイムで変化していく。変わり続ける銀河の状況に対応して艦隊戦闘を制し、敵対勢力を滅ぼして宇宙帝国の皇帝となるのだ。


そんな本作は、2022年10月よりEpic Gamesストアにて、早期アクセス配信が開始されていた。2023年にはEpic Gamesストア内で早期アクセスを脱し正式リリースされたが、特別な告知などはおこなわれてこなかった。海外掲示板Redditでも、「自分は前作のファンでシリーズの動向を追っていたつもりだったのに、続編が出ていたのに気がつかなかった」とする投稿が存在。YouTubeやXの本作公式アカウントでも発売が告知されず、シリーズファンすら発売に気がつかない静かなリリースとなっていた。

そうした展開のなかで、今回Steam向けに本作がリリースされることが発表。ようするに、これまでは時限独占タイトルとしてEpic Gamesストアで販売しており、そうした時限独占の期間などを経てSteamで立ち上がることになったのだろう。しかしSteam展開に際しては、PRの温度感がまったく違う。販売元のStardockがYouTubeでトレイラーを公開し、公式Xアカウントも告知をポスト。さらにプレスリリースを展開するなどこれまでとは打って変わって、広く宣伝活動がおこなわれているかたちとなっている。

いったいなぜ、本作はこれまで宣伝を控えてきたのか。販売元StardockのCEO・Brad Wardell氏 が米IGNに語ったところによると、本作がこれまで宣伝を控えてきたのは、一度限りのSteamでのリリースには準備が必要だと判断したためだという。Epic Gamesは素晴らしいパートナーであり続けているが、ファンの多くはSteamでのリリースを望んでいることはわかっていたとのこと。しかしSteamでリリースするためには、少なくとも前作と同等以上のコンテンツ量の実装が求められると判断したという。そのため、まずEpic Gamesストアで早期アクセスを始めてフィードバックを集めつつも、作品が一定の水準に到達するまでは宣伝をしないことにしたとのことだ。


Steamで作品を多く売り上げるためには、ユーザーレビューの好評率が重要とされることがある。できるだけ高い評価を得たいと考える販売元も少なくないだろう。一方でリリース当初に不具合などが原因で不評レビューが多く集まると、たとえその後アプデで改善されたとしても、評価の挽回が難しくなる傾向もある。

たとえば『No Man’s Sky』は、宣伝内容とコンテンツが見合っていないとして、リリース当初は批判が多く寄せられた。最初の半年で3万件以上の不評レビューが投稿され、評価ステータスは「不評」となっていた。しかし同作はその後アプデを重ねて作品の評価は大きく上昇し、直近30日のレビュー好評率は94%である。とはいえ配信当初の多数の不評が響き、すべてのレビューの評価は78%が好評とする「やや好評」にとどまっている(関連記事)。

そのほかにも、たとえば『サイバーパンク2077』は最適化不足などが課題とされて、リリース当初は不評レビューが多く投稿。直近30日の好評率93%に対して、すべてのレビューの好評率は83%となっている。こうした作品からは、リリース当初に多数の不評が寄せられると、その後に好評を積み上げても、非常に高い好評率を狙うのは難しくなるという傾向がうかがえる。一度不評レビューを投稿した人がアプデを機に戻ってきて、レビューを好評に変えるといった事例は、あまり多くはないのだろう。


本作『Sins of a Solar Empire II』の販売元も、そうしたユーザーレビュー評価などを考慮して、Steamでのリリースに慎重な立場となっているのかもしれない。Steamでリリースして多くの人に作品を届けるには、配信当初から高い完成度が求められるという判断だろう。結果的に本作は、ほとんど宣伝せずにEpic Gamesストアにて早期アクセスを開始。熱心なファンよりフィードバックを集めてアプデを繰り返し、その後Steam向けのリリースが広く発表されるというかたちとなった。

とはいえ、もし時限独占タイトルとしてEpic Gamesが同作をなんらかのかたちで優遇していたとすれば、Steam配信を万全にするためあえて宣伝しなかったという手法を、どのように思うのか気になるところだ。いずれにせよ、同作はSteamで配信される。満を持して宣伝されているSteamでの配信後、本作のユーザー評価やプレイヤー数がどのようになっていくのか。今後の展開が注目されるところだ。

『Sins of a Solar Empire II』はPC(Epic Gamesストア)向けに配信中だ。また2024年夏にSteam向けに配信される予定。Steamストアページの表記によると、Steam版は日本語表示に対応予定だ。