『スーパーマリオメーカー』の「全コースクリア」チャレンジ達成。しかし最後のコースが“TAS利用の不正アップロード”と発覚する複雑な幕切れ
『スーパーマリオメーカー』にて「クリア率0%」のコースをすべてクリアするユーザーコミュニティTeam 0%の挑戦が達成された。最後に残っていた「Trimming The Herbs」が不正にアップロードされたコースであると、作者が自ら告白。Team 0%からは3月16日にクリアされた「The Last Dance」をもってチャレンジ達成とすることが発表され、複雑な状況での幕切れとなった。
『スーパーマリオメーカー』はWii U向けに2015年に発売された2Dアクションゲーム。レベルエディター機能をもつ点が特徴で、プレイヤーはさまざまな素材から『スーパーマリオ』シリーズのオリジナルコースを作成したり、ほかのプレイヤーの作ったコースで遊んだりできる。なおコースをアップロードするためには、基本的には作者がコースをクリアする必要がある。
本作では「Team 0%」というユーザーコミュニティにより、クリア率0%のコースをひとつ残らずクリアしようとする試みがおこなわれてきた。つまり本作にてアップロードされているユーザー制作コースをほぼすべてクリアしようというチャレンジだ。一方で昨年10月には本作を含め、ニンテンドー3DSソフトおよびWii Uソフトのオンラインプレイサービスは、来月4月9日午前9時に終了となることが発表(任天堂公式サイト)。いわばタイムリミットが設定されたことで、チャレンジ参加者はさらなる賑わいを見せてきた。
そうして残されていたクリア率0%のコースは順調に攻略が進められ、3月16日にはユーザーのそう氏が制作した「The Last Dance」を天王寺やまだ氏が攻略。残る未クリアコースは、ユーザーのAhoyoo(Ahoyo)氏が2017年8月にアップロードした「Trimming The Herbs(TTH)」のみとなった。圧倒的な難易度を誇るコースながら、コミュニティ内では攻略が進められていた。
しかし、このコースに関して“不正”が発覚し、対象コースから外れることになった。Ahoyoo氏が自らTeam 0%の公式Discordサーバーにて、不正にTTHをアップロードしたことを告白している。
Ahoyoo氏によると、TTHはTAS(Tool-Assisted Speedrun)によって攻略され、アップロードされたコースだという。TASとは、ツールを用いることによって、人の手では再現の難しい挙動を引き出す手法。本作では先述のとおりコースのアップロード時に作者によるクリアが必要となるが、この際にTASが利用され、作者さえクリアできないTTHが不正にアップロードされたかたちだ。
Ahoyoo氏はTTHを、理不尽な難しさで混乱を巻き起こす意図で作ったという。プレイヤーによって精査され不正なコースだと発覚すれば、本作向けのTASが存在することを明かすつもりだったそうだ。一方で同氏の予想に反して、TTHの不正は発覚しないまま6年以上経過。Team 0%の活動についても認識しており、同コミュニティで不正が暴かれることを期待してこの状況を放置していたそうだ。思惑通りにならなかった“釣り”(failed troll)をやり遂げたいという願望もあったとのこと。
またAhoyoo氏による別のコース「Bombs5」もまた、(TASを用いて)不正にアップロードしたコースだったという。Bombs5は、『スーパーマリオメーカー』にて新規コースのアップロードが停止されるタイミングとなる、2021年3月に投稿されたコースであった。ただし、こちらについてはユーザーのFast氏やtea氏がクリアを報告。“人力”でのクリアが果たされていた。
しかし、そうしたトッププレイヤーたちをもってしてもTTHは未クリアのままであった。Team 0%のコミュニティ内では、TTHについてはTASなどを用いてアップロードされたのではないかといった疑惑も一部生じていたようだ。一方でAhoyoo氏がアップロードしたBomb5については攻略が果たされていたこともあってか、コミュニティ内でも同氏のアップロード作品を巡る意見は分かれていたという。
その後「The Last Dance」が攻略されたことでTTHは、不正が暴かれないまま最後のクリア率0%コースとして残ってしまった。コミュニティ内の議論もエスカレートして分裂も生じていたといい、Ahoyoo氏は今回TTHをTASを利用してアップロードしたことを告白するに至ったようだ。コミュニティを騙すような課題を放置し、混乱を招いたことについて謝罪を綴っている。
なおTeam 0%の未クリアコース全クリアチャレンジにおいては、アップデート後にクリア不可能となったコースも含め不正なコースについては対象から除外されていた。このレギュレーションに基づき、Ahoyoo氏の告白を受けてTTHも対象から除外されたようだ。結果としてクリア率0%であった“最後のコース”はそう氏が制作した「The Last Dance」となり、先述の3月16日の天王寺やまだ氏の攻略をもってTeam 0%のチャレンジを達成とすることが発表された。
複雑な状況での幕切れとなったものの、Team 0%の公式Xアカウントは「この件に関して誰かへの嫌がらせはご遠慮ください」とユーザーたちにお願い。コミュニティで奮闘してきたチャレンジをかき乱すコースを作ったAhoyoo氏に対して寛容な姿勢を示している。
ちなみにTeam 0%によるチャレンジのクリア状況を確認できるWebサイト「Is Super Mario Maker Beaten Yet?」によれば、2023年2月12日時点で残されていた未クリアコースは4万1117コース。コミュニティの奮闘により、約1年でTTHを除くすべてのコースがクリアされたかたちだ。チャレンジとしては奇妙な終わり方を迎えたものの、人力でクリアされたBomb5までTASを利用してアップロードされていたことが明らかになった点は興味深い。TTHの攻略でさえコミュニティ内で地道に進められていた背景があり、4月9日のタイムリミットまでにTTHが人類の手で打倒される可能性もあるかもしれない。