ゲームをメインの趣味にする人が増加傾向との調査報告。ただし映画・ドラマからの乗り換えではなく“共存”傾向も

大手Wikiサービスを運営するFandomは3月25日、「Inside Entertainment」と題する研究の結果について発表した。ゲームや娯楽全般が好きな人々に関する統計と流行について掘り下げたものだ。

大手Wikiサービスを運営するFandomは3月25日、「Inside Entertainment」と題する研究の結果について発表した。この研究は、ゲームや娯楽全般が好きな人々に関する統計と流行について掘り下げたものだ。海外メディアのGameSpotが報じている。


テレビ/映画とゲームのどちらに時間を使うか

「Inside Entertainment」のレポートではまず、テレビや映画よりもゲームが躍進してきたといった報道が存在する点に言及。たとえばFast Companyの記事ではコンサルティング会社デロイトの調査結果に基づき、テレビや映画がもはやトップの娯楽ではなく、ゲームやUGC(ユーザーが作成し、発信するコンテンツ)に取って替わられたといった見解を伝えていた。

一方で「Inside Entertainment」のレポートでは「ゲームvs娯楽という構図は忘れてください(Forget the “gaming vs. entertainment” narrative. )」と前置き。消費者のもつニーズをより深く掘り下げ、ゲームとほかの娯楽との間にあるダイナミックな共存関係の理解に繋げることが研究の目的のようだ。なお今回の調査は13歳から54歳にかけてのゲーム・娯楽を好む5500人からのアンケート、およびFandom独自の集計データに基づいているとのこと。

Image Credit: Inside Entertainment

レポートではまず、調査対象者間で昨年比でテレビや映画を見るのに費やす時間がどのように変化したかを紹介。テレビや映画を見るのに費やす時間が増えた/同じという回答者は67%を占めていたとされる。残り33%の回答者はテレビ/映画に費やした時間が減った/ほとんどなかったとも答えており、一定の割合でテレビ/映画の視聴時間が減少傾向にあることも垣間見えるだろう。

そして回答者が「代わりの娯楽」として答えた中でもっとも高い比率を占めていたのはゲームであり、その比率は59%であったという。ゲーム以外では読書、ソーシャルメディアの閲覧などが主に挙げられていたようだ。代替の娯楽として読書を挙げた回答比率の多さから、レポートでは書籍の映像化やゲーム化(adaptation)も効果的かもしれないとの見解も伝えられている。

一見するとテレビ/映画からゲームに“乗り換え”が起こっている印象も受ける一方で、回答者間ではゲームとテレビ/映画を趣味として共存させている傾向も見られる。特に、テレビと映画の視聴はゲームの休憩時にする活動でもっとも多かったとのこと。また回答者のうち89%のゲーマーがテレビ/映画も楽しんでおり、SF・ファンタジー・アドベンチャーといったジャンルが好まれていたそうだ。ゲームでもテレビ/映画でも一般的なジャンルであり、媒体を問わず親しまれているかたちだろう。ゲームとテレビ/映画は顧客を奪い合う娯楽というわけでもなさそうだ。


楽しみ方の違い

なおレポートでは、回答者間でのゲームとテレビ/映画の「楽しみ方の違い」が傾向として垣間見えるデータも示されている。これによると、ゲームの方がほかの娯楽よりも達成感を覚える、ストーリーをコントロールできる、感情移入できるといった点を魅力として挙げる意見が寄せられていたという。

一方、テレビ/映画ではコンテンツが大量にあり、すぐにアクセスできるといった点が魅力として多くの回答者から挙げられている。動画配信サービスの普及もあり、手軽に楽しめる点が親しまれているかたちだろう。また続編/リブート/リメイク作品から懐かしさを覚えたり、社会的不安を効果的に忘れたりといった点も、一定数の回答者からテレビ/映画の長所とする意見が寄せられていたそうだ。ゲームと比較して、テレビ/映画では悲しみや安らぎといった内省的で複雑な感情を呼び起こす作品が多いといった意見も見られる。

先述したとおりゲームの休憩時にテレビ/映画を見るとの回答も多く見られ、ゲームが興奮を与える一方で、テレビ/映画はリラックスする際に親しまれる傾向もあるのかもしれない。

Image Credit: Inside Entertainment

いずれにせよ、先述のデロイトの調査レポートや今回のレポートを見るに、近年ゲームがテレビ/映画に比べて娯楽として躍進しているといえるだろう。一方で楽しまれ方には違いがあり、二者択一の趣味ではなく両方とも楽しまれている傾向はありそうだ。

そうした需要を見込んでか、エンターテインメント業界では媒体にこだわらない展開も次々と講じられ、成果をあげている。たとえば「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」といった、映画など人気を博すIPがゲーム展開されて成功を収めてきた事例はかねてより数多く存在。一方『サイバーパンク2077』では逆にゲームからアニメ「サイバーパンク: エッジランナーズ 」への展開がおこなわれて人気を博し、元になったゲームのアクティブプレイヤー数も大きく増加を見せていた(関連記事)。娯楽が多様化している時代だけに、ユーザーの興味はさまざまなメディアに向けられていることを示す事例だろう。媒体ごとの特性を活かし、横断的に消費者へアプローチすることが求められているのかもしれない。

Kazunori Kandani
Kazunori Kandani

泣けるゲームを求めて徘徊するゾンビ。2Dアクションとカードゲームを愛する。

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