「敵に囲まれたとき、どの敵が優先的にロックオンされるべきか」、あるゲーム開発者の素朴な疑問が楽しげな議論に発展。どのゲームにも工夫あり

とある開発者が「3Dアクションゲームで敵に囲まれた場合、ロックオンボタンでどの敵が最初にロックオンされるべきか」を問うポストを投稿。それをめぐりSNS上ではさまざまな意見が飛び交う興味深い議論が展開されている。

とある開発者が「3Dアクションゲームで敵に囲まれた場合、ロックオンボタンでどの敵が最初にロックオンされるべきか」を問うポストを投稿。それをめぐりSNS上ではさまざまな意見が飛び交う興味深い議論が展開されている。

ロックオンするべき対象とは

三人称視点の3Dアクションゲームで広く搭載されているロックオン、あるいはターゲットシステム。一般的にはロックオンを実行することで、カメラが敵を追尾するようになり、カメラを動かす操作を省いてアクションに集中できる機能といえる。

そんなロックオンシステムの“もどかしい一面”について、ゲーム開発者のBenji氏が具体例を出しながら言及。同氏は、NINTENDO 64における『ゼルダの伝説』シリーズにインスパイアされたという3Dアクションゲーム『Azaran: Islands of the Jinn』を開発している人物だ。同氏が投げかけたのは「敵に囲まれた状態でロックオンボタンを押したとき、どの敵が優先的にロックオンされるべきか」という疑問で、集まった意見を自身のゲーム開発に反映する狙いもあるのかもしれない。この投稿にはユーザーたちがさまざまな意見を出し合っているほか、ゲーム開発者のニカイドウレンジ氏が引用し、国内ユーザーや開発者からも注目を集めている。

投稿においてBenji氏はキャラクターの四方となるABCDの位置に敵がいると仮定。Aはカメラに一番近いが画面外。Bは二番目にカメラに近いがキャラクターの背後。Cはやや遠いがキャラクターの正面。Dはもっとも遠いが、カメラの中心にもっとも近い位置となっている。三人称視点のアクションゲームだけに、プレイヤーキャラクターの向きとプレイヤーが見ているカメラの視点の向きに大きな差が生じたシチュエーションといえる。同氏はこの状態で「ロックオンボタン」を押したとき、どの敵が最優先でロックオンされるのが望ましいのかを訊いている。

この問いに対して、プレイヤー目線でどの敵を優先してロックオンしたいかを返答するかたちで、SNS上では多くの反応と考察が寄せられている。その中でも多く見られるのはCもしくはDの位置の敵が望ましいという意見だ。仮にCもしくはDの位置の敵をロックオンする場合、どのような理由が考えられるだろうか。

何を基準としてロックオン対象を決めるのか

たとえばキャラクターの正面にあたるCの敵をロックオンする場合は、プレイヤーとキャラクターからの距離としてはやや遠いが、キャラクターの向きを優先してロックオンしているといえる。

ちなみに筆者が検証した限りでは『エルデンリング』のロックオンシステムがこちらに該当するとみられる。同作ではプレイヤーキャラの向きが行いたいアクションの方向と一致しており、その向きに応じて戦技や魔法などが放たれる。そのため、プレイヤーキャラクターの向きを重視したロックオンシステムになっているのだろう。

一方で、カメラの中心に近いDをロックオンする場合は、プレイヤーがどこに視点を置いているかを重視しているといえる。カメラの向きとプレイヤーがアクションを行いたい向きが一致しているケースがこれに該当するだろう。

このほかBの位置のようにプレイヤーキャラクターから最も近い位置にいる敵を優先してロックオンしたいという意見もある。このロックオン方式を採用するゲームとして、たとえば『ライズ オブ ローニン』はロックオンの判定が行われたとき、カメラとキャラの向きに関わらず常に一番近い敵を優先してロックオンするようになっている。画面の四方八方から敵が襲ってくるシチュエーションが多い本作では、咄嗟に接近した敵をロックオンしたい場面が多いからだろう。

またこのほか、プレイヤーキャラがどの方向に移動しているかもロックオン優先度に加味すべきとする考えも見られる。ゲーム開発でも、プレイヤーキャラや敵の位置、カメラの向きだけではなく、そのほかの複合的な要素を踏まえて、それぞれのゲームシステムにあったロックオン優先度が決められているようだのだろう。

そもそもロックオンがない場合も

一方で3Dアクションゲームでも作品によっては、そもそもロックオンが存在しない場合もある。『Marvel’s Spider-Man』シリーズや『ゴースト・オブ・ツシマ』などのタイトルが例として挙げられるだろう。これらはいわゆるロックオンボタンを押すことなく、入力した方向にいる敵に自動でプレイヤーキャラクターの攻撃が向けられるようになっている。

またそうしたゲームでは画面外からの攻撃に応じて分かりやすく知らせるインジケーターが用意されることもあり、カメラが敵を捉えていなくてもプレイヤーが攻撃に反応できるつくりになっている場合もある。ほかには『ゴースト・オブ・ツシマ』は敵がカメラ範囲内に入ってきてから攻撃をするようになっており、ロックオンがなくとも自然と戦闘がカメラ範囲内に収まるようになっている。その結果、剣劇シーンを自然と背後だけでなくさまざまな視点からとらえることも可能で、まるで時代劇を見ているかのような画面づくりにも繋がっている。

ロックオンボタンを押したときにどの敵を優先的にロックオンするのか。もしくはロックオンボタンがそもそもないほうがよいのか。ベストな選択はゲームシステムや作品のコンセプトによって変わるとみられ、「どの敵をロックオンすべきか」という疑問に画像ひとつでは明確な答えは出せないかもしれない。とはいえBenji氏の投稿を発端とする議論は興味深く、普段何気なく使っているロックオンボタンが“誰をロックオンするのか”に改めて注目してみるのもいいだろう。

Jun Namba
Jun Namba

埼玉生まれBioWare育ちです。悪そうなやつはだいたいおま国でした。RPG全般が好きですが、下手の横好きでいろいろなジャンルに手を出しています。

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