賛否両論スタートの『No Rest for the Wicked』開発元トップ、“やはり早期アクセスにしてよかった”とどっしり構える。フィードバックは開発に不可欠

Private Divisionは4月19日、『No Rest for the Wicked』を早期アクセス配信開始した。ユーザーからは賛否両論も寄せられているものの、そうしたフィードバックも開発に必要不可欠のようだ。

Private Divisionは4月19日、『No Rest for the Wicked(ノーレスト フォー ザ ウィケッド)』を早期アクセス配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語表示にも対応している。本作はリリース後さっそく多くのプレイヤーが集まる好調なスタートを見せている。

一方、本作のSteamユーザーレビューでは課題点もさまざま指摘されている。ただ早期アクセスとしてフィードバックを受けながら開発する方針は想定どおりのようで、開発元CEOは改めて「早期アクセスとしてリリースしたことは最善の選択だった」との考えを明かしている。


『No Rest for the Wicked』は、疫病が蔓延する世界を舞台にする、見下ろし型視点のアクションRPGだ。841年にハロル国王が崩御し、傲慢で未熟な王子マグナスに王位が継承された。時を同じくして、ペスティレンスと呼ばれる疫病が大陸中に蔓延。さらに政治闘争が勃発するなか、主人公の聖戦士セリムは、疫病を鎮めるべく辺境の地サクラ島へと向かう。

本作の開発元Moon Studiosは、2Dメトロイドヴァニア『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』および『Ori and the Will of the Wisps』を手がけ高い評価を獲得したインディースタジオ。両作の成功を受けて、新作ではアクションRPGという別のジャンルに挑戦することとなった。


スタジオ新作は課題点ありの滑り出し

Steamにて4月19日に早期アクセス配信開始された『No Rest for the Wicked』は、最大同時接続プレイヤー数約3万6000人を記録する好調な滑り出しを見せた(SteamDB)。しかしSteamユーザーレビューでは当初「賛否両論」ステータスでのスタートとなり、本稿執筆時点では少し持ち直して約1万4000件中72%が好評とする「やや好評」ステータスとなっている。

好評とするレビューにおいては、美麗なアートワークや着実に装備などを強化して攻略を進めるハクスラ要素などが評価されている。一方で、見下ろし型の固定視点により立体的な移動が必要となる場面がわかりにくい点のほか、相手にすべき敵が多すぎるといったゲームバランス面の課題点も指摘されている。なかには早期アクセスではなく、もっと完成度を高めてからリリースしてほしかった、といった意見も見られる。


早期アクセスだからこそ改善できる

そうして評価面では苦戦もうかがえるなか、Moon StudiosのCEO兼クリエイティブディレクターのThomas Mahler氏がXアカウントにて声明を投稿。本作が早期アクセスとしてリリースされた点について、「リリース後1週間も経たずに最善の決断であったことが明白になった」との考えを伝えている。フィードバックとして課題点が指摘されている状況は、開発チームの想定どおりのようだ。


Thomas氏はまず、本作のほかにも、たとえばSupergiant Gamesが手がける『Hades II』などについて、早期アクセスという開発形態の採用に一部批判がみられることに言及。そうした作品に向けては、過去作で成功を収めてスタジオに資金的な余裕があるにもかかわらず、まず早期アクセスとしてリリースする点への批判的な意見も寄せられているようだ。

一方でThomas氏は、ゲームの内容が複雑化し洗練されるにつれて、何らかのかたちでの早期アクセス配信の必要性は増していくと説明。『No Rest for the Wicked』においても、現状寄せられているようなユーザーからのフィードバックなしには完成させることはできないとしている。たとえ2~3倍規模のスタッフがいても、本作にとってユーザーのフィードバックは不可欠だそうだ。


さらにThomas氏は、早期アクセスという開発形態が一般化する以前のゲームも、早期アクセスをしていれば恩恵を受けていたゲームはあるだろうとの考えを説いている。同氏はフロム・ソフトウェアが手がけた『DARK SOULS』第1作を例に挙げつつ、もし同作が早期アクセスをおこなっていれば、混沌の廃都イザリスなどはもっとブラッシュアップされていただろうとした。

混沌の廃都イザリスは溶岩が広がる高難度エリアだ。PS3版では発売当初、一部の場所では強敵がプレイヤーを見つける範囲が広く、やたら遠くからでも詰めかけてくるといった状況も発生しており、難易度がさらに増していた。そうした状況を受けて発売後にアップデートが配信され、一部敵の配置や索敵範囲が変更。難所を切り抜けやすくなった。Thomas氏は『DARK SOULS』のそうした部分は、もし早期アクセスとして開発されていればよりブラッシュアップされていたと考えているようだ。


早期アクセスへの好みはあれども

またThomas氏は、ゲームをいきなり正式リリースする際の困難さにも言及。特に新しい挑戦をおこなった作品では、大きな妥協を強いられることになるという。後から新機能などを追加・調整してもよい前提がなければ、カットされる要素もあるそうだ。正式リリース後にアップデートやDLCを用意することは難しい場合もあるとのこと。リリース後のアップデートを当初から見込んで、早期アクセスとして配信開始した方がよい場合はあるのだろう。

Thomas氏は、早期アクセスという開発形態を好まない意見がある点にも理解を示しつつ、早期アクセスは開発者がゲームを完成させる方法のひとつであることもわかってほしいとの願いを語った。早期アクセスなしでは作られることもなかったゲームも存在するはずだとして、『No Rest for the Wicked』が早期アクセスという開発形態をとっている点への理解を呼びかけている。また同氏は続けて、PlayStationやNintendo Switch向けのゲームでも早期アクセスをもっと採用すべきとの意見を綴った。


そんな『No Rest for the Wicked』ではすでに複数回のアップデートが配信されており、ユーザーからのフィードバックを受けてバランス調整や不具合修正もおこなわれてきた。アップデートによる迅速な対応にもユーザーからは評価が寄せられており、先述のとおりSteamユーザーレビューステータスでは「賛否両論」のスタートとなったものの、本稿執筆時点では「やや好評」に持ち直している。“フィードバックが不可欠”とする開発方針もあってか、素早く対応がおこなわれているようだ。

早期アクセスという開発形態に一部批判もあるという『No Rest for the Wicked』。特にMoon Studiosのように実績あるスタジオの作品は、早期アクセスではなく完成された状態からすぐに遊びたいといった期待の裏返しでもあるのだろう。また早期アクセスの開発方針は開発元によってまちまちであり、なかなか開発が進展しない懸念などから批判に繋がった側面はあるかもしれない。

その点『No Rest for the Wicked』ではスピーディに課題点への対処が進められているようで、正式リリースに向けた今後のブラッシュアップも注目されるところだろう。なお本作の早期アクセス期間は開発チーム内で「一応決まっている」ものの、ブラッシュアップに応じて変動する可能性があるため未定として伝えられている。今後最大4人のマルチプレイ機能や、PvP要素、大規模な新ストーリー要素などが実装される見込みだ。今後のコンテンツアップデートにも注目したい。

『No Rest for the Wicked(ノー レスト フォー ザ ウィケッド)』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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