PSのボス・Jim Ryan氏の「お別れボブルヘッド」がデジタルグッズとして登場し、即ブーイングが飛ぶ。タイミングが悪すぎる

 

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は3月24日、PlayStation Stars向けに新たなコレクティブル「ジム・ライアンに敬意を」を配信開始した。PS事業の長であるJim Ryan氏の退職にあたって配信されたこの“デジタルボブルヘッド”に、多くの人が反発を示しているようだ。


PlayStation Starsは、PSユーザーを対象とした特典プログラムだ。利用者は、特定ゲームのプレイなどに応じてポイントやデジタルアイテムを入手できる。ポイントなどで入手できるリワード(特典)としては、PS Storeウォレットへのチャージや、ゲームタイトル本体などがある。また、デジタルカードやデジタルボブルヘッドなどの収集アイテム(コレクティブル)も入手できる。このプログラムは、Android/iOS向けのPS Appから利用可能だ。

同プログラムにて3月24日、Jim Ryan氏のデジタルボブルヘッドがリワードとして配信開始された。首がゆらゆらと揺れるマスコットのデジタル版である。「ジム・ライアンに敬意を」と名付けられたこのアイテムは、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』などのSIE傘下スタジオ作品をプレイすると入手可能。基本プレイ無料タイトル『Destiny 2』なども含まれるため、入手は容易だろう。3Dモデルで緻密に再現された笑顔のRyan氏の首が揺れ、楽しく笑っているような印象だ。


同アイテムは、3月末にてSIE社長兼CEOを退任するRyan氏へのお別れとして配信されたもの。Ryan氏は1994年に当時のSony Computer Entertainment Europeに入社し、以降要職を歴任。2019年にはSIEの社長兼CEOに就任し、PSブランドの“顔”として存在感を放っていた(関連記事)。同アイテムの説明文には、「ジムの献身に感謝します」との言葉が添えられている。

しかし、このボブルヘッドを見て腹に据えかねる思いを抱く者も多いようだ。というのも、Ryan氏は約30年間ソニーのゲーム事業を支えてきた一方で、PSにまつわるさまざまな舵取りが批判を受けた人物でもある。あまつさえ、直近には同氏に批判が集中する、インパクトの大きい出来事があった。先月27日に発表された、SIEの構造改革に伴う大規模な人員削減である。

この人員削減では、SIEの当時の人員のうち、約900名(約8%)の人員削減を計画。すべての地域の社員が対象となり、Insomniac GamesやNaughty DogといったPlayStation Studiosのいくつかのスタジオも対象となった。中でも、London Studioについてはスタジオ自体が解散となった。

さらに批判を過熱させたのは、London Studio解散発表のわずか約5日前に、Ryan氏自身が同スタジオを訪問。従業員らと笑顔で記念撮影(以下のポスト)をしていたことだ。

2023年から本年にかけては、ゲーム業界全体でレイオフが激化し、ゲーム開発者らを中心とした人々が大企業の人員削減傾向に反対の声を高めている。そうした中、直後の人員削減について把握していながらスタジオを訪問、笑顔で記念撮影したRyan氏の行動に、開発者やユーザーたちが強い不満を覚えたわけだ。今回の同氏を模したボブルヘッドにも「誰が欲しがるんだ」といった辛辣な反応がSNS上で寄せられている。

ちなみにPlayStation Starsでは過去にも、PlayStation関連事業の経営陣のボブルヘッドとして、現在SIEにてインディーズ イニシアチブ代表を務める吉田修平氏のボブルヘッドが配信。反応自体は小規模ながら、こちらでは好意的なが中心に見られた。今回、Ryan氏のボブルヘッドに対する猛反発が起きたのは、同氏が周囲から抱かれるイメージのほか、前例のない大規模レイオフの直後という“最悪のタイミング”も原因となっただろう。

なお、前述のとおりRyan氏は3月末をもって退任。4月1日からは、ソニーグループ代表取締役社長COO兼CFOを務める十時裕樹氏がSIEの暫定CEOを兼任する予定だ。